「企画マネジメント」では演技やフリも重要である。企画会議で出されたアイデアをバッサバッサと切りまくるマネジャーは、自己陶酔しているとしか部下からは見られない。自らの存在感を消して、自由に発言できる時間を与え、タイミングを見計らって正当な評価を下すことが大切だ。
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創造開発研究所所長の高橋誠氏は発想のルールとして、「判断延期」「自由奔放」「大量発想」「結合発展」「広角発想」の5つを上げている。参照記事
高橋氏は、中でも判断延期が最も重要であると話す。創造開発研究所では「ビッグエッグ」「TOSTEM」「ゆうパック」などのネーミングを成功させている。いずれも6人ほどのスタッフが2時間ほどで700個から1000個のアイデアを出し、その中から1つが選ばれた。
高橋氏によると、創造性を高めるには企画を「出す」ことだけに執着してはならないという。企画会議では「出す」ことが基本になりがちだが、収めることも意識しなくてはならない。
メンバーが出した企画のアイデアに対して、最初から評価を下していては、気持ちが萎縮してしまい「何を言っても、結局ダメなんでしょ」と思われてしまう。
「アイデアをどんどん出す“発法”とそれをまとめたり評価をする“収法”の2つの段階に分け、“発法”のときは判断を延期、一切アイデアの評価はしません。創造性が育たない組織ではこの“発法”と“収法”を区別しないで実施するケースが多い」(高橋氏)
リーダーはメンバーの自由な発想の場を確保してやる役目がある。そしてすぐに結果を求めてはいけない。会議に自由を与えるなどもってのほか、という考えはもはや通用しない。自由は与えるが、しっかりと後で評価するからね、という態度が重要だ。アイデアがポツポツと出始めてすぐに、素早く評価を下していけば確かにあなたは「キレ者マネジャー」としての面目は保てるかもしれない。しかし、確実は会議の場の空気は冷め切っていくだろう。会議の前半から中盤あたりまでは「昼あんどん」を決め込もう。存在感をできるだけ消してしまおう。
「金(きん)を得るには金の何百倍もの土砂を掘らなければならない。多くのムダがあって始めて金を手にすることができる。アイデアも同じ。999のボツがあってやっと1つの光り輝くアイデアを得ることができる。最初から金だけを得ようというのは論外です」(高橋氏)
もちろん自由だけ与えて、言いたい放題で終わる企画会議などはありえない。メンバーは自由も欲しいし、正当な評価も欲しいのである。好き勝手にさせているようで、マネジャーとしてしっかり目を光らせている、という態度が伝われば、メンバーは自分の出す企画に磨きをかけるために、事前準備を入念にするようになるだろう。“発法”と“収法”の区別は、企画会議だけで活用されるものではなく、会議全般で活かすことのできる方法である。
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