Tech・Ed 2007で配布された次世代開発環境「Visual Studio 2008」のβ2版で、現バージョンからの変更がどのように行われているかを見てみよう。
Tech・Ed 2007では、先ごろリリースされたVisual Studio 2008 β2の配布も行われた。次世代の開発環境として参加者の注目を集めている。現行であるVisual Studio 2005と比べて、どのような点が変わったのだろうか。
統合開発環境であるVisual Studioは、その誕生から今年で10年を迎える。その間にはさまざまな変化があったが、常に.NET Frameworkのバージョンと1対1で対応したVisual Studioが用意されてきた。
開発基盤 | 対応製品 |
---|---|
.NET Framework 1.0 | Visual Studio .NET 2002 |
.NET Framework 1.1 | Visual Studio .NET 2003 |
.NET Framework 2.0 | Visual Studio 2005 |
しかし、現行のVisual Studio 2005が2006年2月に提供されて以降、OSはWindows Vistaへ移行し、Officeのバージョンも2007へと移っている。特にWindows Vistaとともに提供されている.NET Framework 3.0基盤の開発環境としては、対応が新規製品では行われずにVisual Studio 2005にアドオンを追加する形で実現されており、開発者からは正式な新しい統合開発環境を切望する声も聞かれていた。
こうした中、さらに次の.NET Framework 3.5も視野に入れた新しい統合開発環境であるVisual Studio 2008(VS 2008)のβ2版がリリースされ、Tech・Ed 2007でもその内容についてさまざまなセッションが開かれている。
VS 2008で特に進化しているのが、WPFに対応したデザイナ機能だ。アニメーションなどを駆使した高度なデザインを要求される場合には、Expression Blendの使用が適切だが、VS 2008だけでもデザイナ機能を使用したXAMLデザインが可能となっている。
「分割ビュー」というデザイン画面とXAMLコードエディタを同時に表示できる機能は、XAMLプログラミングにとって強力な武器となりうる。また、通常のWindowsフォームとの相互連携が図られており、既存のWindowsフォームの一部にWPFテクノロジーを適用することが可能となった。これにより、WPFの恩恵を既存のWindowsフォームアプリケーションに取り込みやすくなっている。
Windowsフォームアプリケーションについて言えば、Webアプリケーションのサービスを共通で使えるようになったのも進化のポイントだ。例えば、ASP.NETでWebアプリケーションを作成する際によく用いられる、Form認証などの認証機能や、ユーザーの設定を保存しておくプロファイリング機能をWindowsフォームから利用できるようになった。WebアプリケーションとWindowsフォームアプリケーションの間で、共通のユーザーデータを相互に利用できるようになり、システム構築の幅が広がる。
ADO.NETの機能も強化された。Microsoft Synchronization Services for ADO.NETにより、SQL Server 2005 Express Editionよりも軽いデータベースエンジンのSQL Server Compact Edtion 3.5に対応し、データをローカルにキャッシュできるようになった。これにより、SQL Serverと切り離されたオフライン状態でもアプリケーションを実行できるようになる。
VS 2008では、2007 Office Systemをベースとしたアプリケーション開発にも対応している。リボンUIは当然ながら、Excel、Wordのドキュメントアプリケーション、Outlook、InfoPathのフォームアプリケーションなどを開発できる。もちろんOffice 2003にも対応する。さらに、従来Officeアプリケーションの配布には苦労が多かったが、VS 2008からClickOnceでの配置に対応し、セキュリティを考慮した簡易なアプリケーション配置を計画できる。
Webアプリケーションでは、ASP.NET AJAXに対応し、コアライブラリであるASP.NET AJAX ExtentionsやASP.NET AJAX Control Toolkitと統合されている。これにより、VSのプロジェクトテンプレートやインテリセンスといった機能をAJAX対応ASP.NETアプリケーション開発に利用でき、AJAXによるユーザーインタフェースの改善と開発効率の向上を両立できるようになる。
Webアプリケーションの開発シーンにおいても、VS 2008に追加された機能が開発効率のアップを約束する。WPFアプリケーションでも説明した分割ビュー機能によって、デザイン画面とHTMLタグ画面を同時に表示できるようになった。また、CSSデザイン機能としてExpression Webと同じエンジンがVS 2008に搭載された。マスターページがネストできるようになったのも注目点だ。
.NET Framework 3.5の目玉機能であるLINQ(言語統合クエリ)にも対応する。LINQシンタックスでコーディングする場合にも、きちんとインテリセンスが働き、LINQの利点であるコンパイル時の型指定をきっちりサポートする。
VS 2008は、LINQに代表される.NET Framework 3.5に対応した統合開発環境だが、.NET Framework 3.0や2.0をターゲットとしたアプリケーション開発にも完全に対応している。それが、マルチターゲット対応という機能だ。プロジェクト作成時にドロップダウンリストからターゲットとなる.NET Frameworkのバージョンを指定することで、コンパイラや、インテリセンス、ツールボックス、アセンブリ参照などの機能が、ターゲットのバージョンに合わせて機能するというものだ。なお、VS 2008もVS 2005に対する下位互換性があるが、VS 2005で作成したソリューションやプロジェクトをVS 2008で読み込む際には、アップグレードウィザードが必要となる。とはいっても、単にマルチターゲットとして.NET Framework 2.0を指定するだけのようだ。
冒頭でも書いたように、すでにVisual Studio 2008のβ2版がリリースされている。現行で.NET Framework 3.0ネイティブな開発環境がないことを考えれば、すぐにでも試してみたくなる。ASP.NET AJAXなどの新しいテクノロジーにもいち早く触れてほしい。
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