エンジニアとお盆休み(1/2 ページ)

長期休暇にはコンピュータが実現する多くのことに驚き、感動してほしい。オンラインバンキングで両親に仕送りをしたり、米国に留学中の友人とビデオチャットをしたり、YouTubeやニコニコ動画で涙を流して笑ったりしてほしい。そして、忘れてはならないのは……。

» 2007年08月13日 06時00分 公開
[山口陽平,ITmedia]

 お盆である……。

 多くの会社が休業となり、都内の電車や道路がガラガラに空く時期。この4月に就職した「システムエンジニア1年生」にとっては初めてのお盆休みである。新人研修で基礎を学び終えて現場に出始めたところ、という境遇の人が多いことだろう。

 システムエンジニアになった人にとって初めての夏休みには、どのようなことに挑戦すべき時なのだろうか? このコラムでは、筆者の経験を基として会社ですべき2つのこと、そして自分ですべき3つのことについて紹介していこう。

決まった休みがないことを理由に

 システムの運用を担う企業の多くは、決まったお盆休みがない。

 システム運用を24時間継続する責任があるからである。運用を抱えたシステムエンジニアは、不測の事態に備えることができる担当者を、必ず1人以上待機させるよう順番に夏休みを取ることが多い。

 そのような中で、先輩社員が休暇を取ることは新人システムエンジニアにとってのチャンスになる。

 引き継ぎを受けることで、細かなところまで業務内容を学べるからである。ただし、確実に引継ぎを受けておかなくては、トラブルを起こしてしまい、休暇中の先輩を呼び戻してしまうことになるかもしれない。何も起こらないときには受身の姿勢で業務説明を聞くよりも、「先輩が休みに入る前に何としても業務を覚えなくてはならない」という積極的な姿勢で学んだ方が集中力を高めることができる。ここで、どうせ何も起きないだろうと思ってはイケナイ。引き継ぎを受けるに当たっては、留守中を預かっているのだ、という責任を感じることが重要である。

 また、先輩の休暇中は社内外の関係者に対して自分の名前を売り込むチャンスでもある。

 入社して4カ月あまりのこの季節では、自分宛に電話がかかってくる機会は少ないだろう。新人らしく電話番をしながら、かかってきた電話に対し「担当の者におつなぎいたします」と応対していることだと思う。担当者の不在は「私が承ります」と答えるきっかけになる。しっかり代打の役目を果たすことができれば、相手はあなたというチャネルを認識してくれるわけだ。逆にここで失敗すれば、あなたというチャネルは「要注意の新人さん」と認識されてしまうかもしれない。自分に与えられた役割を全うし、代打からスタメンへの昇格を目指そう。

休み限定の運用を覚えるチャンスだ

 ゴールデンウィークやお盆、年末年始などはシステムの利用者が一斉に休む時期である。利用者が休みであればシステムエンジニアも休みであるように思われるかもしれないが、そうではない。その休みの間にシステムを停止してバックアップや部品交換など、普段行うことができない保守作業をすることがあるからだ。鉄道や高速道路の保守作業は、深夜の非稼働時間帯に行われる。それらと同様に、日中止めることができないシステムの保守作業は深夜や長期休業期間に行うことになる。

 しかし、海外拠点の利用があるシステムでは1日24時間のうちの非稼働時間が数時間しかない、または全くないというシステムもある。このようなシステムは多重化などにより高可用性を備えるように構成するため、局所的にシステムを停止してもサービスを継続できる場合が多い。

 しかしあらゆる面において完全な多重化を行うには多額の投資が必要になるため、予算によってはシステムの構成に単一障害点の存在を許してしまうことがある。そのようなクリティカルな部分に手を入れる必要が発生した場合、システムを全面的に停止しなくてはならない。緊急性を要する作業であればシステムを停止してでも交換を行うが、緊急性が低い作業は長期休業期間の作業予定に積み上げられていく。

 そのような作業が多くなると休業期間中のメンテナンス作業が“時間との戦い”になることがある。

 予定をすべて消化するには事前に効率的な作業計画を作成し、代替環境で十分なリハーサルを行うなどの準備が必要である。

 年に数回しか起動画面と終了画面を拝めないほど稼働率の高いシステムもあるだろう。そのようなシステムの停止と稼働の手順を本番機で覚えるためには休み中の保守を担当するしかないわけだ。ドキュメントやテスト環境でしか起動と終了の様子を知らないという人が、いざという時に正しく動いているかどうかを判断できるだろうか?

 普段の状態をよく知るには、普段の保守作業に参加して普段の状態を確認しておくのがよいだろう。新人は戦力外と見なされてそのような作業のメンバーから外され、「休みは好きな時に取っていいよ」と宣告されているかもしれない。しかしその裏でこのような作業が行われているならば、積極的に手を上げて参加してみる価値があると言える。

コマンドを覚えることが自然に

 システムエンジニアの業務ではコマンドが使用されることが多い。そのため、逐一頭の中でスペルを思い出してタイピングしていては作業に時間がかかる上、間違ったコマンドを送ってしまう可能性もある。

 ディレクトリの中身を確認したいと思ったら即座にlsというキーを押下できるようになりたい。早く正確に作業を行うためには「コマンドを指で覚えろ」と言われるほどである。

 しかしUNIX系のコマンドを練習する環境が身近にないこともある。そのような場合、自分のPCにVirtualPCやVMwareなどの仮想環境を構築すると良い。仮想環境には簡単にバックアップと復旧を行う事ができるというメリットもある。そのため、rmコマンドにワイルドカードを組み合わせたような危険なコマンドも心置きなく実行する事ができる。うっかり設定を壊してしまった時も、練習だと思って復旧に挑戦してみよう。

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