chumby――米国生まれの情報端末に家電の未来を見るGadget Hacks(3/3 ページ)

» 2008年02月04日 07時00分 公開
[kinneko,ITmedia]
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実はFlash Lite 3.0を搭載したネット端末

 ここまでであれば、少し珍しいだけのデバイスの1つで終わってしまうところだが、このデバイスの真価はまだ見えていない。内部ではLinuxが動作するこのデバイスの真価は、Flash Lite 3.0を搭載したインタフェースと、ネットワーク経由で機能追加できる点にある。

 chumby.comでデバイス登録を済ませると、ウィジットと呼ばれる無料のFlashアプリケーションがオンラインで入手可能となる。このウィジットをchumbyにダウンロードさせることで、さまざまな機能を追加できるのだ。

 ウィジットはchumby社や多くのユーザーによって、数多く登録されている。例えば、GoogleNewsやslashdotなどの各種ニュースサイトのチェッカー、着信メールの確認、天気予報、占い、flickrに登録された写真、eBayのオークション状況、世界各地のLiveCAMからの映像表示、facebookの情報表示といった具合だ。Flash Lite 3.0では、FLVの再生も行えるため、Youtubeの動画もコマ落ちなく見ることができる。

いろいろなウィジット 数多く登録されているウィジット。

 残念ながら、現時点ではウィジットもメニューも日本語表示には対応していないため、日本でそのまま使うには無理があるが、日本国内のサービスに対応すれば、冒頭で挙げたような毎朝のルーチンワークがこの端末だけでできてしまいそうだ。

自分で作ったウィジットを使ってみる

 Flash Lite 3.0が動作する携帯電話などが周りにすでに存在し、小型デバイスにも目の肥えた日本のユーザーからすると、ここまでの紹介では「chumbyのどこがいいんだ?」と思われてしまいそうだ。しかし、その判断を下すのはもう少しだけ待ってほしい。

 ウィジットがFlashアプリケーションであることはすでに述べた。このウィジットを自分で作成してchumby上で実行させることで自分のためだけにカスタマイズされたchumbyが誕生するのだ。

 本格的なウィジット作成には、Adobe Flexなどが必要だろうが、今回は、オープンソースのコマンドラインActionScript2コンパイラ「MTASC」(Motion-TwinActionScript 2 Compiler)用い、よかひよかときさんの作成されたActionScriptプログラムを参考に、簡単なお絵かきウィジットを作成してみた。画面にタッチして線画を描くことができ、左上に画面を消去するボタンをつけた簡単なものだ。chumby.comのサイトでこのウィジットを登録し、自分のchumbyで表示してみると、きちんと動作することが確認できた。

ウィジットを登録作成したお絵かきウィジット ウィジットは複数をまとめてグループ化(chumbyではチャンネルと呼ぶ)することが可能で、一定時間ごとにチャンネル内の別ウィジットに自動画面遷移させたりできる。ここでは、「itmedia_sample」というチャンネルにお絵かきウィジット1つを登録している(「き」の部分はウィジットのアイコンが入る)。右が今回作成したお絵かきウィジット

 ウィジット作成時のパラメータは、サイズが320x240ピクセル、フレームレートは12程度、サイズは100Kバイト以下というのが推奨設定として挙げられている。今回は、お絵かき時の反応が悪くスムースな線が描けないため、フレームレートは30に設定してみた。

 作成したウィジットの登録には、ウィジット本体のほか、chumbyで表示するために使用するサムネイル画像(80x60ピクセルのJPEGファイル)も必要となる。また、ウィジットに独自の設定が必要な場合は、ブラウザから操作する設定専用のウィジットも登録できる。

 登録したウィジットは公開モードが選択できるようになっており、自作のウィジットを世界中のchumbyユーザーに公開することも可能だ。公開されたウィジットの利用者数は、ブラウザから確認できるほか、ウィジットに対するユーザーの評価はchumbyの画面や、PCブラウザのウィジット管理画面から送信できるようになっており、第三者のフィードバックが得られるようになっている。

ウィジットに対する評価をフィードバックできる機能も

 ウィジットの作成方法や、ファームウエアの変更手順、ハードウェアの設計情報などはWikiフォーラムで多くの情報が公開され、ユーザー間で情報交換がされているので、参考にするとよいだろう。

chumbyはどんな夢を紡ぐのか?

 正直なところ、chumbyのうわさをFOOキャンプ直後に聞いた時点では、わたしはchumbyにまったく興味を持っていなかった。特徴的な外見はともかく、ハードウェアそのものはPDA向けのリファレンスに近いのだから、わざわざ入手して遊ぶほどでもないと考えたのだ。むしろ気になったのは、chumbyがどのようなビジネスモデルで事業を行うのかだった。

 FOOキャンプから1年以上が過ぎ、本格的に製品を世に問おうとしている現在でさえも、chumby社がどのようにして利益を生んでいこうとしているのかは見えてこない。先述の“The birth of Chumby”の中でティム・オライリー氏は、『デバイスの価値は、ハードウェアではなく、ソフトウェアでさえもなく、ネット接続する新作ウィジェットを配信するサービスにある』と書いている。しかし、chumby社は現在、北米でブームになりつつあるデジタルフォトフレーム市場に乗って、広告配信によるビジネスモデルを考えている様子だ。インタラクティブなコンテンツを配信するという唯一の強みを生かしたビジネスモデルがうまく描けていない感があるのが残念なところだ。


 今回、実際にchumbyをさわってみると、ずっと昔、はじめてMacintoshとHyperCardに触ったときのような感触がわずかによみがえるのを感じた。パッケージングへのこだわり、コンパクトな概観、Flash Lite 3.0を使ったインタフェース――これらがかつての記憶を呼び起こしたのかもしれないが、それらを割り引いても、chumbyには何か未完成な魅力がある。その未完成な部分の埋め方によっては、今後の家電の進む方向を指し示すようなデバイスになる可能性を持っているように感じた。

 chumbyは、いい意味で、Geekが作ったGeekのためのデバイスだ。それは、未発掘の金鉱かもしれないし、単なるオープンソースのアダ花かもしれない。そのどちらにもなり得るchumbyだが、コンテンツの消費に慣れた日本でこそchumbyはその可能性を開花させるのではないだろうか。

 chumby日本法人設立の準備も開始されているそうなので、日本語化された製品が気軽に購入できる日も近いかもしれない。手元のchumbyをhackしながら、その日を楽しみに待ちたい。

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