IP-PBXのオープンソースソフトウェア「Asterisk」の創始者マーク・スペンサー氏が初来日し、通信サービスにおけるオープソースの可能性について講演した。
NTTソフトウェアは5月8日、同社が提携する米Digiumのマーク・スペンサー会長を迎えてのプライベートセミナーを開催した。スペンサー会長は、IP-PBXのオープンソースソフトウェア(OSS)「Asterisk」の創始者として知られ、同氏は通信サービスにおけるOSSの有効性について講演を行った。
Asteriskは、企業の電話システムに求められる内線/外線利用や保留、転送、自動応答などの機能を備え、Linuxプラットフォーム上で動作できる。また、GoogleのInstant Messengerソフト「Google Talk」などとも連携が可能など、拡張APIが豊富に用意されている。
スペンサー氏は、Asteriskについて「多彩なVoIPサービスとの連携からISDNやアナログ電話回線までのサポートまで、ユーザーが電話機能に求める要素を実現するために開発した」と話す。
Asteriskは、1999年当時にスペンサー氏が個人で営んでいたLinuxのサポートビジネスで、顧客対応用にSIPサーバソフトを自作したのがきっかけになる。「ベンダー製のVoIPシステムはとても高価で購入できず自作し、OSSとして公開した」とスペンサー氏。
同氏は、2000年に商用利用も目指して現在のDigiumを創業した。DigiumはAsteriskコミュニティの活動推進や商用版製品「Asterisk Business Edition」の開発・ライセンス供給などを行っている。
2004年にAsteriskのバージョン1.0がリリースされ、現在ではAsteriskベースのVoIP商品が世界各国で販売されている。Asterisk自体も1日に3000ダウンロードを記録するまでに成長した。
企業向けVoIPシステムはベンダーの独自仕様で構成される場合が多く、仕様の異なる機器を連携しづらいといった点などが課題になる。Asteriskは、こうした課題の解消や、OSSのコミュニティでのバリエーションに富んだ開発プロジェクトなどが期待されている。
スペンサー氏も、「自分が開発したものの1つに電話会議機能のエンジンがある。電話会議に参加するための認証システムはコミュニティの手によって開発された。OSSコミュニティ参加者の熱意で迅速な開発や品質の向上が実現でき、商用展開されてもコスト的にもベンダー製品に比べてアドバンテージがある」と話す。
一方で、ベンダーのように徹底した安定性や品質を追及するためのテスト体制をコミュニティでは用意しづらいともいう。そのため、Asteriskでは純粋なOSSコミュニティとともに、商用レベルに耐える各種テストを行うためにDigiumが存在しているとスペンサー氏は説明している。
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