ビジネスと法規制に関連した需要が、成長中のITガバナンス市場の追い風になっている。ベンダー各社はこの市場を狙い、関連製品の強化を進めている。
Hewlett-Packard(HP)は2006年7月、Mercury Interactiveを45億ドルで買収した。これは、ITガバナンスの分野に狙いを定めた買収であった。
カリフォルニア州パロアルトに本社を置くHPによると、同社はこの買収で20億ドルのビジネスを手に入れるとともに、アナリストらが今後3年間で爆発的に拡大すると予測する業界分野への参入を果たしたとしている。
HPのエンタープライズ管理ソフトウェアポートフォリオであるOpenViewとMercuryの製品ラインを組み合わせることで、HPは「ITライフサイクル全体にわたるエンドツーエンド管理」を提供することができる、と同社のマーク・ハードCEOはMercuryの買収に際して語った。「当社の顧客はITをビジネスイネーブラー(実現基盤)として活用することが可能になり、もはやITがビジネスの障害物になることはない」と同氏。
さまざまなビジネス要因を追い風として、ITガバナンスは付け足し的な機能という段階を超え、活況を呈するビジネス分野へと成長した。調査会社Research and Marketsの予測によると、ITガバナンス市場は2003年の1億2630万ドルから2009年には18億ドルに、ITガバナンス管理分野は2003年の4億800万ドルから2009年には27億ドルに成長する見込みだ。
ITガバナンスとITコンプライアンスを同一の分類に含めている調査会社IDCでは、この総合市場の規模は2007年の約60億ドルから2010年には110億ドルに拡大すると予測している。
ITガバナンスの重要性が高まるのに伴い、ベンダー各社の間ではそういった機能を自社製品に付加しようという意欲が高まっている。
HPはITガバナンス分野に進出するのが遅かったが、Mercuryを買収したことで同分野の大手ベンダーの1社になった。この分野の主要なベンダーとしては、自社のITガバナンスビジネスを約25億ドルと見積もっているCA、システム管理ソフトウェアのTivoliを擁するIBM、自社のビジネスサービス管理製品にはITガバナンス型の製品やサービスも含まれるとするBMC Softwareなどがある。
これら4社はいずれも、企業が社内のITシステムを評価する機能、ITシステムの能力を最大限に活用するためのポリシーを設定する機能、そしてできるだけ多くのプロセスを自動化する機能を提供している。Ptak, Noel & Associatesのアナリスト、リッチ・プタック氏は、「CAとBMCは、顧客がパッケージ済みの自動ワークフロー製品を使ってビジネスサービス管理/ソリューション技術を導入する方法を理解するのを支援する取り組みに注力している」と話す。
業界観測筋によると、ITガバナンス機能に対する需要拡大の背景には、企業がITインフラとビジネスニーズの連携を改善したいと考えるようになってきたことがあるという。企業は毎日24時間外部に公開されているWebサイトを運営しており、そのために必要なハードウェアの電力や冷却に必要な経費を削減したいと考えている。
加えて、アナリストやベンダーらによると、米国のSOX法(企業改革法)や欧州のBasel II(新BIS規制)といった米国内外の新しい法規制では、e-Discoveryや訴訟などで必要になるときに備えて企業がすべての社内データを数年間にわたって維持管理することが義務付けられている(関連記事)。
ニューヨーク州アイランディアに本社を置くCAでマーケティングを担当するカール・ランダース上級副社長は米eWEEKの取材に対し、「われわれはITガバナンスを非常に単純に定義している。それは、IT投資の使途をめぐってIT部門とITユーザーが事実に基づく判断を下すということだ。『ガバナンス』とは、企業が行う重要なIT投資に関する問題である」と語っている。
ランダース氏によると、インターネットの普及とともに技術分野が急速に発展した約10年前には、企業はビジネス問題の解決と顧客へのサービス提供のために「できるだけ多くの金をITに注ぎ込んだ」
しかし、もうそんな時代ではないという。
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