ネットと政治の微妙な関係“選挙マーケティング”が始まっている(3/3 ページ)

» 2007年07月26日 13時11分 公開
[森川拓男,ITmedia]
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 これらは決して国民世論のすべてはないが、全世界に一瞬で配信できる上に、反応がダイレクトに伝わってくるので、政治家個人にとっても、政党にとっても、ネットを使った“選挙マーケティング”は重要になってくるはずだ。

 しかし、これが有効に活用できるのは通常の場合。ひとたび選挙期間中になると、話は変わってくる。先述した、“公選法”に縛られるのだ。

公選法に関するブログサービス各社の対応

 とにかく、いくら政党や候補者が済し崩し的に既成事実を作っている現状であったとしても、法的なバックグラウンドがあるわけではない。この公選法では候補者のみならず、一般人も、その対象となるのである。

 例えば選挙期間中に不用意にブロガーを呼んで懇親会などを行い、宣伝してもらうことはブロガーが摘発されてしまう可能性があるわけだ。

 そこで、ブログサービス各社も、選挙に対して対策を取っている。

 例えばあるブログサービスでは、ガイドラインを引用して「選挙の事前運動、選挙運動又はこれらに類似する行為、及び公職選挙法に抵触する行為」は利用規約に反する禁止行為であるとして、注意を呼びかけている。仮にそれらが含まれるエントリーがアップされていたのを発見した場合、ブログサービス側で削除する場合があるともいう。

 このブログサービスを含め、多くの場合は、そもそも利用規約で禁止している。しかし、実際には数多くの政治ブログ、政治ウォッチャーブログが、こういったブログサービスを利用し開設しているのも実情だ。日本では海外と比べると少ないかもしれないが、ジャーナリスト的なブログは数多く存在するのだ。

 そのような背景で、選挙期間中はどうだろうかと思うと……、表現に気を付けているブログサービスもあるが、正直言って、抵触するのではないかというものも数多く散見する。

 ここでもやはり法律が現実に追いついていないようだ。

ネット時代の選挙はどうあるべきか

 このように、政治の世界とネットの世界とは、すでに切り離せないのが現実だが、それを取り囲む法律は旧時代のままである。

 これをしっかり活用できるようにするためには、公選法を改正して、ネットを選挙運動にも活用できるようにするべきだろう。いまのように、済し崩し的にやってしまうのは、問題だ。ぜひこれは早いうちにやっていただきたいものだと思う。

 ただし、ネット活用には問題点も多い。

 例えば、これまでも国会で指摘された「成りすまし」に関する問題。また、すでに発生しているが、議員個人の不用意な発言による炎上だ。後者の場合、きちんとした意見ならばよいが、炎上に乗っかるだけの人もいる。また、成りすましともつながるが、反対陣営などがワザと行うケースもあるかもしれない。

 確かに、これらの可能性も否定できないが、一定のルールを作れば防ぐことはできるハズだ。例えば、ネットを活用した選挙運動は、Webサイト、ブログ、読者が登録する形で配信されるメールマガジンに限ってOKとするだけでよいだろう。

 また、選挙期間中は政治家ブログへのコメントなどを禁止して、意見はメールフォームなどから受け付けるとするなどの対策を取れば、反対陣営などからの嫌がらせなども、ある程度は防御できるはずだろう。

 また、現在は限られた時間しか放送できない政見放送も、Webを通じていつでも見られるようにするべきだと思う。一部の政見放送が動画サイトを通じてアップされているのを見かけたが、それらは正しいものかどうか分からない。だからこそ、選挙管理委員会のWebサイトなどで、政見放送を配信すればいい。これで、日本全国のみならず、海外にいる有権者だってネットを通じて政見放送を見て、投票することが可能になるのだ。しかも、公的な機関が配信すれば、改変されたものではないと分かるわけだから問題はないはずだ。そもそも、現在のようないつ放送しているのか分かりづらいような政見放送で平等というのはナンセンスなので、ぜひ、これは早く実現してほしいと筆者は考えている。

 また、ネットを使って公開討論会をすれば、もっと幅広く意見を表明することができるはずだ。

 仕組みさえしっかりと作れば、意見を表明し、有権者の意見も吸い上げることが簡単にできるのが、ネットを利用した選挙マーケティングだ。それも、議員個人や秘書などが空いた時間とかを利用してこなせば、低予算で大きな効果が期待できる。いまの選挙では、あまり効果がないところにばかりお金をかけているような感じがするのだ。

 そのためにも一刻も早くネットでの選挙運動、政治活動が正々堂々と広く行えるように、公選法の改正をするべきなのだ。今後の動きを注視したい。

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