「手書きが学習の理解を深める」――和歌山市の小学校にて(2/3 ページ)

» 2007年10月10日 18時48分 公開
[柿沼雄一郎,ITmedia]

MSとの共同研究にも利用

 今回のタブレットPCの導入は、一方で、児童の基礎学力向上を図る、マイクロソフトとの共同研究「ICTを活用した学力向上のための研究プロジェクト(和歌山市“W”プロジェクト)」への取り組みでもある。

 マイクロソフトは2006年6月より、独立行政法人メディア教育開発センター(千葉県千葉市)と協力し、教育機関でパソコンを使っての学力向上、校務の効率化、保護者・地域との連携などを実証研究する「NEXTプロジェクト」を進めている。今回和歌山市はこのプロジェクトに賛同、タブレットPCを導入することで子供たちへの情報教育とICTの効果的な活用を目指すWプロジェクトを実施する運びとなった。

 マイクロソフトの大井川和彦氏(執行役 常務 公共インダストリー統括本部長)は、和歌山市の情報教育に対して、教員が授業などで活用できるテンプレートと、小中高等学校の教員を対象としたEラーニングの研修カリキュラム「ICTスキルアップオンライン」をそれぞれ無償で提供すると発表。さらに技術支援やセミナーの開催、研究アドバイザーの派遣なども行っていくという。和歌山市はマイクロソフトからのこうした支援により、教員のICT活用指導力を向上させ、児童の基礎学力向上を図っていくとともに、その成果をNEXTプロジェクトおよび市内52校で共有する。

 「これだけの台数のタブレットPCを教育の現場へ導入するというのは日本初の試みであり、世界のマイクロソフト社内でも例がない」(大井川氏)という。そのため同社では、今年10月にフィンランドで行われる教育関係者向けイベント「School Of The Future World Summit」へ、NEXTプロジェクトを通じてこの事例を紹介する。「これをきっかけに、教育先進市として世界に名の知れるような成果を出していきたい」と大井川氏。

ICTによる児童の基礎学力向上研究と教員の指導力向上への取り組みに対し、相互に協力していくことで調印した覚書を交わす大橋市長(左)と大井川氏(右)

 またマイクロソフトの滝田裕三氏(公共インダストリー統括本部 プログラム&マーケティング部 アカデミック プログラムマネージャー)によると、NEXTプロジェクトを通して教育機関との協力を進めてきたが、今回の和歌山市は公立校で初めて手を結んだ例となるという。

マイクロソフト 公共インダストリー統括本部 プログラム&マーケティング部 アカデミック プログラムマネージャー 滝田裕三氏。OneNoteによる教材をデモンストレーション

 滝田氏は、タブレットPCと同時に導入された「Microsoft Office OneNote 2007」を利用した教材のデモンストレーションを披露した。OneNoteは手書き文字を扱えるほか、音声ファイルを貼っておくことでディクテーションの学習にも対応できる。社会科で利用する白地図などのテンプレートはすでに完備されており、今後は教育現場からのフィードバックをもらうことで、新たなテンプレートの制作にも取り組んでいくことを明らかにした。

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