脱「Made in China」イメージを目指す中国

Lenovo、Microsoftなどの企業数社と貿易団体が集まり、米中間の長期的な購入/マーケティング契約を締結。中国側はこれを機に「Made in China」に代わる新たなイメージ普及に取り組むという。

» 2007年05月16日 13時30分 公開
[Chris Preimesberger,eWEEK]
eWEEK

 世界最大の市場である中国の政財界の指導者たちは、自国にまつわるイメージからの脱却を目指している。根深く定着した「Made in China」(中国製)というイメージを葬り去り、新たなイメージを普及させようとしているのだ。「Created in China」(中国で開発)というのが彼らが目指すイメージだ。

 2006年に米国に対して2325億ドルという巨額の輸出超過となった極東の巨大国家は、ソフトウェア企業との大口購入契約や、米国での新しいIT研究施設の設立への協力などを通じてその資金の一部を米国に再投資しようとしている。

 さらに中国は、費用効果の高い製造国家というイメージを、独創的で研究開発を重視する国家というイメージに変えようとしている。

 5月9日にサンフランシスコのマークホプキンスホテルで開催された派手なメディアイベントでは、中国と米国の数社の企業および貿易団体の代表者が集まり、米国経済に約43億ドルの資金をもたらす長期的な購入/マーケティング契約に調印した。

 このイベントは、両超大国の間で行われる第2回戦略経済対話に先立って企画されたもの。中国と米国の貿易関係者は5月23〜24日にワシントンで会合を開き、中国の輸出超過、通貨管理、違法コピー問題など以前から米国の企業と政府を悩ませている問題について話し合う予定だ。

 中国企業の代表者たちは、米国企業の代表者らと27件の購入契約や投資契約に調印した。これらの調印の多くは形式的なものであった。ほとんどの業務取引は、期間の長短はあるにせよ以前から実質的に行われていたからである。

 コンピュータメーカーのLenovoや、China Netcom、Semiconductor Manufacturing Internationalなど12社の中国企業が、ソフトウェア、半導体および通信分野の23社の米国企業と契約を締結した。契約に臨んだ企業には、Microsoft、Oracle、Cisco Systems、Hewlett-Packard(HP)といった顔ぶれも含まれていた。

MSが最大のソフトウェア契約を締結

 世界最大のソフトウェアメーカーであるMicrosoftは、総額43億ドルのパイで最も大きな取り分を確保した。Lenovoが今会計年度に、自社のデスクトップとノートPCに搭載するWindows XP、Windows Vista、Microsoft Officeなどのソフトウェアを13億ドルで購入することに合意したのである。

 IBMのパソコン事業部を2005年に買収したLenovoは現在、全世界の市場シェアでHP、Dell、Acerに次ぐ第4位のコンピュータメーカーにランクされている。Gartnerの最近の市場調査レポートによると、Lenovoの市場シェアは6.3%である。

 「Microsoftでは、知的財産権の尊重がソフトウェア業界の持続的発展にとって不可欠であると考えている。正規のソフトウェアの利用促進に向けた今回のような取り組みは、中国における知的財産の保護に貢献するものである」とMicrosoftの広報担当者は米eWEEKの取材で語った。

 「中国での正規のソフトウェアの利用促進に向けて重要な施策を実施し、健全な知的財産環境を推進している中国政府の取り組みも称賛したい。健全な知的財産環境は、中国がイノベーションのリーダーとしての潜在能力をフルに発揮するために不可欠であると、われわれは考える」(同広報担当者)

 LenovoとMicrosoftは2006年4月に、中国製PCに正規版Windowsに搭載する取り組みで12億ドルに上る同様の契約を結んだ。

 中国は何年も前から、同国の闇市場や灰色市場での野放図な偽造ソフトウェア/ハードウェアの取引を禁止する法律の策定や取り締まりに熱心ではなかったと批判されてきた

研究施設に9500万ドル

 中国東部の江西省に本社を置くHong Yuan Machineryは、サンフランシスコに研究センターを設立するために約9500万ドル投資することに合意した。本稿作成時点では、この研究所の詳細は明らかになっていない。

 5月9日のイベントの主催団体の1つであるカリフォルニア州サンノゼのSoftware Industry Associationで公共政策を担当するダリル・ハタノ副会長は、「中国が経済発展の歩みを続ける中で、中国政府が提唱してきた政策の1つが、将来的に『Made in China』から『Created in China』へと移行するというものだ」と語る。

 「これには多くの意味が含まれる。基本的には、彼らは『低価値』製品の製造国家にとどまりたくないという意味だ。つまり『Created in China』というのは、バリューチェーンの上に向かって進むことを意味する。この取り組みは将来的に、認知度の高いブランドを持ち、中国国内だけでなく海外でも事業を展開する世界的な企業の創出を目指したものだ」とハタノ氏は語る。

 「中国はいずれ、米国に製造拠点を設けたいと思うようになるだろう」と同氏は付け加える。

 中国商務省の副大臣で、369人の中国のビジネスリーダーからなる今回の代表団の団長を務めるマー・シューホン氏は、「このイベントは、米国への投資拡大を促進し、両国間の理解と相互発展を強化しようという中国の決意を示すものだ」と語った。

 カリフォルニア州副知事のジョン・ガラメンディ氏は、イベントの参加者を前に「これらの契約は、我が州、我が国そして中国との間の理解を深める上での重要なステップである」と語った。

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