GPLバージョン3へアップグレードすべき理由Richard-Stallman's Voice(2/2 ページ)

» 2007年06月07日 00時00分 公開
[Richard-Stallman,Open Tech Press]
SourceForge.JP Magazine
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 GPLv3が阻止しようとしているもう一つの脅威として、Novell-Microsoft契約のような特許契約がある。Microsoft社は、GNU/Linuxユーザーに特別保護を与える代わりにMicrosoft社に対してお金を支払わせるという形で、自社の何千という特許を利用したいと考えている。そして実際にその目的を実現しようとしてNovell-Microsoft契約を結んだ。Novell-Microsoft契約では、Microsoft社の特許からのかなり制限された保護がNovell社の顧客に対して提供されている。

 Microsoft社はNovell-Microsoft契約の中で幾つかのミスをしており、GPLv3は、そのような一部の人への保護をコミュニティー全体に拡大させることで、それらのミスがMicrosoft社にとってあだとなるように設計されている。この設計が功を奏すためには、プログラムがGPLv3を使用している必要がある。

 Microsoft社の弁護士たちは頭が良いので、次回はそのようなミスを避けてくるかもしれない。そのためGPLv3は彼らに「次回」はないと記している。プログラムをGPLv3の下にリリースすることは、プログラムのユーザーからMicrosoft社のロイヤリティをディストリビュータに徴収させようとするMicrosoft社の将来的な試みから、プログラムを守ることになる。

 GPLv3ではまた、ユーザーはプログラムのコントリビュータとディストリビュータから明示的な特許保護が得られると規定している。GPLv2では、ユーザーにプログラムを提供した企業が、ユーザー、つまり自分たちがプログラムを配布した相手を特許侵害で訴えることはないということに関して暗黙的な特許ライセンスをより所としており、明示的な特許ライセンスは存在しなかった。

 GPLv3における明示的な特許ライセンスにも、われわれは十分に満足しているわけではない。われわれの理想を言えば、GPLの下にあるコードを再配布する人もしない人もすべての人々が、あらゆるソフトウェア特許を放棄するようにしたかった。ソフトウェア特許は、すべてのソフトウェア開発者をその分野のすべての巨大企業はもちろん聞いたこともないような企業からも訴えられる危険にさらす、不道徳かつ不合理なシステムだ。大規模なプログラムであれば一般的に何千というアイデアを組み合わせているため、何百もの特許がカバーするアイデアを実装していることも珍しくない。巨大企業は何千もの特許を収集し、それらの特許を使って、より小規模な開発者たちをいじめている。特許は、すでにフリーソフトウェアの開発も妨害している。

 ソフトウェア開発を安全にするための唯一の方法は、ソフトウェア特許を廃止することであり、われわれはいつかこの目標を達成するつもりだ。しかし、ソフトウェアライセンスという手段ではこの目標を達成することはできない。フリーであろうとなかろうとすべてのプログラムは無関係の人たちが持っているソフトウェア特許によって葬り去られるということが起こり得るのだが、プログラムのライセンスではそれを防ぐことはできない。特許の脅威からソフトウェア開発を守ることができるのは、法廷での判決か、特許法の改革だけだ。それをGPLv3でやろうとしても失敗するだろう。

 したがってGPLv3では、脅威の大きさを抑えたり回避したりすることを目指している。われわれは特に、葬り去られるよりも悪い運命、すなわち特許を通して事実上プロプライエタリにされてしまうということからフリーソフトウェアを救おうとしてきた。GPLv3の明示的な特許ライセンスは、4つの自由*をユーザーに与えるための「GPL」を利用している企業が、一部のユーザーに対しては態度を一変して自社の特許を振りかざし「あなたにはそのような自由はない」といい出すことはできないようにするものだ。またGPLv3では、ほかの特許保持者と共謀して同様のことを行うことも阻止している。

 GPLv3にはさらに、優れた国際化、より緩やかな契約の打ち切り、BitTorrentのサポート、Apacheライセンスとの互換性などの利点がある(より詳しくはgplv3.fsf.orgを参照してほしい)。全体的に見て、GPLv3にはアップグレードするための理由が十分にある。

 GPLv3がリリースされた後も世の中にはまた何らかの変化が必ず起こるだろう。ユーザーの自由に対する新たな脅威が現われたら、われわれはGPL バージョン4を作成する必要があるだろう。その時が来た場合にプログラムをGPLv4へ問題なくアップグレードすることができるようにしておくことは重要だ。

 そのための方法の一つは、プログラムを「GPLバージョン3またはそれ以降のバージョン」の下でリリースすることだ。また別の方法としては、プログラムのすべてのコントリビュータが同意の元で、GPLの将来のバージョンのアップグレードについての決定権を持つ代理人を前もって決めておくという方法もある。3つめの方法としては、すべてのコントリビュータが一人の指名された著作権保持者に著作権を譲渡するという方法がある。この場合、その著作権保持者がライセンスのバージョンをアップグレードすることができる。いずれにせよ、プログラムはこのような将来のための柔軟性を備えておくべきだ。

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※編注 GPLがユーザーに与える「4つの自由」とは、(0)実行、(1)解析と変更、(2)再配布、(3)改変バージョンの配布のこと。


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