Web2.0で起業を志す者に捧げる9つの心得Magi's View(3/3 ページ)

» 2008年02月04日 07時29分 公開
[Bruce Byfield,Open Tech Press]
SourceForge.JP Magazine
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常に新たなアイデアを考え続ける

 1990年代に流行した仮想Webホスティングと同様、Web2.0も低予算で参入可能なビジネスである。つまり、特別に高度な専門知識や巨大な開発投資を伴わなくてもこの業種への参入はできるのであり、特にFOSSを活用すれば参入時の障壁は一段と低くなる。ただし、スタート時にはプラス要因であった存在が、コミュニティーの関心をつなぎ止めておく段階になるとマイナス要因として作用し出すことも覚悟しておかなくてはならない。

 Web2.0の登場からわずかな年月しか経っていないが、このコミュニティーの住民がいかに移り気な存在であるかは、彼らが常に目新しい流行サイトを気ままに渡り歩くことで実証されている。つまり、立ち上げたサイトが軌道に乗ればそれですべて終わりというのではなく、その後も継続的にユーザーを引きとどめるておける要素を提示し続けられるよう、魅力あるコンテンツとは何かを常に考え続けなくてはならないのだ。

 ここで問題となるのは、サイト立ち上げ当初のコンテンツがシンプルなものであればあるほど、将来的に斬新なコンテンツを生み出しにくくなるという傾向である。del.icio.usのようにサイトの存在そのものに特異な価値がある場合でもない限り、いつかは自分の主催するサイトの運営方針を大幅に変更しなければならない時機が到来するはずだと、今からある程度の覚悟をしておく必要があるだろう。

何が利益を生む源泉であるかを心得ておく

 Web2.0の世界で掲げられている理想論と、事業運営上の収益とのバランスを取るのは、非常にサジ加減が難しい作業である。運営側の行うどのような試みに対しても、たいていはコミュニティーの一部から批判意見が展開されるものだからだ。例えば有料の広告掲載を始めれば、ユーザー側からは広告がジャマだという不満の声が沸き上がってくるだろう。またClassmates.comのようにサイトの正式利用を有料化すれば、利益の源泉であるはずのコミュニティーの拡大を自ら阻害してしまうことになってしまう。

 結局のところ、その正確な姿を誰もが把握しかねているWeb2.0というビジネスモデルにおいて、直接的な金銭収入などは全体の一部でしかないのである。例えばわたしの知っているある企業は、4年間にわたって100万ドルもの資金をビジネスネットワーキングに投入したにもかかわらず、その10分の1の年間収益すら上げることができなかったくらいだ。そして最終的にこの企業はeBayで売りに出されたのだが、入札開始価格はわずか6万ドルに過ぎなかった。

 言うまでもなく最も確実に利益につながる行為は、売却時の企業価値を高められるようコミュニティーを大きく育て上げておくことのはずだが、それでも過去に行った投資に見合うだけの金額を回収できる保証は存在しないのである。また売却時にプラスの利益を上げられたとしても、それは見方を変えれば、あなたの育てたサイトからどのようにして利益を上げるかという難問を、サイトの売却先に押しつけただけにすぎないともいえるのだ。

まとめ

 ここで説明した心得が悲観的な見方で満ちていると受け止められたなら、それは読者諸兄にわたしの真意が伝わったということでもある。ビジネスという観点から見た場合、Web2.0ほど経営者が実態を把握しにくいものはなく、そこでの成功はいずれも短命で終わる可能性を秘めている。過去にWeb2.0ビジネスで巨万の富を得た実例が幾つか存在し、今後もより規模の小さい富を授かる者が何人かは出現してくるであろうが、後1ないし2年も待てばこのブームにも終焉が訪れるはずである。よってWeb2.0で一稼ぎしようと欲するならば、早々に参入を果たし、自分のコミュニティーを可及的速やかに育成してしまうに尽きる。実際、来年の今ごろになれば、Web2.0などは過去の出来事の1つに成り果てている可能性すらあるのだ。その段階になっても幾つかのサイトは活動を続けているだろうが、その大部分は穏当な利益を上げているに過ぎず、また一部のサイトはほかの事業への客寄せ的存在と化しているだろう。そうした点を心得ておき、眼を大きく見開いてトレンドに追随し続ければ、Web2.0のブームが消え去ったときにも大きな失望を抱かなくて済むはずだ。

Bruce Byfieldは、コンピュータジャーナリストとして活躍しており、NewsForge、Linux.com、IT Manager's Journalに定期的に寄稿している。


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