コラム
» 2008年05月22日 11時09分 公開

IT Oasis:会社内の情報が流れるルートは確立されているか (2/2)

[齋藤順一,ITmedia]
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社長と組織情報

 社長の仕事は会社をよりよくするために経営戦略を決定し、実行、展開することである。

 中小企業の社長の中には現場仕事が好きで、一番難しい加工は自らが手がけるという人もいるのだが、やはり少数派である。

 社長は現業をしない。社長の仕事は間接業務である。日常的な業務活動は組織が権限と責任の範囲で遂行してくれる。社長の仕事は経営にかかわる意思決定である。

 そうすると社長にとって頼りになるのは自分のところに上がってくる情報である。

 組織の情報は階層を人づてに上がっていく。一般社員が課長に提案をし、課長が整理して課の意見として部長に言い、部長はそれをまとめて担当役員に説明し、取締役会で社長の耳に入れるというのが一般的だろう。

 ある会社で、就任した社長が「社長室のドアはいつも開いている。言いたいことがあればいつでも言ってきて欲しい」と所信を述べた。実際、物理的にもドアは開け放たれていた。あるとき社員の1人が社長室を訪れた。事実は社長から新事業についての実現可能性を知りたいと内々に呼び出されたのだが、社員が来たことは秘書室から担当事業所長や直属上司に瞬く間に伝わり、その社員が出張から戻るとすぐに関係者に社長と何を話したか詰問された。

 組織において情報伝達はルールが決まっており、それを変えていくのは社長といえども難しいのである。

 組織の情報伝達では、情報の仲介者が不要と判断した情報がカットされ、時には説明不足や誤解、行き違い等に起因する情報の変形が起こり、さらに伝達による時間遅れが発生する。

 情報の伝達が正しく行えないと、社長は裸の王様になり、欲する情報が届かなくなり、社内の親しい幹部との酒席やゴルフなどで会社の情報を得るしかないといった状況が起こるのである。

 「社長は会社のことを何も分かっちゃいないから」というのは、サラリーマンがよく口にする愚痴であるが、社長とて人の子でありルートが整備されていなければ情報の入手は不可能であり、情報なしで正しい意思決定など望むべくもない。前述の「石に魅せられた社長」を哂うことはできないのではないか。各部門でマネジメントをつかさどる立場の人は、不快で問題となる現象の原因を突き詰めるクセをつけておく必要がある。情報伝達のルートが確立されていないことに不快感を感じない、その方が好ましいと感じるマネジャーはそもそもこうした問題を考えようとはしないかもしれないが。

 経営者が正しい経営判断をするために、必要にして十分な情報がタイムリーに伝達されなければならない。情報というものは組織を円滑に機能させ、発展させるために極めて重要な役割を果たすのである。

外部環境と情報

 系列が機能していたころの製造系の中小企業は売り上げの大部分を親会社から受注していた。

 そうした環境では固定的な取引、製造プロセスであり、企業内を流れる情報も特定の流れに乗っていた。この状況では手作業による間接業務をコンピュータに置き換えるOA化は有効であっても、意思決定に関わるような情報を正確、円滑に流すことを目的とするITはあまり必要性がなかった。

 ところが系列が崩壊し、「親も子もない」という時代になると、特定得意先に依存する経営は危険であり、危険分散のため得意先の受注比率を最大3割程度に下げようという動きが強まった。

 実際、特定顧客に依存し、そこから切られたために従業員の2/3をリストラし、工場の中には使われなくなった機械が片隅に積み上げられている会社や、テニスコートほどある2階建ての会社の2階部分に社長と事務員の机が2つだけポツンと置かれた会社などを筆者は見てきた。

 得意先が分散化すると情報量は増加する。加えて、得意先からの発注は余分な在庫を持たない、市場の需要に的確に応えるといった理由で、小口、多頻度化し、納期も短縮する傾向にある。

 これらはいずれも会社内の情報量が増加する要因となる。

 つまり、外部環境が安定的であれば会社内部は定型的な業務で対応するのが効率的であるが、外部環境が不安定になってくると、非定形な業務が発生し、多くの意思決定が必要になるのである。

 経営者は外部環境が情報量を変化させ、意思決定に影響を及ぼすことを理解する必要がある。そしてそれをサポートしつつ、自らも意思決定の一端を担うのがマネジャーの仕事だ。

 現在の会社は外部からは情報が増加する圧力を受け、内部においては的確な情報を意思決定者に伝えることを求められている。

 そこで必要になってくるのがITなのである。

齋藤順一

さいとう・じゅんいち 未来計画代表。NPO法人ITC横浜副理事長。ITコーディネータ、上級システムアドミニストレータ、環境計量士、エネルギー管理士他。東京、横浜、川崎の産業振興財団IT支援専門家。ITコーディネータとして多数の中小企業、自治体のIT投資プロジェクトを一貫して支援。支援企業からIT経営百選、IT経営力大賞認定企業輩出。


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