ネットと政治の微妙な関係“選挙マーケティング”が始まっている(2/3 ページ)

» 2007年07月26日 13時11分 公開
[森川拓男,ITmedia]

 すべての候補者に関して平等に扱われるという政見放送にしても、ハッキリ言って一般の人に見られる時間に放送されていない。わざわざ録画してまで見る人も少ないだろうから、多くの有権者は政見放送を見られないということになるのだ。ちょうど放映していたのを見たとしても、それが自分の選挙区と違う地域の政見放送であれば、意味がない。

 本当に、各候補者にとっても平等となるのは、ネットを活用した形ではないだろうか? ネット上ならば、一般人だろうが総理大臣だろうが関係ない。誰でも意見を発信できる。

 公選法自体が時代に合っていないという意見が出るのも当然の話だ。

“選挙マーケティング”が始まっている

 公選法を改正して、ネットでの選挙運動を可能にしようという動きは、すでに始まっている。それも昨日今日の話ではない。すでに1995年には、ネットでの選挙運動解禁について国会に取り上げられているのだ。しかし、なかなか先に進んでいないのが実情である。

 ネット時代のいま、Webサイトやブログ、メールなどを活用すればダイレクトに有権者に訴えられるし、何よりも少ない予算で、より大きな効果が期待できる。小政党や個人であってもすぐにできるのが魅力的だ。

 これまで、政治家の選挙運動といえば、いわば“どぶ板選挙”。想田和弘監督の「選挙」というドキュメンタリー映画でも見られるものが、日本の選挙運動の実態といっても差し支えないだろう(外部リンク)

 確かに、選挙と言えば候補者の名前を連呼する選挙カーが選挙区内を走り回り、候補者も演説をし、有権者と握手をする。とにかく名前を覚えてもらうというのが、日本の選挙である。

 最近では、マニフェスト(政権公約)を訴えるが、それとてもじっくりと目を通せるかと言うと微妙なところ。しかし、筆者は印刷されたマニフェストを実際に手にしたことはない。どこで配っているのか分からないというのが実際だろう。

 いまの時代、やはりネットという媒体を外すことはできない。各政党も公式Webサイトを立ち上げているし、そこでもマニフェストを公開している。筆者も、紙媒体ではなく、このネットで公開されたマニフェストに目を通した。

 政党も、テレビCMを流すなど、マーケティング的な手法を取っているが、いまやネットにおいても同様なことをする必要があるのではないだろうか。いや、実際にバナー広告を出してみたり、メールマガジンを配信したりするなど、ネットにおけるマーケティング手法は政治の世界にも侵食していると言っていい。

 それが現在、さらに進んで“ブログマーケティング”も利用すべきところに来ているといっても過言ではないだろう。いや、もやはブログマーケティングは必須かもしれない。

 例えば政策などについて、ブロガーがどういう反応を示しているかを分析し、実際の政治活動に結び付ける。これなどは、企業が実際に行っているブログマーケティング手法の1つだ。

 また、過去に実行されているが(関連記事)、一般の記者ではなくブロガーを招いて会見を行い、質疑応答をしながら、その模様をブログで発信してもらうなどということだって、立派なマーケティングといえるだろう。

 さらに政治家個人が開設するブログも、重要な要素だ。これまでは、国会などで自分が取り組んできた内容を報告する手段が限られていたが、Webページを作成することから始まり、双方向で有権者とも簡単につながることができるブログというツールを活用することで、より国民に密着した政治を行えるようになってきた。

 もちろん、これは諸刃の剣で、幾つかの政治家ブログが炎上する様子を目撃したことがある。これは、議員個人だけでなく、所属政党にも飛び火することがあるので、今後気をつける必要があるだろう。

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