高専プロコンの「団長」が魅せたアルゴリズムと涙高専プロコンリポート(3/3 ページ)

» 2007年10月31日 06時45分 公開
[湯浅優香,ITmedia]
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準決勝の不安

 準決勝は今大会中で最も、プログラムの出した結果に不安があった試合でした。その不安とは、どう石垣を埋めても、プログラムの出した答えは8個空きができるからでした。今回のプロコンでは、石垣にすべての石が埋まる答えは1日中計算しても出てこなかったため、石垣が多少空いている答えで妥協するということが必然だったとはいえ、少し空きが多いのが気になったのです。

 準決勝では石は順調に落札できたものの、完成した石垣は予想を上回る18個の空きができてしまいました……。ほかのチームの石垣を見るとわたしたちよりは空きが少ないように見えたので、正直勝てないと思いましたが、ギリギリ2個の差で勝ちあがり2位に。2位が続きましたが、あとに残るは1位だけ、そしてそれは決勝戦で実現する――そんな決意で決勝戦へと臨みました。

最終決戦(決勝戦)の地へ

 決勝で使用する石のデータと石をどのように石垣にはめるか、というデータはすでに完成していたものの、枠の中に石の種類を示すアルファベットだけが並ぶ様は視覚的に分かりにくいものだったので、準決勝終了後から決勝までの30分は、石の形状を分かりやすくするためにカラーペンでお絵かきしていました(いや、お絵かきというかわいらしいものではなく、目は血走っていたのですが)。

苦闘の軌跡 出力されたデータを分かりやすくするため石の形に従って区分け

 上の図では分からないかもしれませんが、そんな必死なわたしたちに神様がほほえんでくれたのか、そのデータでは、目標の石が購入できれば1マスを除いて完璧に石垣が埋まるというご神託が下されていました。この時点で、わたしたちの勝利は揺るぎないものと確信していました。

勝利を確信したデータ プログラムが導き出した1マス以外すべて埋まった石垣

 残念ながら目標の石を完璧に落札できなかったとはいえ、おおむね順調に落札していったのですが、最後の最後で「入札回数を間違える」という大ミスを団長自らしてしまいました……。その結果、わたしたちは3位にすら入賞できずに決勝戦の舞台から去るのでした。

決勝戦での茨城高専の石垣。多くの部分がデータ通りだっただけに悔やまれるミス

涙が止まらないエピローグ

 決勝終了後、わたしは指導教員の先生に宿泊施設のホテルに戻ることを告げ、うっすらと目に涙を滲ませながらとぼとぼと会場を後にしました。

 「チームの団長として競技に参加したのに自分がミスをしてしまった。2位になれたはずだったのに、何てことをしてしまったんだわたしは! 役立たずのわたし、足手まといのわたし。今さらみんなに見せる顔がない」という申し訳なさと悔しさと自責の念でいっぱいでした。

 それまで心の底からこみ上げるものを必死に耐えていたのですが、自分の部屋の中に入った瞬間に心からこみ上げてきたものを耐えられず……涙が止めどなく溢れ出し、おえつは部屋中にこだましました。

 しばらくして落ち着いてきたころに、ドアをノックする音が聞こえました。ドアを開けてみると2人の団員の姿が。ドア越しに2人を見た瞬間、わたしは取り戻しつつあった心の平衡感覚がまた破たんし、また泣き始めてしまいました。

 泣き続けるわたしに、団員が部屋のドア越しに「3人で戦ったのだから団長1人のせいじゃない」「この3人でやったからこそ、ここまで来られた」と励ましてくれました。「それ何てアニメ?」みたいな展開ですが、その言葉に本当に心救われたわたしは「べ、別にうれしくなんかないんだからねっ!」と嗚咽まじりで言うのが精いっぱいでした。

 その後、3人で閉会式に向かい、最終的には「特別賞」まで受賞してしまいました。この受賞を持って、わたしは自身の野望であった同好会から部活動への昇格のための必要な書類を学校に提出しました。結果が出るのはもう少し先ですが、今はその知らせを楽しみに待っているところです。


 5年間同じ学校にいると、「井の中の蛙大海を知らず」の状況に陥りやすくなります。しかし、今回のプロコンを通し、他高専の学生と肩を並べて競うことで、少しだけ視野が広がった気がします。未知の領域に飛び込んでいくことの楽しさを教えてくれた今回のプロコン。「高専生の青春」と月並みな書き方でまとめられてしまうのかもしれませんが、そんな言葉では収まらないほどの経験を味わうことができた貴重な2日間でした。来年はどなたが高専生だけに許されたこのすばらしい体験を味わうのでしょうか。

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