OracleによるBEAの買収提案でFusionをめぐる疑問が浮上(1/2 ページ)

BEA Systemsに対する買収提案は、OracleのFusion Architecutreの開発状況などをめぐる疑問を呼び起こしている。

» 2007年10月15日 18時37分 公開
[Renee Boucher Ferguson,eWEEK]
eWEEK

 Oracleは10月12日、BEA Systemsを67億ドルで買収するという提案を行ったが、この提案は数々の疑問や憶測を呼んでいる。

 過去2年間で36社の企業を獲得したOracleの収戦略は、同社の収益に貢献し、同社の市場シェアの拡大につながる大きな顧客ベースを持った企業を手に入れることを狙ったものである。金融サービス分野や通信業界で優良顧客を抱えるBEAも、Oracleの戦略にぴったり適合する。

 しかしBEAに対するOracleの申し出は、同社の「Fusion Middleware」戦略(およびアプリケーション戦略)にとって何を意味するのだろうか。Oracleはこの2年間、ミドルウェア戦略を全面に打ち出して自社のスイートの総合性を宣伝してきた。

 また、Oracleの「Fusion Applications」スイートはFusion Middlewareを基盤とする。Fusion Applicationsでは、Oracle E-Business Suiteに、同社が買収した企業(PeopleSoft、JD Edwards、Siebel Systemsなど)の優れた機能が統合されるという。

 BEAの買収後も、Fusion MiddlewareはFusion Applicationsの基盤であり続けるのだろうか。先週の時点では、11月にサンフランシスコで開催される「OpenWorld」カンファレンスにおいてOracleがFusion Applicationsの出荷の大幅な延期を発表するのではないかという憶測が流れていた。同スイートは今のところ、2008年にリリースされる予定とされている。

 IT調査会社、Deal Architectの創業者であるビニー・ミールチャンダニ氏は10月11日付のブログ記事の中で、「OracleはOpenWorldで、Fusion Applicationsが早くても2009年まで延期になることを認めるだろう。同プロジェクトの技術責任者であるジョン・ウーキー氏がその責任を取って詰め腹を切らされるかもしれない」と記している。ウーキー氏ではなく、Fusion Middlewareを担当するトーマス・クリアン氏が責任を取らされるのではないかとの見方もある。Fusion Applicationsに関しては、BEAの買収という要因が絡んできたことで、さらに多くの憶測が飛び交うことになりそうだ。

 Oracleの提案にBEAがどんな反応を示すかという問題もある。以前からOracleの買収ターゲットとみられてきたBEAは、独立企業にとどまりたいという強い意思表示をしてきた。しかし同社の株価が着実に下落し、身売りを求める投資家からの圧力が強まるなど、BEA買収の条件は整ってきた。

 Forrester Researchのアナリスト、レイ・ワング氏は10月12日付のブログ記事で、Oracleは戦いに備える必要があると指摘している。「SAP、IBM、HP(Hewlett-Packard)などのベンダーも、Oracle以上にBEAを欲しがっている。SAPのNetWeaverは非常に強力なエコシステムを築いているが、ミドルウェアプラットフォームとしては非常に貧弱だ」とワング氏は記している。

 ワング氏によると、OracleがBEAの買収を提案したのは、その顧客ベースが欲しいからだという。「BEAは通信業界と金融サービス業界の金持ち企業を顧客として抱えている」と同氏は述べている。

 「IBMは、Oracleがミドルウェア分野を支配することに脅威を感じるだろう。HPは、この機会を市場での影響力の獲得に向けた出発点として利用する可能性がある。OracleがBEAを買収すれば、独立企業としては最後の主要なミドルウェアプラットフォームプロバイダーがなくなり、将来の競合企業には大きなインストールベースもサードパーティープレーヤーも残されていないことになる」(同氏)

 さらにワング氏によると、BEAのアルフレッド・チュアング社長兼CEOが、同社を独立企業として維持することを望んでいるのは間違いないという。

 10月7日にBusiness Objectsの買収を発表したSAPは、従来の方針をほぼ180度転換し、組織的な成長と自社技術の強化を目的とした小規模企業の吸収型買収を目指すという方向を選択した。Oracleに強烈な対抗意識を燃やすSAPにとって、BEAは戦略の再転換のきっかけを与える可能性もある。

 Oracleは、SAPの顧客をOracleの技術で囲い込むことを狙った「SAP包囲戦略」を打ち出した。SAPおよびBEAの顧客企業は今後、Oracleの営業部隊の直接的なターゲットになるとみられる。

 ワング氏によると、BEAの独立を維持するためにSI(システムインテグレーター)各社が連合を結成するという可能性も考えられるという。「BEAは市場の宝なのだ。同社の独立維持を望むSIは多い。顧客がBEAを選ぶのには理由がある。自分たちのニーズ合ったベストな製品だと考えているからだ。これらの顧客の1社がBEAを支援あるいは同社の独立を維持するために、自らBEAの買収に乗り出す可能性もある」と同氏は話す。

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