ベンダー発はもう古い!? 大手の支援で勢いづくコミュニティーによる開発広がるOSS開発の実態(1/2 ページ)

かつて非オープンの代表格でもあったサン・マイクロシステムズは、なぜデベロッパーコミュニティーによるオープンソースソフトウェア(OSS)の開発を積極的に推進するのか。そこには、「共栄共存」の考え方があるようだ――。

» 2007年05月17日 07時00分 公開
[富永康信(ロビンソン),アイティセレクト]

 サン・マイクロシステムズは数年前から「情報化時代の終わり」を告げ、「参加の時代」の到来を唱え続けてきた。2006年11月にはJavaをオープンソース化し、OSSのコミュニティー活動への支援を積極的に進めている。社内に設けられた部門横断プロジェクトの一つ「コミュニティ」は、技術者やITユーザーによるさまざまなコミュニティー活動を支援することを使命に活動を続けている。「コミュニティ」プロジェクトの統括責任者を務める藤井彰人氏は「OSSや標準技術を支えるコミュニティー活動を抜きにして、現在のITシステムを語ることはできない」とまで語る(以上、5月15日の記事参照)。

介護市場と同規模のJavaの労働市場

 では、なぜそれほどまでにコミュニティー支援が重要なのか。

 現在のR&Dのほとんどはオープンソースがかかわっている。例えば、JavaのWebフレームワークでは「Struts」などのオープンソースが不可欠だ。それらは、オープンソースコミュニティーに所属する人々の貢献によって生み出されている。

 大多数のIT企業がOSSの技術を使ってビジネスを進めていることを考えれば、コミュニティーの重要性は明白といえる。

 「サン自身もオープンソース化を進めるが、同時にオープンソースコミュニティーにも貢献してサンの価値が認められない限りは、当社のビジネスは前進しない」(藤井氏)

  Java EE で生まれる日本の市場規模は10兆円程度といわれる。またJava関連に携わるシステムインテグレーターやコンサルタントの数は、介護マーケットと同等の労働市場になるという。それ故、サンのJavaビジネスが成り立ち、それを取り巻く経済圏もできる。だからこそ、サンはOSS市場を拡大させ、技術者のコミュニティーへの参加を促進し、新たなマーケットをつくることを目指している。

 注目すべきは、サン由来ではない技術のコミュニティーも支援の対象としている点だ。

 「サンの技術はOSS全体の一部にすぎないため、サン以外のオープンソースコミュニティーに対しても支援活動を行っている。『Ruby』などのコミュニティーを後方支援しているのもその一例」と話すのは、マーケティング統括本部のデベロッパーマーケティング部で主幹部長を務める増月孝信氏。サンの部門長の立場で、コミュニティー関連の支援活動を担当している。オープンソラリスのユーザーグループの立ち上げや、4月から始動した「日本Javaユーザーグループ」の後方支援も担当している。

 これまで企業が行ってきたデベロッパー支援は、国内に閉じた活動が多かったという。「OSSのコミュニティーは、基本的にはグローバルの活動に基づく。日本のコミュニティーがタコツボ状態に陥らず、グローバルなコミュニティーの一部として活発な活動ができる環境とチャンスを用意することもサンの役割であり文化」(増月氏)だそうだ。

※本文の内容は特に断りのない限り2007年4月現在のもの。

Java Platform、Enterprise Editionの略。Javaを利用した大規模な企業システムにおけるサーバー側アプリケーション構築のフレームワーク。2006年より、J2EE(J2 Platform、Enterprise Edition)5.0の名称がJava EE 5と改名された。
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Javaユーザー主体のコミュニティーで、Java技術の向上・発展、開発者の支援を目的としている。日本全国のコミュニティーを束ねる。
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