OLS 2日目:カーネル開発、ファイルシステムについての講演(2/3 ページ)

» 2007年07月06日 12時20分 公開
[David-'cdlu'-Graham,Open Tech Press]
SourceForge.JP Magazine

 さらに、カーネルの各リリースに貢献した開発者の数についての調査の発表もあった。それによると、2.6.11カーネルには475人の開発者が貢献したという。そして2.6.21カーネルでは800人、まだリリースされていない2.6.22カーネルについては今の時点ですでに920人の開発者が貢献したとのことだ。ただし実際の数字は以上に示した数字よりも多少小さくなるかもしれないとした。その理由は、カーネル開発者は自分の名前のスペルを間違う傾向が高いためだという。とはいえ、そのような間違いはできるだけ正すようにベストは尽くした結果の数字だとのことだ。

 カーネル開発コミュニティーは急速に成長しているようだ。最初の2.6カーネルツリーでは700人の開発者しかいなかったのに対し、2.6.1初めから2.6.22-rc5までの2年半では、約3200人の人々がカーネルにパッチを寄与したのだという。なおそのうち半分の人が1つのパッチを寄与し、1/4の人が2つのパッチ、1/8の人が3つのパッチ……という興味深い統計結果になっているとも指摘した。

 クローハートマン氏は、質ではなく量について言えば、とした上で、Linuxカーネルへの最大の貢献者はアル・ビーロ氏で、この2.5年間に1339個のパッチを寄与したのだという。次点はデビッド・ミラー氏の1279パッチ、そしてアドリアン・バンク氏の1150パッチ、アンドリュー・モートン氏の1071パッチが続くとした。トップ10も発表されたが、さらに長いリストはこのトピックを扱った同氏の白書に掲載されているとのことだ。また現在はカーネル開発者の上位30%が全作業の約30%を行なっていて、このことは、カーネル開発者の上位20%が全作業の約80%を行なっていた2.5年前の状況と比較すると非常に大きな状況改善を表わしていると述べた。

 クローハートマン氏は矢継ぎ早に統計情報を紹介し続け、その次には、パッチを実際に書くのではなく、サインしたパッチの数が多い開発者を紹介した。トップはリーナス・トーバルズ氏の1万9890パッチで、次にアンドリュー・モートン氏の1万8622パッチ、デビッド・ミラー氏の6097パッチ、グレッグ・クローハートマン氏自身の4046パッチ、ジェフ・ガージック氏の3383パッチ、そして土曜日のOLS基調講演者でもあるジャームス・ボトムレイ氏が9位で2048パッチだった。クローハートマン氏自身は、パッチを読むことが自分の生活のすべてだと感じることもあると告白した。

 次に、カーネル開発を資金的に支援している企業についての話題があった。企業に雇用されていることが知られている人々によって寄与されたパッチの数を元に、当該期間に転職した人を考慮せずに計算したところ、Red Hat社が2位で11.8%、Novell社が3位で9.7%、Linux Foundationが4位で8.1%、IBM社が5位で7.9%、Intel社が6位で4.3%、SGI社が8位で2.2%、MIPS社が9位で1.5%、HP社が10位で1.3%だったという。

 注意深い読者は1位と7位が抜けていることに気づいたことと思う。1位と7位は後から発表された。7位は、学生など、独自に開発を行うアマチュア開発者として知られる人々で、3.9%の割合だった。そして1位は、おのおのの寄与は10パッチ以下である、所属の分からない人々であり、この2.5年間のカーネル開発全体の33.2%を占めていた。

 クローハートマン氏は、Linuxを使っているがコントリビュータのリストに名前の入っていない企業は、Linuxの開発に関して何か不満があるなら、自ら開発プロセスに参加するべきだと述べた。また、自社でカーネル開発に貢献しないのであれば、AMD社のようにNovell社(クローハートマン氏の雇用主)などのディストリビュータと下請け契約を結ぶか、より安く抑えるためには、自社のニーズを満たすために必要なカーネルの開発をしてもらうよう個人コンサルタントと契約することなどができると述べた。

 今回もクローハートマン氏の講演は、非常に楽しく活気があった。前記のような内容の要約ではそのような様子を伝えきれないのが残念だ。

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