中堅中小企業の経営基盤改革術

中堅中小企業を押すSAP、早期導入ユーザーはSaaSに満足SAPPHIRE 2008 Berlin(2/2 ページ)

» 2008年05月22日 18時44分 公開
[末岡洋子,ITmedia]
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SaaSのアーリープログラム動向

 先に計画を修正したBusiness By Designについては、別のセッションでアーリーアダプター顧客を招いてのパネル、デモも披露した。同社は第1四半期の業績発表とともに、Business By Designについて2010年に設定していた売上高10億ドル、導入企業1万社という目標達成時期を12カ月〜18カ月後にずらした。これについては、「運用、ホスティングなどでさらなる調整をしていきたい」とクレイ氏。「条件を満たしたら市場に提供する。焦ってロールアウトしたくない」。

 Business By Designは、最新のユーザーインタフェース「SAP Nova」を採用し、アセンブル可能な「Work Center」と役割で画面構成が決定する。特徴は、情報のプッシュだ。システムがユーザーに関連した情報を収集し、新しい情報が追加されたり変更された場合、その情報が自動でプッシュされる。これにより透明性を強化できる。自分が担当した作業がその後どうなったのか、あるいは自分に関係あるレポートを探してシステム内を検索するといったことがなくなるという。

 最新バージョンとなる1.2では、検索を強化した。アーキテクチャを根本的に作り直し、SAPの検索エンジン「TREX」を採用、履歴データをメインメモリに保存することで、レスポンス時間が1秒以下まで高速化したという。

 TREXは、メインメモリ全体をテキストベースでスキャンするだけでなく、プロジェクトを発見した後にセマンティック検索をかけ、関連性を探る。「革新的な方法でデータをナビゲーションできる」という。

 ビジネスプロセスの例として、サプライヤーリレーション管理を紹介、見積依頼(RFQ)の作成からサプライヤー決定までを説明した。画面に沿って購入内容を定義し、3〜5社の入札者を割り当てて送付、入札者を決定した。画面上部に常にステップが表示されており、ガイドプロシージャに沿って項目を埋めていくだけ。電子メール、電話、B2Bなどのチャネルを選択できる。顧客からは非常に好評だったという。

 では、アーリープログラムに参加した企業はBusiness By Designをどのような背景で導入し、どのような感触を持っているのだろうか。この日、パネルに参加したのは、英仏独3カ国から5社。規模は80人〜180人。メディア、化学、エンジニアリングと業種は多岐にわたった。

なぜBusiness By Designを導入したか?

 どうしてBusiness By Designを導入したのか? 

 この質問に対し、ITコンサルティング企業の担当者は、導入前は、営業、人事、財務、マーケティングと各部門ごとに異なるシステムがあり「ソフトウェアのサイロ状態だった」という。「必要な情報を必要なときに得られず、大きな課題となっていた」(同社代表者)と述べる。

 ある化学企業は、事業規模が成長する中、既存のソフトウェアに限界を感じたという。これまでインターネットツールを導入、機能には満足していたがメンテナンスは問題だった。「安定したプラットフォームが必要だと感じた」と代表者は振り返る。Business By Designを昨年10月に知り、取引先が1社で済むこと、必要な機能がそろっている点、SAPブランドに魅力を感じた。すぐに導入を決定し、同年12月より作業を開始した。

 企業の規模が変わると、部分的な問題に対処する既存のソフトウェアの組み合わせでは管理し切れなくなった。それが各社に共通していた問題だ。「まったく新しいツールを購入するしかなかった」(エンジニアリング企業の代表者)という声も上がった。このほか、すべての代表者がうなずいたのが、Excelデータの山だ。

 導入・実装については、SAPやSaaSベンダーが約束する「容易な導入」に異論はないようだ。外部コンサルタントを利用した企業は1社もなく、SAPと自社のチームで十分だったという。ほとんどの企業が、プロジェクトマネジメントなど一部のモジュールを導入し、少しずつ広げていっている状態だった。

 SAPの担当者によると、SaaSかオンプレミスかという単純な問題ではないという。「ミッションクリティカルな部分ではSaaSを選択していない」ということからも、SaaSを提供するベンダーは今後、セキュリティや信頼性を実証していく必要がありそうだ。

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