モバイルソリューションのリーディング企業が目指す次のステージとは?日本のインターネット企業 変革の旗手たち

iモードで幕が開けた日本のモバイルインターネット。インデックスはモバイルコンテンツ事業を皮切りに、世界市場への進出やメディアミックス事業も展開する。活躍の場を広げ続ける同社が次に目指すステージを、小川善美代表取締役社長に聞いた。

» 2008年01月04日 00時00分 公開
[國谷武史,ITmedia]

 iモード開始によって日本のモバイルインターネットの幕開けとなった1999年。インデックスは同年、モバイルコンテンツ事業に参入し、世界市場への進出、さらにはメディアミックス事業にも進出し、活躍の場を広げてきた。同社が目指す次のステージとはどこなのか? 小川善美代表取締役社長に聞いた。

インデックス小川社長 モバイル市場は、コンシューマーから法人、そして企業とコンシューマーをつなぐ「BtoBtoC」化が進みつつある。このような市場では、コンテンツビジネスと法人ソリューションビジネスの双方のノウハウが求められると小川社長。

ITmedia 日本のモバイルインターネット誕生から10年が経ちますが、現在の業界をどのように見ていますか。

小川 モバイルインターネットが始まった当初は、老若男女を問わず、仕事でもプライベートでも誰もが利用できるサービスだと評されましたが、実際には通信速度が遅い、通信料金が高いなどの理由から、ビジネスマンやモバイルサービスに関心の強い一部のユーザーにしか受け入れられませんでした。10年近くがたち、現在では、ユーザーが必要な情報にアクセスし、アプリケーションやコンテンツをダウンロードして利用するという、本当の意味でのモバイルインターネットが定着しつつあると感じます。その背景には、端末の高機能化や通信速度の高速化、定額制料金の導入など、ユーザーが安心して利用できる環境の広がりがあります。

 モバイルインターネットを誰もが利用するようになったことで、次に企業が自社の顧客に向けたサービスをモバイルで提供する動きが始まりました。わたしたちもこの動きには注目しており、エンターテインメントを中心に、当社がこれまでに培ってきたコンシューマー向けサービスのノウハウを法人市場へ応用できると考えています。

ITmedia 国内の携帯電話市場は、個人加入が頭打ちとなり、法人市場が注目されています。コンシューマー市場と法人市場に違いはあるのでしょうか。

小川 2つの市場に大きな差はないと思います。携帯電話事業者の公式メニューで求められるのは、「課金がしやすい」「安全に利用できる」というもので、このような企業やユーザーのニーズは今後も変わらないでしょう。モバイルコンテンツ業界は、これまで急速な成長を遂げてきました。今後は多少成長ペースが鈍ることがあっても、縮小することはないと思います。この分野は、わたしたちが創業以来の強みとしている分野でもあるので、取り組みが変わることもありません。

 さらに、現在は携帯電話事業者の公式メニューには属さないオープンコンテンツ(例えば勝手サイト)の市場が広がってきました。公式メニューでWebサイトを展開するには、さまざまな決まり事や関係各署との調整など、クリアしなければならないことも数多くあります。オープンコンテンツはこうした制約が少なく、当初は無料サービスでも広告モデルや有料化につなげ、公式メニューに発展させていくという展開もできます。コンテンツ提供者にとっては、挑戦のしやすい市場だと言えますね。

 このようなコンシューマー市場の動きから、法人市場でもモバイルサイトを構築して、さらには電子マネーを利用したオンライン決済やポイントサービスも提供し、顧客の満足度をモバイルで高めていくというニーズが拡大しつつあります。法人市場には、このほかにも基幹業務システムとモバイルシステムを連携させるような分野もあり、これらを含めて、わたしたちは法人のモバイルIT投資効果を最大化するために必要な支援を提供していきたいと考えています。

ITmedia 企業の基幹システムには、システム構築やセキュリティ、ネットワークなどのさまざまなノウハウが求められますが、この分野でどのような強みを発揮できるとお考えですか。

小川 顧客企業はわたしたちの持つモバイル固有のノウハウに期待を寄せていただいていると思います。例えば、昨年4月に始まった東京ドームでのジャイアンツ公式戦に来場すると貯まる新ポイントサービス「G-Po(ジャイアンツ・ポイント・チャレンジ)」や、昨年6月に稼働したJR東日本のSuica・モバイルSuicaとポイントサービスを連動させるシステムなどを手掛けました。携帯電話の情報をさまざまなシステムやデータベースと連携させるには、モバイルにはどのような情報があり、どのような処理をするのかという独特のノウハウが欠かせません。

 わたしたちはモバイルコンテンツ企業ではありますが、ポイントを利用したCRMシステムや基幹業務システムを構築・運用した実績を持っていますので、こうした部分も顧客企業からご評価いただいているのではないかと思います。モバイルのノウハウと、コンシューマーサービスにつながる部分も含めたソリューションをワンストップで提供できるのがわたしたちの強みです。

インデックス小川社長 モバイルビジネスのオープン化で、同分野へ進出する企業を後方支援するビジネスにも注目しているという

ITmedia 海外事業も積極的に展開されていますが、現在の動向はいかがでしょうか。

小川 現在は中国や東南アジア、欧州に注力していますが、特に中国は市場規模の大きさや3Gサービスがこれから始まるため、モバイルコンテンツの利用が広がっていくと期待しています。昨年秋には中国移動(China Mobile)と3G向けのコンテンツ配信事業で提携しました。今夏の北京五輪までに、まず主要都市で3Gサービスが開始される見込みです。海外でも人気となっている日本のコンテンツを中国の3Gユーザーへ提供していきます。

 また、欧州でも本格的に3Gサービスが開始されたことで、動画コンテンツの市場が立ち上がっています。欧州市場も今後の動きが注目されますね。現在の海外事業はコンテンツサービスが中心ですが、インデックスグループの持つモバイルサービスのさまざまなノウハウを結集して、海外の携帯電話事業者やコンテンツプロバイダーに提供していきたいと考えています。

ITmedia 新規分野へ進出していくに当たって、どのような人材戦略をお考えですか。

小川 モバイルコンテンツ事業のみの時代は、コンテンツプランナーやWeb技術者が中心でした。今後は企業のITシステムを理解できる人材も重視しています。例えば基幹システムの開発や構築、運用経験のある技術者、コンサルティングのできる人材が理想です。もちろん、モバイルに関する知識も必要になりますが、知識を十分に持っていなくても当社で育んでいけるでしょう。法人市場で活躍していくためには、企業活動の本質を理解していることが大切です。そして、顧客企業のニーズをくみ、解決方法を提案する企画力や訴求力も重要になります。これらの要件を満たす人材はあまり多くはいませんが、素養があれば、当社で十分に実力をつけていけるものと信じています。

 また、国内のコンテンツサービス部門から海外のグループ企業へ出向している社員もいます。専門職ということではなく、1人の人間として幅広い経験を積んでいただきたいので、海外のモバイルビジネス環境を肌で感じてもらうために、キャリアアップとしての海外赴任もあるでしょう。目線として、グローバルに活躍したいという視点を持っている方は良いですね。

ITmedia 今後のモバイル市場は、ビジネスモデルのオープン化や、モバイルWiMAXに代表される新しいサービスが始まり、大きな変化を迎えようとしていますね。

小川 モバイル業界では、半年前には予想もしなかった変化が起きるなど常に安定している業界ではありません。ですから、変化を楽しんでいけることが大事ですね。一方で、モバイルコンテンツ市場は徐々に成熟化が始まっています。これからは、音楽や書籍業界と同じように質の高いコンテンツが求められ、コンテンツ提供者にはじっくりと腰を据えて、アイディアを形にしていく姿勢がますます重要になるでしょう。とは言え、全体的には変化し続ける業界ですので、やはり変化を楽しめるマインドを持ってほしいですね。



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