ビジネスアプリとコミュニケーション――1台2役のスマートフォン日本企業のためのスマートフォン導入術(1/2 ページ)

海外を中心に企業での活用が進むスマートフォン。日本でも導入を志向する企業が増えつつある。日本の業務環境に適したスマートフォンの利用法を探ってみたい。

» 2008年02月26日 12時51分 公開
[國谷武史,ITmedia]

 スマートフォンは、携帯電話機として通話ができるだけでなく、電子メールやフルブラウザなどのアプリケーションをPCに近い環境で利用できる高機能の携帯情報端末だ。国内では2005年に発売されたウィルコムの「W-ZERO3」をきっかけに、近年は端末の種類が増えつつある。当初はコンシューマユーザーが普及を牽引したが、現在では企業の関心も高まってきた。

 すでに、海外ではスマートフォンを利用して電子メールやグループウェア共有といったコミュニケーションの効率化を図るケースが珍しくなくなりつつある。それでは、日本企業がこのデバイスをどのように活用すれば海外の企業のように業務を効率化できるのだろうか。今回は、Windows Mobile OSを展開するマイクロソフトに国内外での企業利用の傾向や製品展開について聞いた。

日本と欧米で異なる使い方

 「導入企業ではスマートフォンを情報システムの一部として戦略的に運用している」――モバイル&エンベデッドデバイス本部で法人向けプロモーションを担当する岡田陽一郎シニアマネジャーは、スマートフォン導入企業の意識について、目的と効果を厳密に踏まえて運用をしていると説明する。

岡田シニアマネジャー

 欧米での利用形態で圧倒的に多いのが、電子メールやグループウェアを利用するリアルタイム性の高いコミュニケーション。海外企業ではExchangeやNotes/Dominoといったコラボレーションツールの利用率が高く、携帯電話網や無線LANなどのさまざまネットワーク環境に対応したスマートフォンの導入によって、情報活用のリアルタイム性をさらに高めようするのが狙いだ。こうした企業では、日本法人を含めてグローバルにスマートフォンを導入し、全社規模で業務の意思決定を迅速化するのが最終目標になる。

 「運用ノウハウを含めてスマートフォンの導入自体を機密情報に位置付けているケースが多く、ライバル企業との差別化において重要なツールとして捉えている」と岡田氏は話す。

 一方、国内で多いのはハンディターミナルなどに代わる業務端末としての利用だ。これは、以前からハンディターミナルやPDAなどの携帯業務機器を導入しており、リプレースやシステム拡張のタイミングに伴ってスマートフォンを導入するケースが目立つ。Windows Mobileは、従来は「Pocket PC」などの名称でPDA向けOSとして展開されてきた、携帯電話機能のサポートに伴ってスマートフォン用OSに発展した経緯がある。

 スマートフォンという新しいデバイスであっても、従来からある業務システムに組み込みやすく、また、運用ノウハウを生かしやすいメリットがある。国内では店舗や倉庫の在庫管理業務、電気や水道などの生活インフラの保守業務、さらには営業支援や顧客管理に活用される場合が中心となっている。

 ソリューションセールス統括本部の中島憲彦ソリューションスペシャリストは、「携帯電話向けのJavaアプリケーションを利用する場合もあるが、業務内容によっては入力のしやすさ(QWERTYキーボードなど利用)や高度な処理ができることからスマートフォンを求める企業が多い」と話す。近年では医療現場でもスマートフォンを試験的に導入されるなど、業務内容に応じたスマートフォンの活用が増えつつある。

中島ソリューションスペシャリスト

 日本と欧米では、このようにスマートフォンの利用形態が大きく異なるが、最近はこの傾向が変わり始めているという。「1台でコミュニケーションとアプリケーションを利用できるので、コスト削減の観点から欧米では業務端末としての展開も考える企業が増え、逆に日本ではコミュニケーション活用も意識する企業が増えつつある」(岡田氏)。

 スマートフォンの導入目的は、当初は国内と欧米で異なったが、徐々に「1台2役のデバイス」として活用の幅を広げる傾向が強まりつつあるようだ。

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