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» 2007年04月24日 07時30分 公開

RSA Conference Japan 2007:いくら警告してもセキュリティ対策が進まない理由 (1/3)

4月25日、26日に行われる「RSA Conference Japan 2007」で講演を行う群馬大学の片田敏孝教授によると、災害対策と情報セキュリティ対策は同じ問題点を抱えているという。

[高橋睦美,ITmedia]

4月25日、26日の2日間にわたり、東京・ザ・プリンスパークタワー東京で「RSA Conference Japan 2007」が開催される。国内で6回目の開催となる今回のテーマは「リスクコントロールと情報セキュリティ」だ。

 この中で一見異色とも思えるのが、群馬大学の片田敏孝教授による「人はなぜ危機に備えないのか〜災害に備えない人の心理を探る〜」と題するセッションだ。しかし片田教授によると、災害対策と情報セキュリティ対策は同じ問題点を抱えているという。その理由を聞いた。


 地震や水害など、多くの天災リスクに囲まれている国、日本。毎年少なからぬ数の人命が奪われているにもかかわらず、災害に関する警報発令を聞いて迅速に行動を取る人は少数派だ。防災研究者で、群馬大学工学部教授の片田敏孝氏は、その理由を「人の持つ特性」にあると言う。

 「津波が危険なこと、地震が来たらすぐに避難しなくてはならないことなど、みんな百も承知だ。ただ、それが行動につながらないだけ。けっして防災意識が低いわけではなく、『避難するぞ』という意志決定ができないでいるだけだ」(片田氏)――。

 このことは、情報セキュリティの世界にもそのまま当てはまらないだろうか? ちょっと言葉を変えてみよう。

 「ウイルスが危険なこと、脆弱性が発見されたらすぐに対応しなくてはならないことなど、みんな百も承知だ。ただ、それが行動につながらないだけ。けっしてセキュリティ意識が低いわけではなく、『対策するぞ』という意志決定ができないだけだ」

 情報セキュリティ専門家らはこの数年間、ユーザーに向けて「こんな脅威が登場しているので注意せよ」「脆弱性を修正し、セキュリティ対策を実施せよ」と呼び掛けてきた。しかしそれが具体的なアクションにつながっているかというと、どうも心許ない。これまでセキュリティ業界が取ってきたアプローチは有効なのだろうか、もっと別のやり方があるのではないか――。

 片田氏は防災の世界で模索を続ける中で、人間の特性を踏まえた上で、相手の理解を得ながら情報を伝えていくことが重要であることが見えてきたという。自らを「逃げる」専門家と表現する片田氏の談話をまとめた。


 地震が来たらその後に津波が来るということは、皆、知識としては知っています。避難しなければならないことも分かっています。しかし、「分かっている」ことと「実際に対応できる」ということは違うのです。

 「いざとなっても自分は大丈夫」と思ってしまうのが、人の「さが」というものです。そもそも人間は、自分にとって嫌なこと、起こってほしくないことはあまり考えないようになっています。これは、人の心の安定にとって必要なことなのです。毎日にこやかに暮らせるのは、嫌なことを忘れているから。もしも自分の寿命が分かってしまえば、その日が近づくにつれ、とても平静にしていられなくなるかもしれませんね。

 もう1つ、人間には、いい話と悪い話とで、受け取り方が非対称だという特性もあります。客観確率が同じでも、主観的な確率が異なってくるのです。最もわかりやすい例が、交通事故と宝くじでしょう。客観的に見ればどちらも同じ確率でも、誰も、自分が今日交通事故に遭うなどとは考えません。しかし宝くじだと「そろそろ一等が当たるんじゃないかな」と考え、売り場に行列を作ります。

 つまり、人は、自分が被害に遭うということを前提に考えられないのです。例えば「今、地震が来たらどうしますか? 5分後はどうしていますか?」と皆さんに尋ねると、だいたい「机の下に隠れている」「建物の外に逃げる」「下敷きになった人を助ける」といった答えが出てきます。けれど誰も「自分ががれきの下でつぶれている」とは想定しません。

 人の心にはそういう特徴があるのです。だからといって、それを放っておいていいのかというと、そうはいきません。津波というのは、「確率」現象ではなく「確定」現象です。特に日本の場合、海溝型津波は繰り返し繰り返しやってきて、そのたびに多くの人が亡くなられています。

 被害を少しでも減らすためには、こうした人間のさがを乗り越えていける手法を開発していかなければなりません。いま申し上げた特質を踏まえ、「人間はこういうものだ」という前提の基で、策を考える必要があるのです。

 もう1つ、風化という現象も挙げられるでしょう。一般に、災害が起こっても、その記憶は30年でほぼ薄れてしまうと言われています。阪神淡路大震災でさえ、10年経った今、記憶の風化が始まりつつあります。市役所職員の4割が新しい職員で、震災の経験がないんですね。こうした忘却の過程というのも、いかんともしがたいものがあります。こうした条件を前提に、策を考えていかなければなりません。

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