IBM、「Power6」ベースの「System i」シリーズを間もなくリリース

IBMが、同社の新たな「Power6」プロセッサを搭載した、初めての「System i」サーバをリリースしようとしている。

» 2007年07月25日 18時17分 公開
[Scott Ferguson,eWEEK]
eWEEK

 ニューヨーク州アーモンクに拠点を置くIBMは7月24日、System i 570サーバについて発表するとともに、2008年に提供する「i5/OS」オペレーティング・システム最新版の新機能を詳しく紹介した。

 IBMは今年5月に、クロック速度4.7GHzを実現した次世代チップである、Power6を発表している。リリースから2か月間、IBMはPower6を一部の「System p」サーバにのみ搭載してきたが、24日にはIBMの幹部が、同チップをほかのシステムにも組み込んでいくことを明らかにした。

 従来IBMのSystem iシリーズは、同社が従業員数1000名未満の企業と定義している、中小企業(SMB)を対象に販売されてきた。IBMは一部のSystem iサーバに手を加え、ミッションクリティカルなアプリケーションを稼働させようとする小規模企業向けに改良し始めているが、Power6プロセッサを積んだ最新のSystem i 570は、同サーバシリーズの元来の顧客層をターゲットにしていると、同社のハイエンドPowerシステム担当ディレクターを務めるジム・ヘリング氏は説明した。

 この種の企業には、金融サービス業、製造業、サービス業、カジノなどの遊興産業などが含まれるという。

 「System iサーバが、大企業ばかりでなく中小企業の顧客にとっても有用な製品であることは、すでに周知の事実である。同システムを利用すれば、メールもしくはトランザクション処理などの複数のワークロードを集約し、すべてを同一プラットフォーム上で実行できるようになる」(ヘリング氏)

 IBMはNortelと協力し、System iサーバ上で動作するVoIP(Voice over IP)およびマルチメディアアプリケーションの統合スイートを提供していくことになったが、これなども対中小企業戦略の最新の事例と言える。

 IBMは最近になって、System i部門を2つの別組織に分割する方針を発表した。一方の組織は、同社の大企業顧客を相手に、System i 570および590、さらにはSystem pシリーズなどのハイエンドシステムを扱うという。

 もう一方の組織は中小企業に応対し、主力製品とするのはSystem i 515/520/550サーバなどだ。IBMの会長兼最高経営責任者(CEO)であるサム・パルミジャーノ氏は、5年以内にはSMBが同社の最大顧客層になると話している。

 Pund-IT Researchのアナリスト、チャールズ・キング氏は、7月19日に発表した調査報告書に、IBMはSystem i部門を2分割することで、みずからの強みをさらに生かそうとしていると記した。また個別の組織を立ち上げれば、IBMやパートナーが各顧客層の異なるニーズに注力していくことも可能になるという。

 「Powerベースのエンタープライズクラスシステムだけを扱っている1つの部署と取り引きできれば、大企業顧客は製品を購入したり、サービスおよびサポートを受けたりする際の手間を軽減できる。また、中小企業特有のニーズを心得ている組織の存在は、SMBにとってはITにおける選択肢が広がるという点で好ましく、IBMにとっては小規模企業向けベンダーとしての立場を強化する土台になる。IBMはSystem iを両組織の主要ソリューションに据えることで、独立系ソフトウェアベンダー(ISV)や開発者の取り組みを支援し、同プラットフォームの状態を良好に維持して、寿命を延ばそうともくろんでいる」(キング氏)

 Power6プロセッサを搭載した大企業向けのSystem i 570は、ソケットを4つ備えており、価格は16万5000ドルから。最大で、バッファドDDR2 RAM(Double Data Rate 2 RAM)は768GB、SAS(Serial-Attached SCSI)ドライブは6基、データ容量は387TBまでアップグレードできる。最高160個の仮想ポーションを作成し、コンピューティングおよびオペレーションリソースの共有を容易にすることも可能だ。

 なお、IBMの「Capacity on Demand」サービスを利用すれば、必要に応じて処理能力を増強できるという。

 IBMは24日にPower6ベースのSystem iを発表したが、同製品は9月まで一般には販売されない。

 新たなSystem iに加え、IBMはi5/OS V6R1の新機能の詳細も明らかにした。一部の顧客が、同OSのβテストを間もなく始める予定だ。IBMは同OSとデータベースを連係させたほか、多数のセキュリティおよび仮想化機能を改良したと、ヘリング氏は話している。

 例えばi5/OSの新版には、ハードドライブもしくはストレージテープ上のデータを保護する、強力な暗号化機能が追加された。また、新しい仮想化機能は、1つのi5/OSパーティションにほかのi5/OSパーティションのストレージをホスティングさせることができ、各自のハードウェア上に別々のパーティションを置いておく必要がなくなっている。

 電力管理やコンフィギュレーションといった機能を実現するIBMの「Systems Director」と連動できるようになる点も、大きなポイントである。Systems Directorとの統合が可能になれば、同OSの管理能力は格段に向上し、Microsoft WindowsやUnixを使用する混合環境のサポートも充実すると考えられる。

 さらに新版OSは、SAN(Storage-Area Network)製品などの「IBM System Storage」とも高い互換性を持つようになると、ヘリング氏は述べている。

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