「電波少年」でできなかったことをネットでやる日本のインターネット企業 変革の旗手たち【番外編】(2/3 ページ)

» 2008年02月13日 00時00分 公開
[伏見学,ITmedia]

テレビは広く、ネットは深く

ITmedia 放送コンテンツをネット上でも配信するサービスについて、総務省や経団連が法改正などをめぐり議論していますが、土屋さんの考えはそれとは異なっていますね

土屋 そういう問題は、ビジネスをやっている人たちとか、著作権をやっている人たちが解決すればいいことであって(笑)。もちろん、見逃した番組がネットで観られたら便利だと思うし、それが今ネットで違法に流出している状態だから、きちんと権利者に対して利益が配分されることが好ましいと思います。ただ僕は、ネットが登場したことで新たにできる楽しみ方、エンタテイメントのあり方を考えていきたいです。昨年放送したドラマ「バンビ〜ノ!」のスピンオフ(派生番組)をネットで配信したり、今年になって深夜ドラマを放送直後からネットでそのまま配信するようになったりなど、徐々に取り組みは始まっています。

ITmedia テレビと比べてネットの番組を作る際、企画の立て方などで変わった部分はありますか?

土屋 テレビでできることをネットでやっても仕方ないです。僕がやらなくてはいけないことは、テレビではできないことがスタート地点でした。6秒CMにしても、テレビでは発見されなかったクリエイティビティをネット上だから発見できたわけです。

 そもそも、テレビでできることをネットでやるのなら、そのままテレビでやっていますよね。会社の中でわざわざネット事業をやりたいなんて言わないですよ。テレビの視聴者は、視聴率1%で60万人、5%で300万人に相当します。300万人が同時にアクセスするネットコンテンツなんてないです。だから、たくさんの人に観てもらうにはテレビをやっている方が作り手としてはいいわけですよね。ネットの良いところは、深いところまでリーチできる点だと思います。もっと深いところまでリーチできるコンテンツ作りができると信じているから、ネットでものを作っているのです。

 トヨタやNECが評価してスポンサードしてくれるというのは、ただたくさんの人が観るからではなく、その人の深いところにまでリーチができるという点を評価してもらったからだと思います。

土屋敏男氏

ITmedia いまやテレビ局がネット放送を行うのは当たり前になりました。その中で御社の強みは?

土屋 圧倒的にいろいろな経験値が高いと思っています。それと、ものの作り手がやっているということなのかなぁ……。第2日本テレビは、いろいろなセクションの出身者が集まって番組を作っています。ビジネスだけを先行せず、あくまでも表現にこだわっていることが強みと言えるかもしれません。

ITmedia NGNや高速光回線などインフラ整備が進んでいますが、作り手側からご意見はありますか?

土屋 自分のPCで動画がスムーズに観られない時に、どこに問題があるのか分からないことがありますよね。PCスペックの問題なのか、通信回線なのか、配信元なのか、どこがボトルネックになっているか分からない。逆にテレビは分かりやすいです。配信元に問題があれば「ただいま(放送事故など)」と表示されるし、映りが悪ければたたくと直ったりした。100%安全ではないものはテレビでは流せません。例えばネットでは、混んでいるところに行くと「落ちる」とか。テレビの技術からいうとありえないですよね。

 現在、「デジタルの根性」という深夜番組をセカンドライフ上でもやっています。僕もアバターで千原ジュニアや馬場典子と出ていますが、セカンドライフもPC自体のスペックが高くないとできない。通信回線も当然速くなくてはならないし、そこに100人集まってしまうと「落ちる」みたいな状況になってしまいます。ただ、ネットでは「こういうこともある」という風に皆考えるので、テレビとはユーザー側のリテラシーがまったく違います。

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