日本IBMが実施する70年の歴史で初の試み

日本IBMはSMB市場に向け、70年の歴史の中でははじめての取り組みとなる「シンプルキャンペーン」を開始した。中小企業を相手にしないベンダーという人々の認識は同キャンペーンで覆るのか。

» 2007年09月14日 06時03分 公開
[西尾泰三,ITmedia]

 IDC Japanが7月に発表した国内IT投資動向にかんするリポートでは、2006年から2011年の中堅・中小企業(SMB)市場におけるIT投資の年間平均成長率(CAGR)は3.7%、2011年には4兆3721億円の投資規模に拡大すると予測されている。同期間における大企業のそれが1.1%であることを考えれば、多くのITベンダーにとって次なる主戦場はSMBであることは疑う余地もない。

2006年から2011年にかけての国内企業規模別IT投資(出展:IDC Japan)

 すでに数年前から大手といわれるITベンダーの多くが同市場への注力を表明してきたが、いまだ勝者と呼べるようなベンダーは存在しない。これは、同市場が、あらゆる地域、あらゆる業界に存在するまさに十社十色な状態のため、それらすべてに適合する最適化された製品やソリューションを提案しにくいことに起因する。

日本IBMのSMB市場向けの取り組み「IBM Express Advantage」

 大企業のニーズに応えるのを得意とする日本IBMもまた、SMB市場への注力は数年前に宣言している。同市場に対する日本IBMの取り組みを振り返ってみると、同社は2003年10月、自社のミドルウェア/システム製品/サービスの必要なものを必要な規模で提供する「IBM Express ポートフォリオ」を発表。この4月には「IBM Express Advantage」と改称している。

 IBM Express Advantageの肝となるのは、大きく3点。「IBM Express Advantageオファリング」と呼ばれる自社のミドルウェア/システム製品/サービス(現在103オファリングを用意)だけでなく、多くのパートナーベンダーのアプリケーションも取り込んだ「IBM Built on Express Advantageオファリング」(2007年4月時点で106ソリューションを認定)を武器に、専用のフリーダイヤル(0120-03-9966)を開設し中堅企業の顧客からの質問に対して情報の提供や、担当者の紹介を行う「IBM Express Advantage コンシェルジュ」や、業界動向や各種ソリューション情報を提供する中堅企業向けのポータルサイト「IBM Express Advantage Webサイト」を用意し、顧客との接点を強化している。

名古屋、大阪の2都市に限定したキャンペーンの実施

 そして、9月11日。日本IBMは「シンプルキャンペーン」と銘打ち、名古屋、大阪の2都市に限定した新たな施策を開始した。これは、特定の都市に集中し、マーケティングと連動した集中的なビジネス活動を地元のビジネスパートナーと共同で12月末まで行うもの。米IBMでは実施された例があるが、日本IBMの歴史の中では前例がない。(日本IBMの前身である)日本ワットソン統計会計時代から数えると、70年の歴史の中でははじめての取り組みとなる。

 「同様の取り組みは昨年米IBMが米国の10都市で開催したが、そこでの成果は、売り上げで前年対比2けた増、上述したコンシェルジュへのコール件数も前年対比で50%増」と話すのは、日本IBMゼネラル・ビジネス事業ソリューション事業開発本部長の田代裕樹氏。「当然、今回の取り組みでもそれと同程度の成果をねらう」(田代氏)。

田代裕樹氏 「地域の顧客との接点を多く持ち、そうした顧客のニーズをもっともよく理解しているのは地域密着型のパートナー企業」と田代氏

 マーケティング活動では、地域限定の広告や、特化したWebサイトの開設、コントロールドサーキュレーションによる冊子などの配布といったことだけでなく、製品紹介などのダイレクトメールやビジネスパートナーとの共催イベントを従来の3倍程度に拡大するという。こうしたマーケティングには数億円の投資を行う。

広告イメージ シンプルキャンペーンの広告は期間中、両都市のさまざまな場所で目にすることになる。広告自体もシンプルだ(クリックで全体イメージを表示)

 加えて、ブレードサーバの拡販、セキュリティなどSMB市場で特に注目度が高い分野のソリューションの提案を強化する。情報漏えい防止などのセキュリティ関連や、内部統制といったソリューションはもちろん、堅調に導入が進むとみられる基幹系のビジネスソリューション、さらには、IPテレフォニーや情報共有のような、SMB市場で導入が進みそうなソリューションなどについてもきめ細やかにそろえる。

 田代氏は、「キーとなるのはビジネスパートナー」と話す。同氏は続けて「地域の顧客との接点を多く持ち、そうした顧客のニーズをもっともよく理解しているのは地域密着型のパートナー企業」であるとも。自社の製品のみならず、顧客をよく知るパートナー企業のソリューションも加味し、さらにそこにマーケティングの要素などを加味し、顧客に訴求していく今回の取り組み。まさにシンプルではあるが、分かりやすさと使いやすさを求めるSMB市場の顧客には意外と響くかもしれない。

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