第1回 ビジネスインテリジェンスは誰のため?ビジネスインテリジェンスの新潮流 〜パフォーマンスマネジメント〜(2/3 ページ)

» 2007年09月27日 07時00分 公開
[米野宏明(マイクロソフト),ITmedia]

現場のためのBIとはどうあるべきか?

 各種調査レポートなどでも明らかなように、現在、BIの利用ニーズはむしろ現場マネジャーや現場担当者層にある。これは当然と言える。市場や顧客ニーズは複雑さを極め、現場はそれを読み解くためのヒントが欲しい。業務システムに使えそうなデータが眠っていることも知ってはいる。しかし、なかなか行動には移れていない。現場では、いろいろな意味で「時間がない」のが理由だ。

 さまざまな業務データを多面的に分析し、行動のための意思決定を行う。これがBI実践の標準的なステップだろう。経営者であろうが現場社員であろうが、この原則は変わらない。ただし、このBI利用に与えられる「時間」が圧倒的に異なる。

 分かりやすくするために、企業内の意思決定者を、「経営者」「部門管理者」「現場担当者」の3種類に分け、それぞれにおける意思決定の目的とスタイル、性質を図のようにまとめてみた。

役割による意思決定の目的とスタイルの違い

 経営者は、組織全体の投資効率に責任を持つ。中長期の経営計画を立て、通年や四半期の単位でレビューし改善する。経営者の意思決定は非常に重大ではあるが、頻度は少なく、意思決定にかけられる時間は長い。

 一方現場の社員は、自分が担当する業務や作業の効率に責任を持つ。顧客やビジネスパートナーと常に接しており、いちいち上司やそのまた上司にお伺いを立てることなく、素早く対応しなければならないことが多い。市場や顧客は待ってくれないのだ。一つ一つの意思決定が即座に企業収益にインパクトを与えることは少ないが、頻度は非常に多く、意思決定にかけられる時間は非常に短い。

 つまり、経営者の意思決定は「質」が重要であるが、現場の社員には意思決定の「スピード」が重要となる。現場の最前線では、とにかくスピーディに判断し、間違っていた場合はまたスピーディに修正するほうが、時間をかけて考え抜いてから行動するよりも断然リスクが小さいのだ。従って、BIツールにもこの現場のスピードに追い付ける「適切」さが求められる。現場にとっては、入手するのに1日かかる100%の品質のアウトプットよりも、10分で分かる80%の品質のアウトプットのほうが、さらには1秒で分かる60%の品質のアウトプットのほうが、より価値が高い。

 そしてもう一つ現場で重視すべき点は、現場の分析は現場の社員本人がしなければならない、ということである。数人しかいない経営者と違って、現場の社員は人数が最も多い。営業と経理では、ともすればまともに会話すら成立しないし、同じ営業でも性格や経験の違いで意思決定は異なる。少数のアナリストが、一人一人異なる視点と経験を持つ社員のニーズを正しく理解し、適切なアウトプットをスピーディに提供するのは、事実上不可能だろう。

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