次世代ITマネジメントの3つの鍵マネジャーの教科書

今日のIT組織に求められるもの。それは機動、適応、先制という3つのキーワードに集約される。しかし、IT部門をめぐってわれわれは間違った考えに基づく意見をいつも耳にする。

» 2007年09月26日 04時49分 公開
[Madan-Ramachandran,Open Tech Press]
SourceForge.JP Magazine

 企業の成長と市場力学の変化に即応すること。それはどのIT部門にも求められる共通の課題だ。IT部門は、低コストで柔軟なITシステムを短期間で仕上げるよう、上層の経営陣から絶えず迫られている。

 IT部門のマネジャーにとって、この曲芸技を成し遂げるのは簡単なことではないが、将来起こるであろうどんな事態にも対応できるようなIT部門を作り上げるために押さえておくべきポイントがある。それは機動(agile)、適応(adaptive)、先制(proactive)という3つのキーワードに集約される。

 IT部門をめぐってわれわれは次のような意見をよく耳にする。それらはおうおうにして間違った考えに基づくものなのだが。

“われわれは予備軍にすぎない”――IT組織は、自分たちがさまざまな事業単位の援軍にすぎないと感じている。そのため多くのチームは、オペレーショナルイネーブルメントやプロセスオートメーション、ダウンタイムの最小化といった重要な責務を負っているにもかかわらず、孤立的に活動して協調環境に身を置こうとしない。残念ながら、これは多くの企業が、ITは単なる補助役ではなく、成長戦略の不可欠な要素であるという事実を見失うことを意味する。

“われわれは顧客関係について発言権がない”――伝統的に顧客獲得プロセスは企業の主力製品やサービス領域の能力を紹介することが中心となっている。これまでIT部門がこのプロセスで役割を担うことはめったになかったが、現在の見込み顧客はベンダー企業のITバックボーンを評価し、自分たちの要求に効率よくしかも的確に対応する能力があるか確認するようになりつつある。IT部門は、自社のITインフラストラクチャが、現在および将来の顧客のダイナミックな要求に対応する十分な堅牢性と適応力を持つことを証明できるだけの機動性を備えていなければならない。

“ITガバナンスは部門管理者の仕事だ”――IT組織は企業の各部署の内部で厳密に必要なものだけに権限やアクセス制御を与えるのが普通であるが、これはITが組織の内部ユーザーと外部の驚異(ウイルスやクラッカー)を結びつけるプラットフォームであるという事実を見落としている。従って、ITマネジャーは組織内のセキュリティを可能な限り守るためにITガバナンス全般で重要な役割をどうしても果たす必要がある。

“結局コンプライアンスの問題だ”――IT部門の日々の努力の多くはコンプライアンスを満たし社内のシステム監査に備えることに費やされるが、これはコンプライアンスやさまざまな規範が事業の行く末に直接影響するという事実を覆い隠している。無論、国際的な場で活動を展開する企業はグローバルなコンプライアンス標準を確実に満たさなければならない。そのような状況に置かれたIT組織は内部体制を円滑かつ切れ目なく移行できるだけの適応性を備えている必要がある。

機動的で適応性を備え先制的であること

ITの活動中心を戦略的意図に合わせる――企業はITイニシアチブを単なる支援活動ではなく、企業の成長戦略の不可欠な要素として据える必要である。戦略的なロードマップを明らかにすることによって、IT部門の能力は企業の成長目標にはじめて寄与するようになる。

状況をくまなく調べる――特に競争的な業界では市場の動向に常に目を配り、優位に立てる分野を探し求める必要がある。競合他社やパートナーを監視し、自社の方式よりも優れた機能を提供しているシステムがあれば、傾向を見極めて差異を分析すること。

他と協調して活動する――顧客とベンダーはIT組織の活動に直接(時として間接的に)影響を与える。多くの組織では、ビジネスユーザー、ITマネジャー、およびベンダーが互いの課題を理解して改善点を話し合うために定期的にミーティングを開くことを奨励している。現在および将来のベンダーが目標のIT製品やサービスを競争価格で提供できるように、IT戦略やロードマップを公開して共有する企業も現れている。顧客とIT戦略を共有することで、顧客はITシステムの有効性を正しく理解し評価できるようになる。

テクノロジーの規模を事業の要件に合わせる――企業の成長とともに事業の要件も拡大する。IT組織は、その変化に対応できるだけの機動性を持ち、実装すべきITシステムは当然ながらスケーラビリティと柔軟性を備えたものでなければならない。多くの企業が採用してきたオープンアーキテクチャやオンデマンドのソリューションは、顧客の変化する要求に適応するという点で費用対効果が非常に高いことが実証されている。

当を得た質問をする――ITイニシアチブが組織全体の目標から逸脱せずに正しい方向へ進んでいるか絶えず問いかけること。われわれのITシステムは顧客の要求を満たしているか。顧客は満足しているか。われわれは現在のシステムを絶えず評価し、別のソリューションの可能性を正しく検討しているか。経営陣を含む場でITシステムを定期的に監査することによって、この種の質問に対する的確な答えを得ることができる。

 今日のIT組織に求められるもの。それは顧客の要求や市場力学に即応する機動性であり、組織内部の変化を円滑かつ切れ目なく進める適応性であり、顧客、ベンダー、経営陣と協調する先制性である。さて、あなたのIT部門は次世代のITマネジメントに対応しているだろうか?

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