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» 2007年09月05日 06時00分 公開

ブログは「メディア」に、ケータイはモバイルの主役にあらず技術と社会の相乗――アメリカのインターネット事情

米国と日本の間には、インターネットの役割に本質的な違いがある。それは、どういった場面でどのように利活用されているかという、質的な側面にある。

[成川泰教(NEC総研),アイティセレクト]

 アップルの携帯電話「iPhone」の発売は、日本でも大層話題になった。発売から2カ月が経過したがいまだにその売れ行きは強く、ご当地米国では新学期商戦の隠れた目玉商品となっている。「隠れた」と書いたのは、ご存知の方も多いと思うが、携帯電話端末としては異例ともいえるこの商品の特殊な流通事情を意識してのことだ。

 iPhoneが秘める潜在性は、単に携帯電話端末というだけではなく、インターネットサービス全体にとって非常に大きなものがある(それについては、また別の機会にまとめてみたい)。

 そこで、その前提として、米国のインターネット動向の近況について概観してみたい。

ブロードバンドがもたらす深化

 複数の統計から見て、米国のインターネット利用者数はほぼ人口の7割を超えたようだ。同じく7割前後といわれる日本との比較で注意しなければならないのは、これが人口に対する割合であり世帯普及率ではないこと、そして大半がPCによるインターネット利用であって携帯電話からの利用はほとんど含まれていないこと――という2点である。

 米国でもケーブルテレビ回線やDSLを利用したブロードバンド接続の比率が、ほぼ半数に近いところまできており、これがネットの利用を質的量的に拡大させ、その世界を深化させることに大きく貢献している。

 一方で、モバイルについては日本とはかなり意味合いが異なり、PCのインターネットを何らかのワイヤレス環境で利用することを意味する概念として用いられている。ノートPCと無線LANの組み合わせによるサービスを筆頭に、「ブラックベリー」に代表されるスマートフォンのサービス、そして日本でおなじみの携帯電話によるネット接続サービスが続く形になっている。携帯電話は米国流モバイルの主役ではないのである。

 いまさらではあるが、このあたりの事情については単に国民性の違いというだけでなく、産業や文化までを含めたインターネットの役割に関する日米間での本質的な違いに深くかかわっているという意味で、重要なところだと考えられる。一言でいうなら「層の厚さ」とでもいえばいいのだろうか。利用人口や利用時間、ページビューといった量的な問題だけでなく、むしろその利活用がどのような領域にどの程度まで浸透しているかという、ある意味での質的な側面で考えるべき問題だろう。それはブログやSNS、あるいは動画サイトといったサービスの動向に端的に表れていると思う。

ソーシャルメディア化するブログ

 米国のブログは、有名無名を問わず個人が自分の名を冠して情報発信を行うものと、それとは別に複数の有名ブロガーによる運営の下で特定ジャンルの専門情報を扱うものに分化してきている。ブログサイトは多くの一般読者から強い支持を得ており、世論形成などにも大きな影響力を持つまでになっている。その意味でブログはメディアとしての地位を確立しつつある。

 日本では、前者の意味でのブログについては、利用者の規模や発信される内容についてはともかく、かなり似た状況にあるとは思う。しかし、後者のようなメディアとしてのブログサイトや、それを形成するブロガーの地位の確立には至っていないのが現状である(「月刊アイティセレクト」掲載中の好評連載「新世紀情報社会の春秋 第十九回」より。ウェブ用に再編集した)。

なりかわ・やすのり

1964年和歌山県生まれ。88年NEC入社。経営企画部門を中心にさまざまな業務に従事し、2004年より現職。デバイスからソフトウェア、サービスに至る幅広いIT市場動向の分析を手掛けている。趣味は音楽、インターネット、散歩。


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