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» 2008年02月05日 00時00分 公開

才能の網羅がつづる出版の未来像日本のインターネット企業 変革の旗手たち【番外編】(2/3 ページ)

[藤村能光,ITmedia]

生活者視点がないWeb運営は負け戦

ITmedia MouRaの運営手法は確立しましたか?

服部 経験則で、こうすれば収益が上がらないということは分かるようになりました。デジタルコンテンツの錬金術を逆説的に述べましたが、やり方は依然として確立されていないということです。状況は常にわれわれの先を行き、考え出した企画や見せ方も状況に追いつかないという感覚です。

image 企画が上がればどのようにクロスメディアとして展開するかをしつこく考えます。コンテンツは「創って半分、伝えて半分」です

 運営手法を改めたという点では、顧客や読者といったユーザーの視点を今まで以上に意識するようになりました。これまでは、編集者が面白いと感じたコンテンツを作り、それが利益につながればいいといった安易な手段を取っていました。仮説に基づいてビジネスを進めるといったことができていませんでした。

 例えば、調理のステップを細かく記述した料理本を出していますが、生活者の可処分所得やリテラシーが高かった時代にはそれが受け入れられました。しかし、今の読者はそんな内容を求めていません。仕事帰りにスーパーで食材を買う人の多くは“料理をすること”より“食べること”を欲しています。雑誌が売れなくなるという状況に直面して、生活者が本当に何を求めているのかを考えなければならないと気づきました。Webでビジネスを営む場合、ユーザーの行動パターンやニーズを考えないことは、負け戦へ挑むことに等しいのです。

ITmedia 出版社がWebでコンテンツを扱う際の強みと弱みはありますか?

服部 出版社の強みはこれまでのノウハウを基に、コンテンツ作りにキャラクターやストーリー、世界観といった要素を追求できることにあります。これらの要素は時代、性別、国境を越えて世界に波及します。海外で日本の小説やマンガが注目を集めていることからも明らかです。出版社はこの強みをないがしろにしてはいけません。

 今の話と通じる部分もありますが、日本は世界に向けて独自のコンテンツを配信できる力があります。例えば健康や美容、食といった分野は世界に誇れる日本独自のものを持っています。雑誌に目を移すと、今女性誌などは新しい企画がなく、読者層も限られ、広告出稿の額も一定の枠を抜け出せていません。そういった状況を見ていると、コンテンツに世界が求める価値を付与していく必要があると強く思います。もちろんMouRaのスタッフにはそれを意識したコンテンツ作りを求めています

 生活者の気持ちをつかむのが上手くないことが弱点です。出版社に勤める人は当然本を読むことが好きです。しかし活字離れや出版不況といった言葉が象徴するように、本は読まれなくなっています。コンテンツの作り手とその受け手である読者の間で、意識のかい離がないようにしなければなりません。

 作家の才能がデジタル部門へ流出することを良しとせず、紙媒体という狭い分野で権益を守ろうとする保守的な人が多いのも問題です。当の作家はWebやケータイに書きたがっている場合が多い。出版社はこれまでの常識からいかに抜け出し、保守的な風潮を打破するかという視点が必要です。

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