ワークフローとは、単なる申請手続きや文書の電子化ではない。連携する複数の仕事のプロセスを自動化するものである――。
企業におけるワークフローは、ビジネスゴールを達成するために繰り返す一連の業務活動を自動化する仕組みである。製品という視点で見ると、身近なものとして、グループウェアに含まれた機能となっているものがある。このグループウェアによるワークフローは、申請・承認手続きをイントラネットでできるようにしたものであることが多い。
このような紙の上で行ってきた手続きを電子化するものであれば、それなりに便利なものである。ただ、ワークフローには申請などのドキュメントの電子化だけに留まらない側面もある。
一例として、銀行の融資に関するプロセスが挙げられる。それは次のようになる。
まず、支店の営業担当者が融資案件を受注する。それを受けて融資担当者が貸付の判定基準に照らし、条件を満たしていれば、支店長に申請を行う(基準を満たしていない場合は営業担当者に差し戻す)。支店長は、その案件が支店長権限で決裁できる範囲内であれば決裁を行うが、その範囲を超えている場合は、本店の審査部に対して稟議申請を行う。審査部は稟議を発議すべきか否かの判定を行い、必要と判断した場合は決裁者である本店の役員に対して稟議を発議する。そして、本店役員が稟議決裁を行い、その結果がこれまでの手順の逆向きの経路を辿って支店へと差し戻される。
ここから分かるのは、企業が業務を実施するには、部署間で(ときには企業間で)相互に連携するプロセスが存在すること。ワークフローを整える狙いは、こうした一連のプロセス間の連携が遅滞なく適正に行われるような制御と機構を設け、その実行を自動化することによって業務処理の効率化を実現することであるこれは、実は内部統制への対応にもつながってくることになる。
では、システムとして見た場合のワークフローは、どのように位置付けられるだろうか。WfMC(Workflow Management Coalition、5月7日の記事参照)ではワークフローシステムを「Workflow Management System(以下、ワークフロー管理システム)」と呼ぶ。ワークフローを定義し、生成し、運用できるシステムのことだ。ビジネスにおけるアクティビティを管理し、さまざまなアクティビティが要求するリソース(人やシステム)を制御することにより、ビジネスプロセスを形成する一連の処理を自動化するシステムであるという。そして、そのワークフローはワークフローエンジンの上で駆動するソフトウェアによって実行されると定義している。
アクティビティとは、シーケンシャルに発生するプロセスやタスクのことを指す。例えば、申請手続きでは必要事項にデータが入力されて申請書類が出力される。この入力から出力までは、1つのアクティビティと考えることができる。
下図に示すように、アクティビティには必ず入力(インプット)がある。情報やデータが入力されると、ビジネスにとって価値のある情報やデータに変換されて出力(アウトプット)される。変換においては適正な出力が得られるよう制御(コントロール)の制約を受ける。また変換の実行には必ず機構(メカニズム)が必要となる。
ワークフロー管理システムは、ビジネスプロセスの連携と制御を自動化することによって、情報やタスクが常にコントロールされた状態を保ちながら、上位の決定権限を持った担当者へと次々に渡っていく。
コンプライアンスの観点では当然、各アクティビティにおける制御が重要となる。ワークフロー管理システムのメリットは、データが最初に入力された時点で承認フローを走らせ、統制することが可能であることだ。ワークフローの実行を監視でき、その履歴ログを記録することができるという点も見逃せない。
さらに広い視点からすると、組織が規定する人の役割や権限あるいは業務規則と、システムが実行するワークフローとの整合性をとることは、ワークフロー管理システムを運用する上でポイントとなると考えられる(「月刊アイティセレクト」5月号のトレンドフォーカス「内部統制で急浮上するいまどきの『ワークフロー』 注目される理由とは?」より。ウェブ用に再編集した)。
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