伝統的に自前主義が好きな日本企業にとっても「SaaSは魅力的な選択肢になる可能性は大きい」と話すは、早稲田大学大学院商学研究科(ビジネススクール)の根来龍之教授だ。SaaSはネット上のソフトウェアを組み合わせること(マッシュアップ)によって、自社の要件にあったシステムを構築できるWeb 2.0的な側面があるからだ。
「日本の企業は自分の会社に合ったシステムを構築することを基本方針にしてきた。標準的なサービスしか利用できないASPのデメリットには致命的な側面があった。SaaSプラットフォーム上に補完アプリケーションをマッシュアップさせて、自社にあったシステムを構築できる。この進展によって、SaaSはさらに魅力を増していくだろう」
SaaSといえば、とかくマルチテナントやメタデータによるカスタマイズといったASPとの差別化ばかりに議論が集中してきたが、マッシュアップを前提としたプラットフォームであることに目を向ける時期に来ている、と根来教授は指摘する。
既にSaaSベンダーは、データベース、インテグレーション、ワークフローによるロジック構築機能を提供するプラットフォームを発表している。Salesforce.comは自らSaaSをもじったPaaS(Platform as a Service)と称して、アプリケーションやカテゴリーにこだわらないプラットフォームベンダーを志向している。
4月の来日記者会見でも「インターネットに接続して、ビジネスを成功に導くプラットフォームを世界に広げていく」と、同社のベニオフCEOは述べている。
KDDIと組んだマイクロソフトが提供するのもSaaSプラットフォームの提供である。
パートナー企業に同社のプラットフォームを採用してもらうことで、ソフトウェアで成功した同社のプラットフォーム戦略をSaaSの世界でも再現したい思惑が潜んでいるという見方もできるかもしれない。
「ソフトウェアビジネスを制するのはいつもプラットフォームである」と、根来教授は言う。企業へのSaaS普及とともに、SaaSプラットフォームの覇権争いが今後激しさを増してくる可能性は高い。
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