「非オープン」大手がオープン化推進へ転換したのがきっかけ!?広がるOSS開発の実態

デベロッパーコミュニティーによるオープンソースソフトウェア(OSS)の開発が盛んになっているのはなぜか。その主要因として、かつてオープン化に消極的だった大手ベンダーがオープンシステム市場に本腰を入れ始めたことが指摘されている――。

» 2007年05月15日 07時00分 公開
[富永康信(ロビンソン),アイティセレクト]

 デベロッパーコミュニティーによるオープンソースソフトウェア(OSS)の開発が、密かに勢いづいている。これまでオープン化に消極的だったサン・マイクロシステムズがオープンシステムの提供を本格化するなどし、デベロッパーコミュニティーの支援に積極的に乗り出しているからだ。すでにサンは、これを国内戦略の中でも最重要テーマの一つとして位置付けている。

サンの復活を後押しするプロジェクト

 サンは2006年10―12月期、黒字を回復した。売上高は35億6600万ドルで、前年同期比で7%の増加という(米本社による数値)。

 その背景には、ビジネスがブランド力重視から原点回帰へと変わる中、リナックス市場からの乗り換えで「ソラリス」に注目が戻り始めたこと、また「ソラリス10」にオープンソース化した「オープンソラリス」ができ、リナックスとの差異が希薄になってきたことがある。

 ソラリス10の登録ライセンス数は600万、オープンソラリスコミュニティーへの参加者は1万6000人を超えた(1月時点)。サンは、2006年11月にオープンソース化したJavaも含め、OSSのコミュニティー活動への支援を積極的に進めている。このように企業の方針が明確になったことで、市場の期待感も変化している。

 現在、サンでは「ビジネス・ガバナンス」「ビジネス・エフィシェンシー」「コミュニティ」といった、部門間を横串にした3つのバーチャル組織が設けられ、社内横断プロジェクトとして活動している。

サン・マイクロシステムズ内の社内横断プロジェクトの構想概念

 具体的には、「ビジネス・ガバナンス」は、企業が継続的に成長していくためのプロセスをテーマとしている。「ビジネス・エフィシェンシー」は、ROI向上とTCO削減に向けた仮想化や統合などのインフラづくりを担っている。また、ITの効率性や環境保全の両立も目指している。

OSS抜きにITは語れず

 そして「コミュニティ」。サンは数年前から「情報化時代の終わり」を告げ、「参加の時代」の到来を唱え続けてきた。ブログやSNSなど、共同作業を行う場所としてネットワークが利用され、参加型のオープン・コミュニティーによってさまざまな問題が解決される時代になったというわけだ。

 よって、「コミュニティ」の使命は、技術者やITユーザーによるさまざまなコミュニティー活動を支援すること。主な活動は3つある。

  • Java、ソラリスなどサン由来のOSS、オープン・テクノロジーをベースとする各種コミュニティー活動の支援
  • サン以外の製品によるOSSコミュニティーの支援
  • Web2.0、SaaSに代表されるネットワーク・サービスに関するコミュニティーの支援

 「OSSや標準技術を支えるコミュニティー活動を抜きにして、現在のITシステムを語ることはできない。特定のITベンダーが製品を開発し、一方的に製品を提供する時代は過ぎた。民主的なコミュニティー活動によるイノベーション創出の時代が始まっている」と語るのは、「コミュニティ」プロジェクトの統括責任者を務める藤井彰人氏だ。現在のソフトウェア企業も、自社製品でオープンソースコミュニティーに積極的に関与したり、オープンソースコミュニティーで生まれた技術を自社製品に組み込んで商用製品として提供していることが多いという(「月刊アイティセレクト」6月号のトレンドフォーカス「ベンダー発はもう古い!? 大手の支援で勢いづくコミュニティーの実力 広がるOSS開発の実態」より。ウェブ用に再編集した)。

※本文の内容は特に断りのない限り2007年4月現在のもの。

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