ゴールド氏によると、さらに第3のハードルが存在するという。「企業ではセキュリティがますます重要な問題となっているが、一般に知られる限りでは、iPhoneは十分に強力な防護機能を提供しない」と同氏は指摘する。
「多くの企業がモバイルデバイスのセキュリティ管理を重視している。企業では、携帯電話をロックしたり、データを暗号化するなどしてセキュリティを管理できる必要がある」とゴールド氏は語る。
ただしiPhoneの場合、これはそれほど問題にならないことを同氏は認めている。iPhoneでは、ネットワークアクセスを経由した形でしかデータにアクセスできないからだ。
今のところ、iPhoneユーザーが暗号化されたセキュアなSSH(Secure Shell)プロトコルを通じてリモートシステムにアクセスできるのかどうかは不明だ。しかし開発者のマーク・レスル氏は、iPhone用のWebベースのシェルアプリケーション「WebShell」の“バグだらけ”版を公開した。
「しかしリモートアクセスを行うのであれば、https SSL/TLSの使用を強く推奨する。これは、WebサーバのApacheを利用すれば簡単に構成することができる」とレスル氏は記している。
マサチューセッツ州アシュランドにある調査会社、Farpoint Groupのクレイグ・マサイアス社長によると、デバイスの紛失や盗難というリスクを考えれば、iPhoneは企業にとって「大きなセキュリティホール」になる可能性があるという。一般に知られている限りでは、iPhoneはドキュメントやスケジュールをデバイス上に保存しないが、最近の携帯電話と同様、コンタクトリストを備えており、Webベースアプリケーションにアクセスする機能も用意されている可能性が高い。
しかしマサイアス氏にとって、iPhoneがWebベースの情報にフォーカスしているというのは否定的な側面ではないようだ。「iPhoneのアイデアは非常に気に入っている。わたしはWebサービス信奉者だ。Webサービスは将来の大きな潮流になるだろう」と同氏は語る。
「結局、スマートフォンというモデル自体が、Webアプリケーションを利用するのに必要なネットワークの通信範囲内でなければ十分に機能しないのだ。ユーザーが通信範囲外にいるときは、電話がどれだけ“スマート”であっても通話することはできない」とマサイアス氏は指摘する。
「しかしiPhoneが直ちに、IT部門の認可リストに含まれることはないと思う」と同氏。
マサイアス氏は、企業社会では、Exchangeなどが備えるプッシュメールのサポートの欠如は否定的な要因になると考えている。「しかしiPhoneと連携した製品が早期に登場するのは間違いないと思う」(同氏)
経営幹部やITマネジャーらは、企業環境でiPhoneがどのような形で受け入れられるかに関心を抱いているかもしれないが、アナリストらによると、Appleは企業でのiPhoneの普及を狙ってはいないという。
「iPhoneは“プロシューマー”ユーザーをターゲットにしているわけではない」とゴルビン氏は指摘する。
すなわち、BlackBerryやPalmのTreo製品ラインとの競争を狙った製品ではないという。「これはAppleが狙っている市場セグメントではない。彼らは富裕層のコンシューマーに狙いを定めているのだ」と同氏は話す。
ゴールド氏も「iPhoneは企業をターゲットにしていない。基本的にはコンシューマー分野を狙った製品だ」と指摘する。
「しかし波及効果があるだろう」とゴールド氏は話す。同氏によると、企業での普及は、社内の誰がiPhoneを買うのか、そしてそのiPhoneユーザーが技術サポートを要求できる地位にいる人なのかどうかによって決まるという。
ゴルビン氏も、そういった形でiPhoneが企業環境に進出するとみている。「幹部の行動は“エンタープライズに感染する”。BlackBerryの企業進出もそのようにして始まった」(同氏)
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