同サービスの中核をなすラダリング対話エンジンには、ユーザーの回答の意図を解析する「意図解析」と、対話パターンを基にどのような質問をするかを決める「対話シナリオ」の機能を持つ。
ラダリング対話エンジンが投げかけた質問に対し、転職を考えているユーザーが「休日出勤が多いからです」と入力したとする。意図解析システムでは、これを形態素解析で「休日」「出勤」「が」「多い」「から」「です」といった単語に分け、「休日出勤」が「多い」にかかるとか、「述語」+「から」「です」という文書で構成されているといった判断を行う。
通常の翻訳エンジンなどは、「休日出勤」という単語から転職理由という属性に結び付けるが、意図解析を用いると「休日出勤」がかかる「が多い」という単語レベルの分析を行い、勤務時間という属性を導き出す。「残業が多い」「働く時間が少ない方がいい」といった表現の違う文書も、勤務時間にひも付けることができる。
対話時にどのような質問をするかというシナリオが集められたのが対話シナリオだ。回答があいまいだったり具体的すぎる場合に、質問の幅を自動で広げたり狭めたりする。例えばユーザーが興味のある職種に企画営業と答えた場合、企画営業を紹介するだけでなく、「なぜそう思うのか?」といった質問をすることで、より深いレベルの情報を引き出す。
ユーザーの意図を正確につかむには、回答に対して「職種」や「勤務地」といった属性をより細かく関連付ける必要がある。そのための質問項目や属性は、現在リクルートのキャリアコンサルタントチームと沖電気工業のスタッフで洗い出している状態。同サービスの開発は2007年の9月に始まったばかりで、「精度や質問の項目、属性の数は明確に定まっていない」(村田氏)段階だ。
あたかも人間と人間が対話をしているようなやり取りに近づけることは可能なのか。村田氏は、「おそらく対人間とは違った形になる」とする。その人の考え方や人生観、応答に生じる“間”といったものをコンピュータがすべて理解することは不可能だからだ。
大量のデータでユーザーと対話を進めることは可能だが、心の中に入り込むことはできない。しかし、うまく情報を提示してユーザーの興味を引き出しながら、話を進めることはできる。「3年間のプロジェクトで目指すものは人工知能的なアプローチではなく、人の気持ちを聞き出すテクニックを導入すること」(村田氏)。
キーワード検索やリコメンドは多くの人が勧める代表的な情報しか出してくれない。また、行動履歴を基にした検索はあくまで「過去」から情報を引き出すものである。一方、ラダリング型検索は対話を通じて「未来」の情報を引き出す。本当に欲しい情報をピンポイントで得られる仕組みだ。
「テキストや画像などの検索に終わらず、人間から心理を探り出すというまったく新たな取り組みを、情報大航海プロジェクトで実現したい」(村田氏)
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