力武健次――在野の孔明、問題解決の彼岸にみたプログラムの本質New Generation Chronicle(3/8 ページ)

» 2008年02月06日 04時00分 公開
[西尾泰三,ITmedia]

言語の選択はそれを取り巻くライブラリや環境、人々まで含めて判断すべし

Q21 キーボードなど入力デバイスのこだわりはありますか?

仕事は1990年からANSI配列準拠のキーボードでやっているので、JISキーボード配列はダメです。後、カナは打てません。

Q22 できるだけキーボードで操作を済ませたいタイプですか?

マウスも使うし、マウスでしかできない操作もいっぱい世の中にはあるわけで、それはマウスでやる。でも、文字をタイプしてやった方が効率がいいなら、それを使う。バッチファイルとかシェルスクリプト大好きだから。

 ただねえ、身体性って、そんなに簡単に少数のインタフェースで統一して表現できるものじゃないんだよね。例えば、ダイヤルを回す感覚ですら、マウスやキーボードでは再現できない。ツマミの重さとか、どうやって再現するかといえば、同じものを作るのが一番早い。小飼さんも述べていますが、プログラマーにとって、そういう一味違った入力デバイスを簡単に扱えるような技術が、もっと普及すればいいと思う。

Q25 今一番興味のある言語は何ですか?

言語は、率直にいってなんでもいいと思っています。仕事をするためにプログラミング言語があるのであって、逆ではないと思っていますから。でも、LISPやSchemeはかっこいいよね。FORTHもかっこいい。昔BLISSという型のないBCPLとCの中間のような言語を使ってましたがこれもOSのコーディングにはよかった。だから、あまり型があり過ぎるものとか、単純でないものには興味がありません。

 Perlも最初は複雑な言語だと思っていました。自分の道具として、CPANを受け入れられるようになって使えるようになったけど、結局今の言語って、言語を取り巻くライブラリや環境、人々まで含めて判断しないと、自分がそれにかかわるかどうかは判断できない。だから、あまり手を広げられていないのが実情です。

Q26 今興味がある知識や技術はありますか?

ハードウェアはとても大事。デジタルロジックはもちろんだけど、アナログの技術はデジタルの基盤を支えるものだから、ソフトウェア屋であっても教養として知っておいてほしい

 わたしの趣味の1つに無線があるけど、無線技術、さかのぼれば電磁気学や相対性理論もちゃんと勉強したい。大学でもっときっちりやっておけばよかったと後悔しているのは、複素積分やフーリエ変換、ラプラス変換など、デジタル信号処理技術を支えている数学の基礎。

 セキュリティ対策の仕事をしていて思うのは、組み込み(embedded)の世界は、これから大変なことになるだろうということです。もともとリソースを削って製品にしているわけだから、脆弱性もかなり残っているはず。開発カルチャーも違うし。こういう世界の開発者の人たちとどう対話して、彼らにもインターネットでどう楽しく、危険のないように過ごしてもらうかはとても奥深い課題だと思います。

 後、ナノテクとかバイオとかやってる人たちは、単純に尊敬しますね。未知の世界だから。できるかどうか分からない物質を作ったり、生命を育てたりするのは、出来上がったモノをいじる作業よりずっと難しいから。

Q32 英語の読み書きは簡単?

9歳〜10歳のころ、周囲にあまり日本人のいない環境にいて、かつ米国の普通の学校に通ってました。で、日本に戻ってからも、TTLやCMOS ICのデータシートは、全部英文で読んでいた。だから、簡単とか難しいとかいう次元の問題ではなくて、普通にやっています。日本語は後から学び直した、という感覚がどうしても抜けません。

 もっとも、だからといって英語の方が正確に書けるとは、とてもいえない。冠詞、単数複数、動詞の活用、前置詞といった、いわば子どものころから繰り返して身体にたたき込むべき文法や語法の事項ができているわけではありませんから、よく間違えます。

 最近、日本で発行されている英語の論文雑誌を編集する仕事をしていますが、英語を母語としている著者が少ない雑誌なので、皆さんかなり苦労しています。でも、表現したいこと、そして自分がやったことが存在していれば、後は自分の成果を最大限訴えかける努力をすることで、母語でないこと、あるいは不得意なことはかなりカバーできます。投稿は世界中から寄せられますが、著者の皆さんの努力には頭が下がります。

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