明日の検査、担当医の名前は分かりますか?――活躍する医療コンシェルジュeラーニングで資格取得を後押し(1/2 ページ)

コンシェルジュというと、ホテルを思い浮かべるが、医療機関にも患者と病院の間に立ち、適切で迅速な医療を手助けする「医療コンシェルジュ」がいるという。

» 2007年08月16日 09時09分 公開
[大西高弘,アイティセレクト編集部]

導入前の課題

医療コンシェルジュの資格認定には連続3日間の講習を必要とするが、日程を調整できない取得希望者がいた。資格取得希望者にはさまざまな経歴の人がおり、講習内容のレベルを分ける必要があった。


導入後の効果

e ラーニングシステムの導入で、現場講習が必要なカリキュラム以外はそれぞれ自宅などで受講できるようになった。コンテンツを受講者のレベルに自由に合わせることができるようになった。


 体調を崩し、自宅近くの病院で診察を受けた際、さらに詳しく検査をするために、紹介状を書いてもらい、大学病院などで診察を受けるケースは多い。この時、患者の立場で最も苦痛なのが、待ち時間だ。あるいは、訪れた先の大病院での連絡が悪く、待たされたあげく当日は診察を受けられず、改めて日程が伝えられるというようなことも、珍しいことではない。

 こうした事態の打開に必要なものは個人と病院の間に立ち、正確な情報を把握し、迅速に医療が受けられる環境を整える存在である。

 2005年に発足した、特定非営利活動法人「日本医療コンシェルジュ研究所」は医療コンシェルジュという資格を制定し、資格取得希望者への研修、検定を行い資格認定をした後、希望病院に医療コンシェルジュを派遣する活動を行っている。現在資格認定を受けている人は106人(2007年5月時点)。医療コンシェルジュは患者に個別に付くのではなく、主に大病院に常駐し、患者が最初に診察を受けた小規模病院と連携し、また、大病院の中の組織連携を助ける。

最善の医療環境とは

 コンシェルジュといえば、ホテルにデスクを構え、宿泊客のあらゆる要望に応える存在が有名だが、医療コンシェルジュは活動をホテルから大病院に移した存在ともいえる。

 同研究所の理事長、深津博氏は名古屋大学医学部付属病院放射線部の准教授でもある。医療コンシェルジュの制度は名古屋大学病院でも導入され、大きな効果を上げているという。

 「現在全国の12病院で医療コンシェルジュは導入されています。ただでさえ医療を受ける側は不安を抱えている。検査をするまで誰に検査を受けるのかが分からないようでは、良い医療環境とはいえない。待ち時間の短縮とともに、医療コンシェルジュは的確な情報を患者側に提供します」と深津氏は話す。

日本医療コンシェルジュ研究所 理事長 深津博氏

 06年から開始された医療コンシェルジュ資格認定のための研修はこの8月で6回を数える。

 取得希望者は医療関係者だけではなく、一般の企業に勤務した経験を持つ人なども含まれる。この資格はスタンダードコンシェルジュとエクスパートコンシェルジュに分かれている。スタンダードは医療資格の有無は不問となっている。

 こうしてスタートした資格認定だが、希望者が増えるにつれ、さまざまな課題が発生してきた。資格取得には名古屋大学病院で連続3日間で講義研修を受講する必要があった。しかし、その日程を空ける余裕がないケースも希望者の中に出てきた。また、医療資格を持つ人とそうでない人では、研修内容を変える必要もあった。

 「例えば一般のサービス業に従事されていた人は、基本的な接客マナーなどはすでに身についているので、医療関係の研修に時間を取りたい。医療資格を持っている人はその逆になる。受講者それぞれに合ったカリキュラムはできないものかと考え、eラーニングを導入しようと決断したんです」(深津氏)

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