2月、軍事転用できるという無人ヘリを無許可で輸出した容疑で、ヤマハ発動機の社員が逮捕され、同社が家宅捜査されるという事態が起きた。それは一体、企業に何を示唆するのか――。
記憶に新しい事件がある。2月23日、静岡、福岡の両県警の合同捜査本部は、ヤマハ発動機の執行役員と社員数人を外国為替および外国貿易法違反の容疑で逮捕し、同社を家宅捜索した。軍事転用可能な無人ヘリコプターを、外為法で義務付けられている経済産業大臣の許可を得ずに、不正に中国企業へ輸出しようとしたという。
外為法では、安全保障貿易管理の観点から、武器や軍事転用可能な貨物の輸出ならびに技術の提供を規制している。この規制に反して輸出した場合、刑事罰として対価(貨物の価格)の5倍以下の罰金、もしくは5年以下の懲役が科せられる。また、行政制裁として3年以下の貨物輸出・技術提供の禁止措置がとられる。
貨物や技術を輸出しようとする者は、リスト規制品目・技術に該当するか否かの「該非判定」を行わなければならない。非該当の品目や技術であっても「キャッチオール規制」により、品目や仕向国(輸出貨物が引取人などに引き渡される国)、最終的な用途や需要者によっては申請する必要が生じる。
経産省は、安全保障貿易管理ガイダンスを公表するとともに、自主管理のための「輸出管理社内規定(コンプライアンス・プログラム。以下、CP)」を提供し、企業に対して十分に注意するよう通達している。
ヤマハの事件では――一部の報道によると――逮捕された幹部は逮捕される前、外為法による規制を認識した上で万全を期して輸出を判断したこと、輸出自体はプロセスに則って決められたものであること、そしてその判定には外部プロセスも含まれていたことを打ち明けている。そのため、経産省との見解の相違に戸惑っていたという。
経産省が無人ヘリ輸出の違法性を告発したのは2006年1月。1年以上経ってからの逮捕となった理由として、合同捜査本部は、無人ヘリの軍事転用の可能性を検証するために実証実験を行う必要があったことを挙げている。
ヤマハは経産省の告発を受けた後、直ちに内部統制見直しプロジェクトを立ち上げ、輸出管理体制や内部統制プロセスの改善に取り組み始めた。とはいえ、同社における該非判定プロセス、輸出に関する承認フローがどのように設定されていたのかは気になるところである。そう考えると、企業がコンプライアンスや内部統制に取り組むにあたり、ワークフローを見直し、整備することが重要であることを再認識させる事件だったといえる。
では、そのワークフローとはどのように定義されているのだろうか。
ワークフローに関する国際標準化団体であるWfMC(Workflow Management Coalition)は、文書「ワークフロー・リファレンス・モデル」において、「コンピュータを活用して効率化、あるいは自動化されたビジネスプロセス(全体あるいはその一部)」と定義している。
企業では通常、ビジネスゴールを達成するために業務規定を定義し、そのルールに従ってドキュメントや情報あるいはタスクを、従業員(あるいはシステム)の間で受け渡す活動を繰り返している。従って、企業におけるワークフローとは、そうした一連の手順を自動化する仕組みのこととなる(「月刊アイティセレクト」5月号のトレンドフォーカス「内部統制で急浮上するいまどきの『ワークフロー』 注目される理由とは?」より。ウェブ用に再編集した)。
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