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» 2007年12月22日 05時19分 公開

Weekly Access Top10:生物学的な進化は技術的特異点を引き延ばすか?

女性が登場する記事がエンタープライズチャンネルでも多く見られるようになった。ところで性は何のためにあるのだろう? それを考えていくと、今週末もあっという間に過ぎていってしまう。

[西尾泰三,ITmedia]

 今週のWeekly Access Top10は、自称「PCに詳しい人」が巻き起こす珍騒動をつづった記事が1位に輝いた。今回も、女性システム管理者を大いに悩ませたようだ。女性システム管理者記事といい、来週ランクインが予想される「斉藤のり子――エビちゃんOL(自称)の華麗な開発生活」といい、女性が主役の記事がエンタープライズチャンネルでも多く見られるようになったのは、何か変化の兆しなのかもしれない。

 男性と女性――何気なしに書いたこの単語だが、わたしたち人間はこのいずれかの性を持っている。では、この性は何のために存在するのだろうか。この問いにあなたは「子孫を残すため」と即答するかもしれない。しかし、この答えは残念ながら正解とはいえない。子孫を残すという目的に対し、性はあまりにも効率が悪いからだ。

 有性生殖による繁殖では、子孫を残すために2セットの染色体が必要となる。1セットは男性から、もう1セットは女性に由来するものだ。1つの個体を作るのに、2つの個体が必要となるわけで、生物学的に見れば非効率性以外の何ものでもない。

 わたしたちが子孫を残そうとするのは、自らの種を存続させるためである。リチャード・ドーキンスの利己的遺伝子風にいえば、遺伝子が自らのコピーを可能な限り多く作り出そうとするためだ。しかし、そうであるとすれば有性生殖より無性生殖の方がはるかに効率的である。

 3年ほど前に他界してしまった英国の生物学者、ジョン・メイナード=スミスも、この問題について、「性による生殖はコストが掛かり、無性的な生殖に比べて生存に不利」と染色体の減数分裂に掛かるコストを引き合いに、その必要性を疑問視した1人だ。

 この問題はその後の生物学でしばしば論争を巻き起こし、今でもなお議論が続いているが、ある種の合意も見られる部分がある。「性の意義は遺伝子の組み換え」という事実だ。

 ここで、マサチューセッツ州立大学のリン・マーギュリス教授が1967年に発表した論文『有糸分裂する真核細胞の起源』以降、彼女が主張することになる細胞内共生説が興味深く思えてくる。細胞内共生説の詳細は割愛するが、簡単に説明すると、原核細胞から真核細胞への進化は、ダーウィンの進化論で主張されている突然変異ではなく、2つの別個の有機体が細胞内共生した結果の産物であるというものだ。現在、この細胞内共生説はほぼ定説という位置づけとなっている。

 話を戻そう。性の意義は遺伝子の組み換えであるとする話と、細胞内共生説を合わせて考えると、夢は膨らむ。性という一見意味のないようなプロセスのバックグラウンドでは、2つの別個の有機体の遺伝子を組み換えてきたことになる。人類誕生以来、外見に際だった変化が生じているとも思えないが、人間もまた、かつて原核細胞が真核細胞に進化を遂げたような大きな変化を起こす日が来るかもしれない。原核細胞から真核細胞への進化はおよそ10億年かかったと推定されている。一方、性というものが出現して、すでに数十億年が経過している。その意味ではいつ進化が起こってもおかしくはないのだが、生物学的な進化が先か、技術的特異点が来るのが先か。これが記者が生きている間の本質的な興味となりそうだ(おそらくは技術的特異点だろうが)。

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