行政のシステムコストは健全か?――削減に向けた視点の転換闘うマネジャー(2/2 ページ)

» 2008年04月22日 03時50分 公開
[島村秀世,ITmedia]
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あらためて原点に戻ってみる

 話をコスト削減に戻そう。省庁や自治体は、税金に基づいて予算を執行する機関である。民間のように「利益をこれだけ出せるので投資をしよう」とするわけではないし、「素早く行動して市場を確保してしまおう」というものでもない。このようなことから、既存システムが陳腐化もしくはレガシー化して再開発を行う場合、前回構築したときの費用+運用にかかった費用までの予算確保はさほど難しくない。ただし、再開発期間中にかかる現行システムの維持費用も含まれている場合に限って予算確保が難しくないだけだ。

 省庁においては財務省、自治体においては財政課に所属する人達の基本的な思考は「平準」と「減額」であり、予算の増額を求められると激しく拒否をする傾向にある。しかし、この思考ではシステムの再開発は不可能である。陳腐化もしくはレガシー化が原因で再開発を求められているのだから単純な移行ではない。機能の修正および拡張、出力帳票の電子化、ネットワーク化、セキュリティの高度化など、前回構築したときにはありもしなかったものが満載されているからだ。

 そこで、「再開発することで各所属での業務が削減できるではないか」と意見するのだが、「具体的な削減人数を持って来い」と返されるか、「それはお宅の予算の話ではなく、ほかの所属の予算の話だ」と一蹴されるだけだ。はてさてどうしたものであろうと知恵を絞り、開発費を捻出するのだが、聞こえてくるのはうまく行かず立ち往生している話ばかりだ。

 どうも、行政の世界では失敗するために智恵を絞っているように見える。あらためて、原点に戻って、コスト削減の手法を考え直さなくてはならないようだ。ただし、条件を1つ付けておく。「現行の行政制度を大きく変えずに」という条件だ。利潤追求が求められる企業の社長なら、連綿と続いてきた制度を一瞬にして変えることも可能かもしれないが、首相や知事の立場では、新たな制度を明確にし、議会などにも諮った上でないと実現できないからだ。

 次回は長崎県で実践したコスト削減策について説明したい。

プロフィール

しまむら・ひでよ 1963年3月生まれ。長崎県総務部理事(情報政策担当)。大手建設会社、民間シンクタンクSE職を経て2001年より現職。県CIOとして「県庁IT調達コストの低減」「地元SI企業の活性化」「県職員のITスキル向上」を知事から命じられ、日々奮闘中。オープンソースを活用した電子決裁システムなどを開発。これを無償公開し、他県からの引き合いも増えている。「やって見せて、納得させる」をマネジメントの基本と考える。


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