拡大を続ける中国のLinuxデスクトップ市場Trend Insight(2/2 ページ)

» 2007年12月14日 10時06分 公開
[Chen Nan Yang,Open Tech Press]
SourceForge.JP Magazine
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市場拡大の裏に潜む暗部

 このように順調に成長を続ける一方で、中国におけるLinuxデスクトップ用ソフトウェア産業は幾つかの問題を抱えている。依然として根絶されない違法コピーソフトもその1つである。LinuxデスクトップOSがいかに低価格であるとはいえ、海賊版Windowsの方が安易かつ安価に入手できてしまうからだ。Red Flagの副社長を務めるZhen Zhongyuan氏が、海賊ソフトが1%減少するごとに中国のLinuxデスクトップ市場は“等比級数”的に増加していくはずだとしているのも、この事実の裏返しだといえる。

 またLinuxデスクトップOSについては、そのアンインストール率が高いため、実質的な成長はそれほど大きくないという見方もできるのだ。例えば31.9%の中国人ユーザーは、LinuxデスクトップOS搭載コンピュータの購入後にLinuxをアンインストールして使っているというCCW Researchの調査結果が出されている。また一部のコンピュータ小売業者に至っては、購入者からの要望に応じる形で、こうしたアンインストール後に海賊版Windowsをインストールして販売するというスタイルを取っているようだ。こうしたアンインストールは小売業者や個人ユーザーが多く行う傾向にあり、産業ユーザーの場合は必要な業務ソフトウェアが動作すればいいため、アンインストールに手を出す頻度は少ないのである。

 そして現在では、低コストというLinuxデスクトップ用ソフトウェアのアドバンテージも薄れつつある。Microsoftは中国市場における価格設定の柔軟化を図っており、中国のコンピュータメーカ向けのディスカウントを提示し始めているからだ。ある中国メーカの役員が匿名を条件に語ったところでは、本年初頭にはLinuxデスクトップOSの搭載を検討していたが、MicrosoftがLinux企業よりも安価なサービスフィーを打ち出してきたため、最終的にWindowsを使うよう改めたことがあったそうである。最も同氏はこの件について、Microsoftに価格引き下げを余儀なくさせた点においてLinuxの勝利とも見なせるだろうとしていた。

 このように障害の存在が皆無ではないものの、中国におけるLinuxデスクトップ産業の展望は明るいと見ていいだろう。政府レベルでの問題解決が前提とはなるが、Linuxデスクトップ産業は今後も中国市場で急速な成長を続けるものと予想できる。

Chen Nan Yangは中国で活動するフリージャーナリストで、以前に中国政府のIT責任者を務めた経験を有す。


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