「OS事業を辞めるのか」に対する明確な答え――ターボリナックス

「大手ベンダーのソリューションではコストの“半減”などかなわない」――ターボリナックスは自社製品のロードマップを明らかにし、大手ベンダーに勝てるソリューションを組み上げつつある。

» 2007年08月29日 15時23分 公開
[西尾泰三,ITmedia]

 「CEOなどが“コスト削減”と語るとき、望んでいるのは20%削減といった程度のものではなく、“半減”。しかし大手ベンダーのソリューションを使うと、それは無理」――ターボリナックスの代表取締役社長である矢野広一氏は、8月29日に同社が報道関係者向けに開催した発表会でこのように述べた。

「ターボリナックスはOS事業から撤退するのか、という声があるようだが、それはない」と矢野氏

 この発表会で示されたのは、「Turbolinux OS」のプロダクトロードマップおよびサポートポリシーの発表、そして、シンクライアントシステム「wizpy Style Secure Solution」の2つ。

 「ターボリナックスはOS事業から撤退するのか、という声があるようだが、それはないということをはっきりさせておきたい」と矢野氏。wizpyのような製品を提供したことで、軸足をそちらに移すのではないか、売り上げはどうなのかといった市場の不安をこのように述べてぬぐい去った。

 同社の事業戦略は、Linuxをコアコンピタンスとしつつ、ミドルウェア層、さらにその先にあるサービスへと事業を拡大していくことにある。すでにミドルウェア層の部分については、ゼンド・ジャパン、レーザーファイブを子会社し、サービスの部分もwizpyを足がかりとして進めている。これまではwizpyが立ち上げたばかりであったこと、さらにコンシューマー用途で語られることが多かっただけに、上述したような不安が出てきたと言えるが、ここにきてようやく本来の事業とのシナジーが見えてきた。

 はっきりしているのは、ソリューションスタックの基盤には、「Turbolinux OS」が変わらず存在しているということ。その基盤がしっかりしていることを示すためのロードマップ説明となる。

 直近のプロダクトロードマップとしては、Turbolinux 10 Serverに次ぐサーバOSの最新版「Turbolinux 11 Server(仮称)」を2007年第4四半期(11月末の予定)、Turbolinux FUJIに次ぐデスクトップOSの最新版「Turbolinux 12 Desktop(仮称)」を2008年第2四半期にリリースする。加えて、これまでどちらかといえば「完成したらリリース」というアドホックなリリースタイミングとなっていたが、今回、サーバ/デスクトップOSともに24カ月サイクルでメジャーバージョンアップを行うことが明言された。そして、そのサイクルの間にサービスパックをリリースすることでリリース間隔を補完する予定となる。なお、サービスパック以外でもドライバのアップデートなどをリリースする。

 さらに、その前提となる基本ポリシーとして、Turbolinux 12 Desktopのリリース以降、LinuxカーネルおよびGCCやX環境など、システムのコアとなる部分は全製品同一にするという。全製品というのは、バージョンナンバーで区切られ、例えば、Turbolinux 12 DesktopとTurbolinux 12 Serverのシステムコアが同一になるということだ。その上で、デフォルトの設定など各種チューニングを製品ごとに行うのだという。

 そして製品のメンテンナンス、つまりサポート期間については、サーバOSが販売開始より5年間もしくは次期バージョン発売から3年間のどちらか長い方、デスクトップOSが販売開始より3年間もしくは次期バージョン発売から1年間のどちらか長い方となり、その後は有償で5年(デスクトップOSは4年)の延長オプションが用意される。

 この発表にともない、既存製品の「Turbolinux 10 Server」「Turbolinux FUJI」については1年間無償保証期間を延長、それぞれ2010年10月29日、2009年11月24日までとなった。

Turbolinux 11 Serverはコストパフォーマンスに優れる?

 まもなく登場予定のTurbolinux 11 Server(仮称)は、コードネーム「Musasabi」として開発されていたものでLinuxカーネル2.6.22-0.4を搭載する。特に注目されるのは、ZendのPHP関連製品群が何からの形で付帯するであろうこと。さらに、負荷分散を実現する製品も同梱予定であるという。現状、Turbolinux Cluster LoadBalancerという製品が存在しているが、これも同梱され、かつ、パッケージの価格はTurbolinux 10 Serverとさほど変わらなければコストパフォーマンスは高くなる。

 また、ほかの商用Linuxディストリビューションでよく見られるCPUソケットごとに価格が異なるということがないのも同社の特徴だ。同社はCPUソケットの制限を設けていない。なお、説明資料には基本機能として、最大32コアを使用可能とある。

 そのほか、インストール可能かどうかの可否を購入前に簡単に診断できるサービスの提供も予定しているという。

コンシューマー用途から一皮むけたwizpy

 サーバとクライアントを連動させたソリューションが今後ますます需要が増えていくと考えている同社。コンシューマー向けの報道が先行していたwizpyについては、シンクライアントシステムとしてのソリューション「wizpy Style Secure Solution」を皮切りに本格的なエンタープライズ用途での利用を提案していく。

各クライアントPCは、wizpy Secure Server Powered by 2Xが動作するサーバに接続することで各種アプリケーションが利用できる。さりげなくLinuxとWindowsの連携が図られているのが興味深い。なお、このプレゼンテーション自体も同ソリューションを用いて行われた

 wizpy Style Secure Solutionは、同日にパートナー契約の締結が発表された2Xアルファ・ソリューションズが提供するシンクライアントソフトウェア「2Xソフトウェア」(名称はwizpy Secure Server Powered by 2X)と、ターボリナックスの「wizpy Style TC703」とを連携させたシンクライアントソリューション。

 wizpy Style TC703は、USBメモリデバイスで、ローカルPCに接続することでそのPCをシンクライアント端末に変えるもの。無論、ローカルPCにOSがインストールされている必要はないし、そもそもHDDすら必要としない。そのスペックもCPUがIntel Celeron 700MHz相当以上と低スペックのPCで十分なので、リユースPCなどの活用も図れる。

 2Xソフトウェアが動作するアプリケーションサーバ側の動作環境としては、ターミナルサービスが有効になっているWindows Server 2000/2003もしくはAdvancced Server(Windows 2000 Server利用時はアプリケーションモード)。50ユーザー程度までであれば、メモリ4Gバイト程度を搭載したサーバであれば十分であるという。

 システムの基本構成として、wizpy Secure Server Powered by 2Xを1ライセンスとwizpy Style TC703を10ライセンス、それに年間アップグレードサービスを加えたものが46万1650円と、ほかのシンクライアントソリューションと比べても相当に安価で提供されている。このほか、ロードバランサ製品なども用意されている。

 すでに同ソリューションを導入した事例として紹介された大洸ホールディングスグループ。個人情報保護法や金融商品取引法などの対策のため、セキュア化の必要性を感じていた同社が選んだwizpy Style Secure Solution。同社の事例で興味深いのは、サーバ側をホスティング業者に預けてしまうことで、シンクライアント化を実現しながら、運用管理コスト、さらには災害対策までも行っている点だ。加えて、USBメモリ型のデバイスは社員が携帯しておけば、(起動デバイスの順序を変更する必要はあるかもしれないが)どのPCからでもいつもと変わらない業務が行えるという意味で、業務効率も損なわない。

 シンクライアントのソリューションは今後も増えていくことが予想されるが、WindowsとOSSを混在させた同社の安価なサーバ/クライアント連動型ソリューションが注目を集めるのかもしれない。

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