先進7カ国中11年連続の労働生産性最下位という汚名を着せられた日本。今後もITは日本企業の現場を助け、生産性を高めるものとなりえるのか?
財団法人社会経済生産性本部の発表によると、日本の労働生産性は先進7カ国の中で最下位という。ITは日本企業の現場の生産性を高めるツールとなるのか? SAPジャパンが7月24日に開催した「SAP BUSINESS SYMPOSIUM '07」で、パネルディスカッションが行われた。
アドビ システムズマーケティング本部本部長の伊藤かつら氏、マイクロソフト執行役専務エンタープライズビジネス担当の平井康文氏、SAPジャパン シニアバイスプレジデント パートナー&マーケティング統括本部長の安田誠氏が参加した。モデレータはITmedia エグゼクティブ編集長の浅井英二氏。
国の労働生産性にはさまざまな要因が絡み合い、一概に比較することはできない。日本のサービス業の生産性が低いかというと、欧米に比べ接客などのサービス品質が高い日本とでは、そもそも比較すらナンセンスだという話もある。しかし、11年連続の最下位というのは良くない傾向には違いない。
現場の生産性の問題は、日本人の働き方に起因するのではないか? アドビの伊藤氏は、米国本社の人間と話していると、意見がかみ合わないことがあると感じている。そんなとき「流れている血が違うと感じる」という。それが企業の差になって表れているのではないか、と話す。
「日本は農耕民族。今日の天気がどうだとか、現場が優れていてそれをボトムアップで持ち上げる。それに対して、米国は狩猟民族。リーダーが北にマンモスがいると言えば、それに向かって行くトップダウンの素早さがある」(伊藤氏)
この違いを認識せずに、欧米のやり方をそのまま取り入れても日本でそのまま効果が出るわけではないという。
SAPジャパンの安田氏も「この違いを共感できる」という。「特にITとなると、(日本の)現場の改善意識が良い方向にも悪い方向にも働いている」。ITベンダーサイドの人間としてシステムを売っているが、新しいシステムによって、今の仕事のやり方が変わることに抵抗する勢力も多いというわけだ。
順送りの人事など、日本企業の組織運営の問題も根深く絡んでいる可能性もある。マイクロソフトの平井氏は、ITとは関係ないとしながらも、経営品質賞を受賞したイタリアンレストランを例に挙げ、経営からアルバイトまでが一丸となっている「現場が活性化している企業はすごい力を発揮する」と称賛する。
とはいえ、日本でも欧米のように、組織の構造を越えたプロジェクトベースの働き方へ移行してきている。異なる部門の現場をまとめ上げ、チームとして機能させるというスタイルだ。このような仕事が主流になるにつれ、現場の働き方も変わってくるかもしれない。新しい働き方を受け入れた上で、生産性を高め、現場力を高める必要が出てきたわけだ。
伊藤氏は、このようなプロジェクトをまとめるリーダーを「ニューリーダー」と呼ぶ。SAPのようなERPが企業のオペレーションを効率化してきたが、その情報から気づきを得て生かす、という資質を備えたリーダーが求められているという。
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