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» 2008年05月13日 08時00分 公開

初めてのサービスレベルアグリーメントITIL Managerの視点から(4/4 ページ)

[谷誠之,ITmedia]
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SLAの作成実践

 SLAの作成は、原則として次のようなステップで進めていく。


1 顧客がプロバイダに、サービスレベル要求(SLR)を提出する

顧客の立場で、ビジネスがITに要求する要件をまとめたものをSLRという。例えば「Webサイト・ショッピングは24時間対応できること」や、「請求書は毎月月末に確実にプリントアウトできること」など、ビジネスの観点ITサービスに求める事柄を記述してゆく。

ビジネス要件には、ビジネス上必須で、それが停止してしまったらビジネスそのものが成り立たないものと、たとえ停止してしまっても短時間であればなんとかなるものとがある。ビジネス上必要不可欠な機能のことをVBF(Vital Business Function:重要ビジネス機能)という。例えばWebのショッピングサイトでは、商品を選択して注文を受け付ける、という部分がVBFだと言えるだろう。一方で、サイト上で問い合わせを受け付けたり、おすすめ人気商品を紹介したりといった機能は(必要ではあるが)ビジネスの根幹をゆさぶるような機能ではない。

SLRを作成する際は、同時にVBFも明らかにしておくことが望まれる。


2 プロバイダはSLRを元にサービス仕様書を作成する

プロバイダの立場で、SLRを実現するために必要なITサービスの具体的な内部仕様を作成する。どのような体制で、どのようなIT機材で、どのようにすればSLRを実現できるのか、ということをここで明らかにしてゆく。

このとき、SLRに含まれるVBFは必須要件である。VBF以外の部分は、もしかしたら今の設備では実現不可能だったり、追加投資が必要だったりした場合には顧客と相談の余地があるかもしれない。そういった意味でも、SLRの中でもあらかじめ優先順位をつけておく(もちろん、顧客と合意した優先順位である)ことは重要である。


3 プロバイダはサービス仕様書を元に、サービスカタログおよびSLAの草案を作成する

サービスカタログとは文字通りITサービスのカタログのことである。どんなITサービスを、どんな体制で、誰を対象に、どのように提供するのかということが顧客にわかりやすい文章で記されている必要がある。

SLAの草案は、この時点で作られる。SLAは当然のことながら、SLRやサービスカタログに準拠したものでなければならない。また、草案を顧客とプロバイダとの間で協議し、最終的に合意にもっていく必要がある。そのためにも、最初にSLRの優先順位付けが必要になってくるのである。


 サービスマネジメントの基本は「できるところから始める」ということと「PDCAサイクルを回す」ということである。しかし、それを理由にして「SLAを、サービスを開始してから、おいおい作っていく」のは感心できない。なぜなら、一度請けてしまったサービスレベルは、簡単には変更できないからである。顧客は必ず「今までもやってくれたんだから、いいでしょ?」と要求してくる。それは決して悪いことではない。現場の人間も、困難なことでなければやってあげたい、と思うことだろう。しかし、SLAが締結されていない状態でズルズルと続けるのは、プロバイダ側にとっても顧客側にとっても非常に危険である。

 次回は、SLAの具体的な中身に関して解説することにしよう。

※本記事の用字用語については、ITILにおいて一般的な表記を一部採用しています。

谷 誠之(たに ともゆき)

IT技術教育、対人能力育成教育のスペシャリストとして約20年に渡り活動中。テクニカルエンジニア(システム管理)、MCSE、ITIL Manager、COBIT Foundation、話しことば協会認定講師、交流分析士1級などの資格や認定を持つ。なおITIL Manager有資格者は国内に約200名のみ。「ITと人材はビジネスの両輪である」が持論。ブログ→谷誠之の「カラスは白いかもしれない」


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