「素人集団」からの脱却――キャリアは自分の手でつかむ!運用管理の過去・現在・未来(1/2 ページ)

“平成の大合併”で誕生したA市でインターネット系システムを担当する渡辺さん(仮名)。情報化が遅れていた合併前のB町では不遇な管理者生活を送っていたが、地道な努力を重ねて最大限の成果を発揮したことにより、苦労が報われることになった。

» 2007年07月19日 07時00分 公開
[敦賀松太郎,ITmedia]

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 渡辺さん(仮名)は、A市の市役所に情報システム担当として勤務している。A市は、半年前に周辺の市町村が合併して発足した新しい自治体だ。渡辺さんは合併した市町村のシステム統合を進めている真っ最中である。同僚の市職員の中でも若手の渡辺さんは、インターネット系システムを任せられており、つい最近、Webサイトをリニューアルしたばかり。市民からは、「ホームページが使いやすくなった」とお褒めの言葉が多く寄せられ、渡辺さんはようやく自分の苦労が報われたと感じている。

 渡辺さんは、合併前のB町役場でも情報システム課に勤務していた。B町は、合併理由の御多分に漏れず、非常に厳しい財政状況で、そのしわ寄せはもちろんシステムにも及んでいた。

システム担当者は素人集団?

 B町の情報化は非常に遅れていた。e-Japan戦略によって電子自治体の実現に向けた取り組みを始めたものの、ベンダーが用意した電子自治体ソリューションをそのまま当てはめたような、工夫のないシステムだった。財務会計など内部事務の基幹系システムは、2000年問題が話題になる直前の1998年ごろに入れ替え、そのまま運用を続けているものだった。職員の業務を効率化するワークフローシステム、住民サービスを考慮した文書管理システムなどは、一部の限られた要求によって付け焼き刃的に導入されたものが多く、単体のシステムが散在しているという有様だった。

 渡辺さんは、B町の職員として採用されてすぐに情報システム課に配属になった。渡辺さんは文系出身であり、それまで情報システムに関する知識はなかった。それは渡辺さんだけでなく、上長の情報システム課長をはじめ、ほとんどの職員は情報システムに関して知識を持っていない、いわば「素人集団」だ。B町の職員配置は年功序列が基本であり、課長は前任でまったく畑違いの学校給食を担当していた人物である。

 こういう人材の集団では、情報システムを自治体の戦略に有効活用しようというアイデアが生まれてくるのは難しい。競争入札を勝ち取ったベンダーが構築したシステムを、そのマニュアルどおりに運用することが、情報システム課の役割になっていた。

「趣味」で運営される自治体サイト

 渡辺さんも、働き始めたときは、そうした現状が当たり前に受け入れていた。しかし、B町のWebサイトの管理を担当するようになってから、次第に情報システムの重要性に気付いてきたという。

 渡辺さんが担当する前、B町のWebサイトの運営は、なんと「インターネットが趣味」だという職員の有志によって運営されていた。したがって、提供できる行政情報が限定されていたばかりか、見た目や操作性も明らかに「趣味の作品」と分かる出来の悪さだった。さすがにこれには、B町議会からも指摘があり、有志による「奉仕」はやめて、情報システム課で管理することになった。それを渡辺さんが任されたのだ。

 インターネットに関する知識は、自宅でWebブラウズする程度だった渡辺さんだが、持ち前の生真面目さから独学で勉強し、HTMLによるホームページ作成だけでなく、インフラとなるサーバやネットワークに関する知識を身に付けていった。そうした中で、B町のネットワークインフラがいかに不十分であり、セキュリティ上も脆弱か、その現状が少しずつ見えるようになってきた。また、県やベンダーが開催する電子自治体セミナー、住基ネットの勉強会などを通じて、B町の現状がいかに遅れているかを痛感することになった。

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