Mozilla Labsのトップが語る次世代ブラウザの姿Focus on People(2/2 ページ)

» 2008年03月05日 00時00分 公開
[西尾泰三,ITmedia]
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Webが持つ成長のポテンシャルはWebの中にこそ存在する

先日設立されたMozilla Messagingの役員も勤めるビアード氏

―― 2つの方向性については分かりました。では、そうした方向に進んで行くに当たって、ホットな技術としてはどういったものが挙げられますか?

ビアード わたしたちの観点からすると、Webこそがホットなプラットフォームなのです。Webはやっと成長しはじめ、成長のポテンシャルはWebの中に存在しています。そうした状況下で、Webを置き換えるような技術に目を向けるのは危険なのではないかとさえ思います。

 MicrosoftのSilverlight、AdobeのAdobe AIR、これらは新しいプラットフォームです。こうしたものが出てきてしまうと、Webができることを自分たちでコントロールしようとしたり、場合によっては乗っ取ってしまう危険性があると考えています。思うに、インターネットは、そこに新たな投資を行うことでまだまだ繁栄させていくことができると思います。わたしたちがWebの機能に注力するのはそうした理由からです。確かに、Webというのは、個別のベンダーが提供するものと比べて美しくないし、セクシーでも光り輝いているわけではありません。しかし、それがWebのいいところなのです。

 わたしたちは2D/3D、音声、ビデオといったリッチな機能をWebの中に追加できればと考えています。もちろん、現在でもFlashなどを用いればリッチな機能を組み込むことは可能ですが、本来これらはWebの一部であるべきであると考えます。Webをプラットフォームとして活用し、その中に追加していく方がみなさんがそのメリットを享受できると考えています。

amachang そうした意味では、Mozillaのコアなコードベースをパッケージ化したXULRunnerも危険だといえるのではないですか?

ビアード そうですね。わたしたち自身もXULRunner上でFirefoxを開発していますが、XULRunnerに対して投資を行い、汎用的なプラットフォームにしようなどと考えてこのようにしたのではありません。XULRunnerを用いているのは、クロスプラットフォームのUIが必要だったことが大きいです。

amachang Flockのようなソーシャルブラウザも出てきていますよね。ユーザーが自分だけのブラウザを作り上げられるような動きを促進するためにXULRunnerに投資を行っていくのもアリだと思うのですが。

ビアード 下支えとなるような技術を発展させるという観点からいえば、それはアリかもしれません。しかし、OSSであるXULRunnerを利用し、関連した製品を開発している企業やグループはすでに多数存在している現実をみても、XULRunnerにさらに投資を行う必要はないと考えています。

―― 「デスクトップ」「ブラウザ」「Web」の境界線があいまいになったとき、Firefoxなどはどういった存在となっていくのでしょう。

ビアード わたしの考えではFirefoxやThunderbirdは「ユーザー体験を示すブランド」です。Webを体験する方法の1つであるともいえます。将来的には、「ブラウザ」をコンピュータ上の四角いアプリケーションだ、という概念を払しょくし、WebにアクセスするのがノートPCであろうが携帯電話であろうがそのほかどういった形であれ、自分のプロファイルデータを基にFirefoxというユーザー体験が一貫性を持った形で実感できるようにしたいと考えています。

ブラウザをよりインテリジェントなエージェントに

―― 携帯電話の話が出てきましたが、モバイル対応はどういった状況ですか?

ビアード 過去、デスクトップと携帯電話の橋渡しを狙った「JOEY」、モバイル機器などへの組み込みを想定した「Minimo」のようなプロジェクトがありましたが、現在ではそのいずれもそれほど活発な状況ではありません。ただし、この状況は悲観するものではなく、事実、JOEYプロジェクトで培われたアイデアの一部はWeaveに反映されるなどしています。

 現在、こうした過去のプロジェクトを基にモバイル関連の新しいプロジェクトをはじめようと人材を採用しているところで、コペンハーゲンとマウンテンビューにスタッフィングされることになります。年内にLinuxとWindows Mobile上で動作するGekko 1.9ベースのFirefox Mobileがリリースできるでしょう。

―― PrismとWeaveのほかに注力しているプロジェクトはありますか?

ビアード ナチュラルランゲージインタフェースというプロジェクトです。これは、ブラウザをよりインテリジェントなエージェントにしようとするものです。

 例えば、メールを作成中、自分の飼い犬の写真を挿入したくなったとしましょう。あなたがすべきことは、ブラウザに「Insert my dog photo」とタイプもしくは話し掛けることです。そうすればブラウザがflickrから犬のタグが付けられた写真を探しだし、それを挿入してくれるのです。

 基本的なボキャブラリを持つことで、これらを実現しようとしているのですが、これは逆にいえば、Webサイト側からそのボキャブラリを育てていくような仕組みも存在し得るということです。それにより、さらにインテリジェントなエージェントになるのです。

amachang なるほど。Web上のシェル、といったところですね。僕はFirefoxでブラウジングしているとき、「すべてをチェックする」というボックスがないチェックボックス群などに出くわすと、Firebugでそのチェックボックスを生成したりすることがあります。こうしたオレオレコマンドをそのボキャブラリに追加するようなこともできるのでしょうか。

ビアード もちろん。Webだけでなく、自分自身でも活用できないはずがないですからね。Humanizedというソフトウェア開発会社からコアチームを採用しているのですが、Humanizedが提供しているensoという製品は、この考えをデスクトップ全体にまで広げたものになっています。ナチュラルランゲージインタフェースプロジェクトは、ensoのようなアイデアをWebで展開できないかと考えたものです。

最後は2人で。遠慮がちにクリスの肩に置かれたamachangの手がすてきです。クリックでさらに親密に
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