「素人集団」からの脱却――キャリアは自分の手でつかむ!運用管理の過去・現在・未来(2/2 ページ)

» 2007年07月19日 07時00分 公開
[敦賀松太郎,ITmedia]
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担当した仕事で最大限の成果を

 自ら勉強することで、自治体の情報システムの使い方によって、業務改善や住民サービスに大きな差ができることが分かった渡辺さんは、課長にシステム改善を提案する。しかし、課長は「検討してみる」という後ろ向きの発言しかしない。新しいことに挑戦して失敗することを恐れる課長を腹立たしく思いながらも、渡辺さんは情報システム課にシステムを提案する権限などないという空気を感じ取り、不平不満を口にすることはなかった。

 自分の力だけではどうしようもないと悟った渡辺さんは、少なくとも自分が担当するWebサイトだけは、住民や他の自治体に見せても恥ずかしくないものを作ろうと努力した。公開できる情報を各部課に足を運んで集めるとともに、町報を発行する総務課の担当者と協力して、学校教育や地域振興に役立つコンテンツも広く集めた。こうして完成したWebサイトは、町議会でも好評を得た。

あきらめない気持ちが評価される

 結局、渡辺さんが必要性を感じていたB町のシステム改善は、最後まで手が加えられることはなかった。その最大の理由は、周辺市町村との合併が決定したことだった。市町村合併では、すべての情報システムを再構築しなければならない。B町だけでシステム再構築に着手しても、まったく無駄になる可能性もある。見送りは当然のことだろう。

 合併が正式に決定した後は、各市町村の情報システム担当者が集まり、システム統合についてのプロジェクトがスタートした。B町のWebサイトが評価され、渡辺さんもメンバーとして参加することとなり、インターネット系システムの担当となった。このプロジェクトに参加して、渡辺さんはB町では果たし得なかった情報システムをようやく構築できる、と心を躍らせたと振り返る。

 合併後の組織再編は段階的に行われている最中だが、情報システム関連部署だけはいち早く統合され、渡辺さんは現在、A市の市庁舎に職場が変わった。ただし、B町の情報システム課長をはじめ、ほとんどの人員は別の部署へ異動となり、A市の情報システム部に配属されたのは、渡辺さんを含む数名だけだった。

 旧態依然の体質では、今後の自治体間競争は勝ち抜けない。情報システムは、私企業だけでなく、自治体にとっても戦略を実現する重要な役割を担っている。渡辺さんはそれを肝に銘じ、今日もシステム管理の仕事に携わっているという。

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