グリーンIT時代のCEOは「Chief Enviroment Officer」――ONStorミラー氏

「Chief Executive Officerではない新たなCEOがこれからのグリーンIT時代に不可欠」と話すのは、真にオープンで低消費電力なネットワークストレージを提供するONStorのCEO、ボブ・ミラー氏だ。

» 2007年12月10日 04時44分 公開
[西尾泰三,ITmedia]

 「オープンストレージ市場の勝ち馬はわれわれとEMCだけ」――2007年2月、米Network Applianceのダン・ウォーメンホーヴェンCEOはこのように話し、今後も2強時代が続くであろうと予測した。

 しかし、その一方で、両社が提供していないソリューションを引っさげた第3勢力「ONStor」の存在が市場でも知られるようになってきた。日本では、日本SGIと提携し、強力な保守網を整備した上でビジネスを展開する同社。特にグローバルで関心が高まってきたグリーンITにおいてシンプルだが高い効果を発揮する同社のソリューションについて、来日していた米ONStorのCEO、ボブ・ミラー氏に聞いた。

ボブ・ミラー氏 「これからの時代、CEOといえば“Chief Enviroment Officer”」と笑うミラー氏。新CEOの設置はともかく、グリーンITは企業にとって無視できない問題となりつつある

ITmedia ここ1年ほど、ネットワークストレージ市場でEMCやNetwork Appliance(NetApp)ではなく、ONStorの名前を聞く機会が増えました。

ミラー 従来のNAS技術の制約を解消したONStorのソリューションが支持されているということでしょう。米国でも、ショッピング検索サイト「Shopzilla」をはじめ、多くの企業がONStor製品を採用したストレージシステムを構築しているほか、既存のストレージ専業ベンダーからの移行案件も多く存在します。

 EMCやNetAppとONStorで何が違うのか。そのお答えとしては、幾つか挙げられますが、共通するのは従来のNAS技術の制約を解消しているという点です。第1に、EMCやNetAppのシステムで用いられるストレージのほとんどは、彼らが自社で扱っているストレージであるのに対し、ONStorは、NASゲートウェイ(NASヘッド)製品を扱うため、多くのストレージを信頼性を確保した上で接続できる点です。用途やIT投資などを考慮した上でベンダーを選びたいのが顧客の本音なのに、シングルベンダーの選択肢しか提示されなければ、顧客は満足などできないでしょう。

 第2に、拡張性です。ファイルサーバとディスクコントローラが独立しているNASヘッド製品は、パフォーマンスとストレージ容量というそれぞれ異なる拡張のニーズに個別に答えることができます。顧客は「スタートはシングルノードで、必要に応じてヘッドの追加やストレージの追加など、自由な構成を大きくしていく」という真にオープンなアプローチが取れるようになるのです。

 そして重要な点として、グリーンITにかんする世界的な動向です。米国でも、電力全体の8%をIT業界で使用しているといわれていますが、このまま電力の消費量を右肩上がりで伸ばしていくわけにはいかない時代となり、企業は自らの経営戦略の中でこの問題に対して戦略を立てる必要に迫られています。顧客はグリーンITを意識したベンダーの選択を、各ベンダーは社会的責任としてこの問題を考える必要があるのです。米国では、すでにRFPの段階で消費電力のレベルについて言及する動きとなっています。日本でも今後、エネルギー問題、スペースの確保、環境汚染に対する課題にこれまで以上に目を向ける必要に迫られるでしょう。

 ONStorでは、Chief Executive Officerではない新たなCEO、つまり、Chief Enviroment Officerという役職を設け、他社の規範となるようこの問題に向けて率先して取り組んでいます。

ITmedia 具体的にはどういった取り組みなのですか。

ミラー 直接的なお話をすれば、NASヘッド1台当たり160ワットという低消費電力と、NASヘッドのソリューションが重要なポイントになります。

 実際の事例からお話ししましょう。ある顧客は、24台の物理Windowsサーバそれぞれがストレージを持つという非効率なファイルサーバを持っていました。総ストレージ容量は20Tバイトでしたが、実際に使われているのは6Tバイト程度という状況でしたが、これをONStorの製品で、4ヘッド10Tバイトというシステムを構築しました。

 特筆すべきは、ラックスペースがそれまでの48Uから8Uと大幅に削減されたこと。そしてもう1つ、消費電力です。先の事例では、2万5600ワットもの消費電力だったものが、1680ワットに、つまり93%も消費電力を削減できました。一般に、システム1ワットあたり、空調設備などは2ワット必要になると言われていますので、全体としてはさらに大きな電力の削減ができていることがお分かりになるかと思います。

 すでにEMCやNetAppの製品を用い、クラスタ環境で構築されたNASがあるとしましょう。この状態からパフォーマンスを向上させる必要が出てきた際、2台目のクラスタ装置を追加する必要があります。ハードウェアのコスト、さらにその消費電力やスペースなどを考えても、これは時代にそぐわないものです。

 ONStorであれば、パフォーマンスを向上させたいのなら、NASヘッドを追加するだけでよいのです。

  Windowsファイルサーバ ONStor 削減率
ラックスペース 48U 8U 83%
システム消費電力 2万5600ワット 1680ワット 93%
全体の消費電力 7万6800ワット 5040ワット 93%
1000ユーザーで6Tバイトの実使用量を持つストレージシステムでの事例から特に削減効果が高い部分を表にまとめた。あくまで一例ではあるが、空調など全体の消費電力が大きく削減されることが分かる

ITmedia 仮想サーバを利用した運用管理面の簡略化もトレンドとなっています。NetAppなども仮想サーバを用いたソリューションを提供していますが、ONStorは独自の部分がありますか?

ミラー OSの上で仮想サーバが動作しているような他社のアーキテクチャでは、仮想サーバのフェイルオーバーが困難になるなど、パフォーマンス上、幾つかの問題点があります。ONStorでは仮想サーバをネットワークレイヤーで実装しており、OSに対するインパクトは軽微である点が挙げられます。もちろんNASヘッド間で仮想サーバを移動させるなども容易に行えますし、管理面でも既存の管理ツールなどをそのまま使うこともできます。

 また、NASヘッドの情報は2個の冗長化されたコンパクトフラッシュ(CF)内に書き込まれています。ハードウェア障害時は、筐体を換装し、そのコンパクトフラッシュを差し込むだけで、すぐに障害前の状態に戻せることも、他社では見ない特徴です。

ITmedia 仮想化技術を備えるベンダーは現在、ことごとくM&Aの対象となっています。ONStorも例外でないと思いますが。

ミラー 個人的な見解としてお話ししますが、独立系のままでいたいと考えています。M&Aというのは買収する側が買収される側より優れたことができる場合に意味があると考えます。大手が小規模な企業を買収すると、結果的にそのテクノロジーを台無しにしてしまうケースが多いですしね(笑)。

 今、ONStorは市場で優位なポジションに位置していると思います。400社におよぶ顧客、そしてその半数がデータセンターであるという事実。そして環境問題への対応や、固有の優れた技術を作り上げてきた実績。それらはいずれも他社と比べて優位に働いているのです。

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