目標とのギャップを測定する――成熟度モデル今日から学ぶCOBIT(2/3 ページ)

» 2007年12月20日 08時00分 公開
[谷誠之,ITmedia]

 成熟度モデルでは、レベルに応じて、以下の属性に基づく原則が追加される。

  • 認識および周知
  • ポリシー、標準、および手続
  • ツールと自動化
  • スキルと専門知識
  • 実行責任および説明責任
  • 達成目標の設定および成果測定

 これを具体的に示した「成熟度属性表」が、次の2つの表である。情報量が多いが、重要なポイントなので、すべて引用しておく(どちらも、無償で提供されているCOBIT4.0の書籍からの引用となる)。

成熟度属性表 その1

項目 認識および周知 ポリシー、標準、および手続 ツールと自動化
1 プロセスの必要性が認識されつつある。問題について散発的な周知が行われている。 プロセスと実践基準は場当たり的である。プロセスおよびポリシーが定義されていない。 いくつかのツールが存在するものの、標準のデスクトップツールに準ずる形で使用されている。ツールの使用については特に定められていない。
2 対応の必要性が意識されている。経営層は、全体的な課題について周知している。 類似した共通のプロセスが採用され始めているが、個人の専門知識に依存しており、大部分において直感的である。個人の専門知識により、プロセスのいくつかの局面は再現可能である。ポリシーと手続の一部が文書化されているか、非公式ではあるが認識されている場合がある。 ツールの使用に関する共通のアプローチは存在するが、主担当者が作成した対応策を基にしている。ベンダーツールが入手されていたとしても、主担当者が作成した対応策を基に使用されている。ベンダーツールが入手されていたとしても、正しく適用されていない場合や、使用されていない場合がある。
3 対応の必要性が理解されている。マネジメント層は、より正式化および構造化された方法で周知を行っている。 優れた実践基準が使用され始めている。鍵となるすべてのアクティビティについて、プロセス、ポリシー、および手続が定義され、文書化されている。 プロセスを自動化するため、ツールの使用方法と標準化に関する計画が定義されている。ツールはその基本目的に合わせて使用されているが、合意済みの計画に完全には従っていない場合や、他のツールと統合されていないことがある。
4 要件全体が理解されている。成熟した周知技法が適用され、標準的な周知ツールが使用されている。 プロセスが完全な形で確立されている。内部のベストプラクティスが適用されている。プロセスの全側面が文書化されており、再現性がある。ポリシーがマネジメント層によって承認され、受け入れられている。プロセスと手続の作成と管理が標準化され、順守されている。 ツールは、標準化された計画に従って導入されており、一部のツールは関連する他のツールと統合されている。プロセスの管理を自動化し、重要なアクティビティとコントロールをモニタリングするため、ツールが主要な領域で使用されている。
5 要件が先進的かつ先見的に認識されている。動向を踏まえ、先を見越した周知が行われ、成熟した周知技法が適用されて、統合された周知ツールが使用されている。 外部のベストプラクティスと標準が適用されている。文書化されたプロセスを基に、ワークフローが自動化されている。プロセス、ポリシー、手続が標準化および統合されており、全体的な管理および改善が可能になっている。 標準化されたツールセットが企業全体で使用されている。プロセスを完全にサポートできるように、ツールは、関連する他のツールと完全に統合されている。ツールを使用して、プロセスの改善とコントロール例外の自動検知がサポートされている。

成熟度属性表 その2

項目 スキルと専門知識 実行責任および説明責任 達成目標の設定および成果測定
1 プロセスに必要なスキルが特定されていない。研修計画が存在せず、正式な研修は行われていない。 実行責任と説明責任について定義されていない。問題が発生した場合は、要員がそれぞれのイニシアチブに基づいて事後的に対応している。 達成目標が明確でなく、成果測定は行われていない。
2 重要な領域に関するスキルの最小要件が特定されている。研修は、合意済みの計画に沿った形ではなく、必要に応じて行われており、実地で非公式な研修が行われている。 責任に関する公式な合意は得られておらず、個人が各自の実行責任を想定し、説明責任も負っているものと認識されている。問題発生時には実行責任に関する混乱が生じ、責任転嫁が発生しがちである。 達成目標の設定が多少行われており、いくつかの財務対策が作成されているが、経営幹部にのみ周知されている。特定の領域のみにおいて、一貫性のないモニタリングが行われている。
3 すべての領域についてスキル要件が定義され、文書化されている。正式な研修計画が作成されているが、正式な研修は依然として個人的なイニシアチブに基づいて行われている。 プロセスの実行責任と説明責任が定義されており、プロセスオーナが特定されている。実行責任を果たすために必要な全権限を、プロセスオーナが保有していない可能性が高い。 有効性の達成目標および測定指標がいくつか設定されているが、周知されていない。ビジネス達成目標との明確な関連付けは存在する。成果測定プロセスが作成され始めているが、一貫して適用されていない。ITバランススコアの手法が採用されており、根本原因の分析が時折、直感的に適用されている。
4 すべての領域についてスキル要件が定期的に更新されている。すべての重要領域についてスキル向上が保証され、資格取得が奨励されている。研修計画に従って成熟した研修技術が適用され、知識の共有が奨励されている。社内の各領域の専門家が研修に関与しており、研修計画の有効性が評価されている。 プロセスの実行責任と説明責任が定着して、広く理解されており、プロセスオーナが各自の責任を完全に果たせるようになっている。成果に報いる報酬の文化が定着しており、積極的な対応が意欲的に取り組まれている。 効率性と有効性が測定および周知され、ビジネス達成目標およびIT戦略計画と関連付けられている。IT バランススコアカードが一部の領域に導入されており、例外があればマネジメント層により発見される。また、根本原因の分析が標準化されている。継続的な改善が行われ始めている。
5 組織は、明確に定義された個人および組織の達成目標を基に、スキルの継続的な向上を正式に推奨している。研修と教育は、外部のベストプラクティスと、最先端のコンセプトと技術の使用に対応している。知識の共有は企業文化となっており、ナレッジベースシステムが提供されている。外部の専門家や業界リーダーの指導を受けている。 プロセスオーナは、決定および対処に必要な権限を与えられている。実行責任の理解は、組織全体に一貫して浸透している。 ITバランススコアカードを全領域において適用することにより、IT 成果をビジネス達成目標に関連付けた、統合された成果測定システムが存在する。例外があれば、いずれの領域であってもマネジメント層により一貫して発見される。また、根本原因の分析が適用されている。継続的な改善が日常化されている。

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