Web2.0を生かしたビジネス戦略を――BINETが研究セミナーを開催

ビジネスインテリジェンスネットワーク(BINET)はWeb2.0のトレンド把握とビジネスの可能性をテーマにした研究セミナーを開催した。

» 2007年06月18日 18時26分 公開
[藤村能光,ITmedia]

 ビジネスインテリジェンスネットワークは6月14日、Web2.0のトレンド把握とビジネスの可能性をテーマにした研究セミナーを開催した。セミナーは2部構成で行われ、ニフティの古河建純代表取締役社長と、NECシステムテクノロジーの島津秀雄システムラボラトリー所長がWeb2.0に対する見解や取り組みを示した。

マーケティング促進からショッピング支援へ

 第一部のテーマは「インターネットサービスを取り巻くトレンドWeb2.0」。日本が歩んできたインターネット事情やブロードバンドがもたらす変化、Web2.0の潮流など、インターネットの概論が中心となった。効率化や合理化の面が取り上げられるインターネット革命についてニフティの古河氏は「本質は情報主権の移行にある」と述べ、情報の主権は企業ではなくコンシューマが握り、企業の戦略も従来の「マーケティング促進」から「ショッピング支援」へと変化していると説明した。古河氏はWeb2.0について「競馬でいうと第二コーナーに差し掛かったようなもの。世間で騒がれてるほど特別なものではなくなっている」と独自の見解を示した。

画像 顧客中心のビジネスモデルが主流となっている

 ニフティは従来のインターネット接続などを扱うISP事業に加え、コンシューマ向けサービスを扱う利活用分野のサービスに力を入れている。ブログを解析して評判を分析するサービス「BuzzPulse」や、オンライン上で名刺交換ができる機能を持つSNS「BUSINESS SPACE」のベータ版など、Web2.0のトレンドを取り入れたコンシューマ向けの企業戦略を展開している。

画像 ニフティ、古河建純氏

未開発の市場を探せ

 第二部はWeb2.0を活用してどのように未開発の市場を開拓するかをテーマとして「Web2.0時代のブルー・オーシャン戦略」と題した講演が行われた。NECシステムテクノロジーの島津氏によると、Web2.0の誕生について「評判、人同士の連帯感、潜在的欲望など今まで分かりづらかったものに対し『見える化』を行うことで、誰も予想できなかったビジネスが生まれる」と説明した。

画像 NECシステムテクノロジー、島津秀雄氏

 NECシステムテクノロジーが開発した固定資産異動判定システム「RealScape」は、Web2.0を応用して見える化を行い、予期せぬビジネスモデルをもたらしたという事例だ。RealScapeは航空写真の3次元比較解析によって家屋の形状や色の変化を自動的に検出する技術だが、得られる3次元画像の色や形を細部まで表現できなかった。さまざまな業界で技術を提案したが、細部を表現するのにコストがかかることなどを理由にビジネス化には至らなかった。

画像 固定資産の自動変化検出

 しかしとある自治体への提案で事態は一変する。自治体では固定資産の課税根拠を得るために年に一度航空写真を撮影し、前年との比較で新築や増改築など家屋の異動情報を取得していた。この取り組みでは写真からの情報解析は自治体から委託を受けた測量会社が行っていたが、判読コストの増加、人を介することによる情報解析ミスが避けられないなど問題が山積していた。しかしRealScapeを導入することによって、建物の変化を3次元画像でとらえられることに成功し、人手の判定に比べて自動判定では新たな建物を見つけるなど効果を発揮した。当初考えていたポータル運用や観光サービスへの適用とは異なり、偶然から予想だにしなかったビジネスが生まれた。

画像 RealScaleの画面。建物や地形の細部は表現できないが、実際の建物と縦横の誤差が2メートルなので、固定資産の変化は目でみて分かる

 島津氏は「見えるものを解決する企業のソリューションは、いずれ価格競争に巻き込まれる。弊社はまず見えないものを見えるようにする技術を開発する。顧客を驚かせることが思わぬブルー・オーシャン開拓につながる」と続けた。現在はTime誌にも取り上げられた味覚診断ロボットを産学連携で開発するなど、新たなビジネスモデルを絶えず模索している。

画像 愛・地球博への出展やTime誌に取り上げられるなど、注目度の大きい「味見ロボット」

 最後に島津氏は「Web2.0による見える化とビジネスの結びつきは偶然によるところが大きい。顧客のニーズとわれわれのアイデアの出会いを増やすことがWeb2.0時代のビジネスだ」と締めくくった。

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