ケータイカルテの姿は、実は多種多様。セキュリティや実用性との兼ね合いで、使われ方もさまざまだ。共通しているのは、「現代版健康手帳」として着実に普及しつつある現状だろう。
三重県の医療法人メディカル コミュニティズの津田クリニックでは、院長の津田光徳氏自らが携帯電話を活用した医療情報開示システム「もばかるて」を開発。病名、検査、投薬などの各種データを携帯電話で閲覧できるサービスとして提供している。
「病気の検査結果を、再来院して説明を受ける前に患者自身がいち早く確認する必要がある場合には、『もばかるて』を使う。『もばかるて』には、検査の数値に加え、標準値との比較を表示。さらに、色表示で直感的に危険度も示す」と語るのは、同クリニック理事の佐藤勝美氏。団塊世代の多くから携帯電話で情報を得たいという要望が強かったのが、「もばかるて」開発のきっかけになったという。
「もばかるて」を活用すれば、担当医は出先から、患者の病名や検査の状況を踏まえた上で処置を指示することができる。また、患者がほかの医療施設で受診することになった場合でも、日常服用している薬の名称や薬効、服用回数などを携帯電話に一覧表示することにより、その医療施設の医師に正確に情報を伝えることができる。
「現在、300件近くのユーザーが利用中。カルテ情報を増やしてほしいという要望も強く、セキュリティ確保とのバランスを考えながらシステムを増強することも考えている」と佐藤氏は話す。
千葉県にある医療法人鉄蕉会の亀田総合病院および亀田クリニックでは、2002年よりASP型の医療情報ネットワーク「PLANET」を利用した地域医療連携を実施している。連携する医療機関がアクセスするASP型電子カルテサーバに加え、「患者さま参加カルテ」サーバを設け、患者が自分の意思で医療情報を活用できるシステムを構築した。そして2004年8月、携帯電話参照用のアプリケーションサーバも設置した。
電子カルテを参照するために利用する、ICカードを使ったPKI(公開鍵暗号基盤)システムの代わりに、NTTドコモの「FirstPass」(電子証明書)を使えるようにし、FOMAシリーズ(一部を除く)からのアクセスを可能にした。iアプリを使用すれば、PC上で参照できる経過記録や処方、レポート類(薬剤、手術、検査など)が携帯電話単体でも確認できるようになっている。
現在の登録者数は約80名。ICカードを利用する場合に比べ、費用が安いことや利便性の高さが好評だという。課題は、PC接続の際のドライバーインストールが複雑なことや、慣れないと使いにくいということ。現在、iモードで簡単に参照できるシステムを検討中で、将来的には他社製の携帯電話でも参照できるようにしたいとしている。
それぞれアプローチは異なるが、現代版の健康手帳として携帯電話での電子カルテ利用は着実に進んでいる。患者本位の医療サービスの本命として、“ケータイカルテ”は今後大きく普及する可能性がある。ゆくゆくは、病診連携の実現に一役買うことで、医療界に変革をもたらすことになるかもしれない(「月刊アイティセレクト」5月号のトレンドフォーカス「密かに利用が広がるケータイカルテ 病診連携実現で医療界に革命を起こす!?」より。ウェブ掲載にあたり再編集した)。
※ PCでは画像付きで見れるが、iアプリでは画像表示されない。
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※ 本文の内容は特に断りのない限り2007年3月現在のもの。
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