予算不足でプロジェクトを頓挫させないための心得マネジャーの教科書(3/4 ページ)

» 2007年11月29日 15時40分 公開
[Wayne-Turk,Open Tech Press]
SourceForge.JP Magazine

 そのほかにも選択肢は各種存在しているが、そうしたものは宝くじを買う程度の成功率しか期待できなかったり倫理的な一線を越えるようなものが多い。現実的なオプションとして推奨できるのは以下のようなものとなるが、これらの大部分は規定の予算枠に収めるための措置であり、予算の超過分を補填するという性質のものではない。

  • 負担に見合うだけの予算追加が行われない限り、新規の要件を増やすスコープクリープを許してはならず、仮に何らかの補償がなされる場合でも、そうした状況の発生は積極的に抑制しなければならない。スコープクリープや仕様の変更は、徐々にではあるがプロジェクトを蝕んでいくことになるからだ。些細な変更を1つ許すとそれはほかの変更を呼び込むことになり、最終的にはプロジェクトが抜き差しならない事態に追い込まれ、完成した製品は当初に予定していたものと非常にかけ離れたものに変質する羽目になってしまう。確かにある程度の柔軟性は必要であり、特にそれは時間とともにカバー範囲が広がる性質のプロジェクト運営に当てはまる話である。ニーズやテクノロジーの変化、関連ベンダーの新旧交代、予算の増減、カスタマ要件の変質、企業体制の再構築などは常に起こり続けるものであって、そうした変化に対応することは不可避だが、プロジェクトで扱う要件の変更は最小限にとどめるるよう努めなくてはならない
  • 何らかの形でアーンドバリューマネジメント(Earned Value Management)の手法を取り入れてコストを追跡し、予算計画との突き合わせをできるようにしておく。アーンドバリューマネジメントとは、プロジェクトの進捗度合いを客観的に計測する方法の1つで、出来高管理システムとも呼ばれている。そして A)現状の達成分をコストに換算した値、B)そこに配分されていた予算、C)実際に消化した予算を比較するのである
  • 今後の運営コストを推定し、変化に応じて見直しをする。そのためには継続的なモニタリングが不可欠である。そうした措置を施し続けない限り、気づかない間にコストは増加していくものであり、プロジェクトをトラブルに陥れることになる
  • 複数のタスクを統合することでコストを削減し、不要な作業にリソースを食われないようにする。削減や統合できるタスクがあれば、そうすることで時間やリソースを切りつめることができるはずである。ただしこのアプローチでは1つの落とし穴に注意しなければならない。それは不可欠な部分まで削ってはいけないということだ。そうした部分での1円の節約はおうおうにして100円の出費となるからである
  • “金メッキ”の施された要件に手を出すなというのは、雇用する人材や購入する器具だけではなく、プロジェクトの“成果物”そのものについても当てはまる警句である。ここで言う金メッキされた要件とは、金メッキの装飾をした浴室の備品のようなものであり、つまり必要な機能は満たすがそれ以上の無駄を伴うという存在を指す。例えばあるプロジェクトで1台のラップトップマシンが必要になったとしよう。その要件は必要時にネットワーク接続をするだけの簡易ラップトップで済むというのに、野外での使用に耐える堅牢性と無線機能および大量のメモリを装備したハイエンドラップトップを購入したとすれば、それは無用な金メッキを施したことになる
  • 意思決定に当たっては費用便益分析を参考にする。またその際の意思決定は慎重に進めて、想定外の現象やコストが生じていないかを見逃さないようにしなければならない。感情に流されて判断を誤るのは禁物である
  • まずに状況を正しい方向に整理しておかないと、動き出した後での変更は予算的にも時間的にも無駄を生じさせることになる。この件に関しては、これ以上の説明は不要だろう
  • 契約業者や外部ベンダーから提出された予算関係の書類は、間違いがないか必ず精査をする。意図的な不正を働こうとする者は少ないにしても、人間はミスをするものであるから、それがプロジェクトで賄えきれないほどのコスト増を招くかもしれない

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